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……おい、報告は終わったのか。
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ええ。……あっ、私に何か用があったの? 待たせてしまって悪いわね。
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用というほどのことでもない。 単にお前を労おうと思っただけだ。
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戦況はかなり厳しかったと聞いたが、 よく無事に戻ったものだ。
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ええ、ただの盗賊退治のはずが、 こんなに苦戦するなんてね……。
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怪我は。
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このとおり無事よ。部隊のみんなもね。
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……これのおかげで、 あの戦場でも希望を見失わずに済んだわ。
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兄上の……。そんな鉄の塊が、 何の役に立ったと言うんだ。
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何かの役に立ったってわけじゃないけど 心の支えになった、と言えばいいのかしら。
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……これはあの人の誇りと、 果たせなかった責務の象徴でしょう?
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そんな大事なものが懐にあるっていうのに、 諦めるなんて情けない真似はできない。
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そう思ったら、もう少し踏ん張ろうって 勇気が湧いてきたのよね……。
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……わからんな、俺には。
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死んだ者を想うのは構わんが、 行き過ぎた情は剣を鈍らせるだけだ。
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想ったところで、彼らが戻るわけではない。 ……俺はそう考えてしまうのだがな。
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フェリクスは割り切りが良すぎるのよ。 そこがあなたの強さなんでしょうけど……。
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でも、いつかあなたにもわかるわ。 想いが人を支えることもあるんだって。
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……生者が死者に支えられる、か。
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それじゃあ、そろそろ私は戻るわね。 はあ、久しぶりに安心して眠れるわ。
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待て、イングリット。一つ頼みがある。
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あら、何かしら? あなたが私に頼み事なんて珍しいわね。
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……そのうち、兄上に顔を見せに 行ってやってくれ。
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これからも戦争が続けば、今回のような 厳しい戦いがいつ起きるかもわからん。
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死者が生者を支えるというのなら…… 花を手向けるくらい、損にはならんだろう。
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グレンの……。 ええ、そうね。構わないわ。
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もちろんあなたも一緒に来るんでしょう? そうだ、折角だし陛下もお呼びしましょう。
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それからロドリグ殿と、シルヴァンに ギュスタヴ殿、この軍にいる人たちも……
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それからこの軍にいる人たちにも 声をかけて……
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待て、阿呆。そこまでは言っていない。 聖堂の中で宴でも始めるつもりか。
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流石にそんなことはしないわよ。 ああでも、宴っていうのは良いわね。
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きっと息抜きにはちょうどいいだろうし、 何より彼、賑やかなのが好きだったもの。
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だとしてもだな……いや、まあいい。 それまでくだらん戦場で命を落とすなよ。
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わざわざ呼び止めて悪かったな。 今日は肉でも食べてゆっくり寝ることだ。
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ふふ……ありがとう、フェリクス。