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………………。
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珍しいわね。 戦術の教本を読んでいるの?
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しかも、その本…… まさか士官学校時代を、懐かしんで?
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……懐かしむような過去ではない。
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そうかしら。腕の立つ武術師範として、 貴方は意外なほどに慕われていたわよ。
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私たちの担任になって、いろいろな役目を 果たしてもらう予定だったけれど……
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士官学校がすぐに休止になったから。 それでも、最低限の働きはあったわね。
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………………。
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……相変わらず寡黙ね、貴方は。
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出会ったばかりの頃と比べれば、 少しは何を考えているかわかるけれど。
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………………。
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その沈黙は、「わかってもらう必要もない」 といったところでしょう。
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まったく貴方らしいわ、“エミール”。
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………………。
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その名で……私を呼ぶな。
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……エミール=フォン=バルテルスは、 もう死んだ、と?
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バルテルス家の人々を残らず惨殺した廉で、 追っ手によって討伐された。
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……そうあるべきだった。
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本当にそれでいいのかしら。 私は納得しなかった。だから……
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貴方は生きている。フリュム家の嫡子、 イエリッツァ=フォン=フリュムとして。
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そして、“死神騎士”としても。 いずれも私の道にとって、欠かせない者よ。
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……あの魔性の力まで欲する、か。 強欲な女だ……。
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奴の渇きは……永遠に満たされん。 斬れば斬るほど、人から遠のく……。
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ふふ……貴方の話を聞いていると、 “死神”こそが強欲に思えるけれど。
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いつの日か、その刃が私に向く時が 来るかもしれないわね。
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……皇帝は、私の主だ。 今のところはな。
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奴に狩り場を与えてくれたことには…… 感謝している。……お前を斬りはしない。
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感謝も何も、初めからそういう契約だもの。 互いの利害を一致させるためのね。
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これからも力を貸してちょうだい。 貴方も、“死神”も……。
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………………。