link イングリット volume_up
ごめんなさい、フェリクス。 仕事の邪魔をしちゃったかしら。
link フェリクス volume_up
構わん。一段落したところだからな。 それで、わざわざ何の用だ。
link イングリット volume_up
訓練場でこれを拾ったから あなたに届けなくちゃと思って。
link フェリクス volume_up
……兄上の拍車か。 失くしたものと思っていたが。
link イングリット volume_up
まったく……王家の紋章が入ってたから、 騎士の方々に聞き回る羽目になったわ。
link イングリット volume_up
駄目よ、こんな大事なものを失くしたら。 グレンが先王陛下から賜った品でしょう?
link フェリクス volume_up
ああ。
link イングリット volume_up
ああじゃないわよ、もう。 ……でも、ちょっと意外だわ。
link イングリット volume_up
これをずっと持ち歩いていたなんてね。 あなた、そういう柄じゃないと思ってた。
link フェリクス volume_up
別に……。いつか、何かの役に 立つかもしれんと思って持っていただけだ。
link イングリット volume_up
……あなたがそう言うならそれでいいけど。 とにかく、もう落とさないようにね。
link フェリクス volume_up
………………。 おい、イングリット。
link イングリット volume_up
何?
link フェリクス volume_up
この拍車は、お前にやる。
link イングリット volume_up
……えっ?
link イングリット volume_up
ちょっと待ちなさい。 そんな大事なもの、受け取れないわよ。
link フェリクス volume_up
先王陛下から叙任を受けた兄上が、 騎士としての姿を、誰に見せたかったか……
link フェリクス volume_up
それは弟や父親ではなく、お前だ。 ならばその拍車は、お前に渡すべきだろう。
link イングリット volume_up
いや、ならばって……そんな。
link フェリクス volume_up
元々、お前にやろうと思っていた品だ。 これまで機会を逸してきたがな。
link イングリット volume_up
まあ……そこまで言うなら、 ありがたく受け取っておくけれど……。
link フェリクス volume_up
だが、間違えるなよ、イングリット。
link フェリクス volume_up
これは、お前をくだらん感傷に 浸らせるために渡すわけじゃない。
link イングリット volume_up
……わかったわよ。肝に銘じておく。 あなたはそういうの、嫌いだものね。
link イングリット volume_up
じゃあ、もう行くわ。 もうすぐ会議の時間だから。