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……ねえアッシュ、ちょっと聞いて!
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アネット? どうしたんですか、そんなに慌てて。
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花売りのオデットさんっていたでしょ? あたしたちが読み書きを教えた……
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あの人、魔道学院に入るんだって! なんでも、才能を見出されたみたいで。
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へえ……異例の入学ですね! 魔道学院は、 簡単に入れる学校じゃないのに……。
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ね! 改めて、みんなに勉強を 教えて良かったなあって思ったよ。
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感慨深いなあ。僕たちが勉強を教えた人が、 今度は魔道学院の先生に師事するのか……。
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魔道学院の先生……か。 あのね、アッシュ。今だから言うけど……
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あたしがあなたを手伝おうと思ったのには、 もう一つ理由があったの。
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もう一つ……? どんな理由だったんですか?
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あたしね、小さい頃は魔道学院の 先生になりたいなあって思ってたんだ。
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魔道学院じゃなくても、せめて人に 勉強を教える仕事がしたくって。
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前に陛下ともお話したんだけど、魔法が 苦手な子に、魔法の使い方を教えるとかね。
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それで、いざ街の人たちに勉強を 教えてみたら、何だかすっごく楽しくて!
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確かに、アネットは勉強を教えている時 すごく生き生きしてましたもんね。
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あはは、そうかも。あたしが教えたことを 理解してくれた時なんて、もう嬉しくって。
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これまであたしが勉強してきたのは、 このためでもあったんだなって思えたの。
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きっと、天職なんだと思いますよ。 アネットは人に教えるのが上手ですし……
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なかなかわかってもらえない時も、 一人一人に根気強く向き合っていますし。
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本格的に、人に勉強を教える仕事を 目指してみたらいいんじゃないですか?
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僕、アネットみたいな先生になら いくらでも勉強を教わりたいですよ。
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本当? 何だか照れちゃうな……。 ……よし。あたし、頑張ってみるよ。
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となると、これから猛勉強だよね! 魔道学院の先生にも話を聞いておこうっと。
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もし僕にできることがあれば、 何でも言ってください。手伝いますから。
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えっ、でも悪いよ。 あたしの夢はあたしの夢なんだし……
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アッシュには、立派な騎士になるって 大事な夢があるじゃない。
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一番最初は、君が僕を手伝ってくれた。 その恩はちゃんと返さないと。
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それに……君もファーガスの民の一人です。 君たちを手伝うのも、騎士の仕事ですから。
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……ふふっ。立派な騎士になるのが 夢だって、いつも言ってるけど……
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アッシュはもう、十分立派な騎士様だね。
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それじゃ、後で手伝ってもらおうかな! 王城の書物を借りに行ったりもしたいし……
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いつか、あたしたちが入れる時が来たら、 ガルグ=マクの書庫にも行きたい。
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そういう時に付き合ってくれたら、 すごく助かるんだけど……
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もちろんです。僕に任せてください。
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ありがとう! あたし、頑張るから。 見ててね、アッシュ。