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おい。
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まったく、爵位を退いたとはいえ…… 父親に向かって「おい」とは何だ。
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御託はいい。あんたに一つ聞きたい。 フラルダリウス領南部の城主らについてだ。
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南部……おっと、やはりお前も連中の 対処に追われることになったか。
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おおかた、物資の供出を渋っているか、 出兵を拒んでいるといったところだろう。
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……なぜわかった。
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なぜも何も、かつての私が 踏んできた轍だからなあ。
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南部の兵は質で劣るが、数は多い。 何としても協力の約束を取りつけたいが……
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連中は一向に首を縦に振らん。 どうしたら連中を説き伏せられる。
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なに、難しいことなどあるものか。 恐らく彼らにも彼らの事情があるのだ。
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事情だと?
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スレン征伐のための援軍を断られた時などは 家督を巡って対立しつつあったようでな。
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どこか一つの家が援軍を遣ったと知れ渡れば 他家が情け容赦なくその隙を突いてくる……
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書簡を読んだだけでは、そうした細かい 情勢まで窺い知ることはかなわなかった。
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……つまりは自分の足で、 領内を回ってみろと言いたいのだな。
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とはいえ、今は戦いの最中なのだし、 無理にとは言わんがな。
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フン……月並みな助言ではあるが、 参考になった。試してみよう。
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……ふふ。
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何がおかしい。
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いやあ、お前も今では、立派に公爵として 務めを果たしているのだと思ってなあ。
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は? 当たり前だろうが。 俺に家督を譲ったのは他でもないあんただ。
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それはそうだが。私が家督を継いだのは、 お前よりも年を取ってからだった。
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お前はその年で良く頑張っているよ。 本当に、私の子は出来た息子ばかりだな。
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息子ばかり、だと? あんたはまた、兄上の 死に様を「見事だ」などと言うつもりか。
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……フェリクス。
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かつてのあんたと同じように王に仕え、 多くの騎士を従えるようになって……
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少しはあんたの気持ちもわかったつもりだ。 ……だがな。
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俺は、まだあの日のあんたの言葉に 納得したわけではない。
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……また余計なことを言ってしまった。 上手くいかんものだな、本当に……。
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グレンが生きていたら、大人げないとでも 言われてしまっただろうか……。