link ローレンツ volume_up
ふう……朝から体を動かすのは、 なかなか爽快だな。
link レオニー volume_up
ローレンツか。こんな時間に珍しいな。 どういう風の吹き回しだ?
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実は、レオニーさんを待っていたのだよ。 訓練はそのついでさ。
link レオニー volume_up
わたしを?
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ああ、少し君と話がしたくてね。以前、 ここで話したことを覚えているだろうか。
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平民が貴族に頼らないで生きていく…… そんな時代が来てもおかしくはない、と。
link レオニー volume_up
うん、覚えてるよ。 それがどうかしたのか?
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いや……君の言葉は、僕に少なからず 衝撃を与えてね。いろいろと考えていた。
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もし君の言うことが真実ならば、 貴族である僕はどうすべきか、と。
link レオニー volume_up
へえ。 それで、結論は出たのか?
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僕たち領主が平民を守ろうと広げた 両手の指の隙間から……
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こぼれ落ちてしまう者たちがいる。 今がそういう時代なのは、否定できない。
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ある意味、君もその一人なのだ。 たとえ自分の意志で選んだのだとしてもな。
link レオニー volume_up
待てよ、ローレンツ。 こぼれ落ちるって言い方は何だよ。
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わたしは貴族の手の中に留まろうなんて してない。自分から飛び出したんだ。
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む……いや、そうだな。 すまない。
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僕は貴族として、どうしても平民の立場に 立って物事を進めることが難しいようでね。
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だが、そんなことでは、この先、 領内の安定は保てまい。そこで……
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優秀な平民をグロスタール家に迎え入れ、 僕を補佐してもらおうかと考えている。
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へえ……驚いたね。 貴族と平民の境い目はどこへ行ったよ。
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それは変わらず、はっきりと存在するさ。 だが、僕も理解したのだよ。
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貴族と平民の境界を軽々と飛び越えるような 平民が、次々と現れる……
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そんな時代が、来つつあるということに。 君がその代表例だろう。
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おいおい、買い被りすぎじゃないか? わたしはそんな大層な人間じゃないって。
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ふ……君の言葉を解釈しただけさ。 気づかせてくれた君に感謝するよ。
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自分でもよくわかってないのに、 礼なんていいよ。
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……レオニーさん。 これは君を見込んでの提案なのだが。
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先程、話に出たグロスタール家に 迎え入れる平民……
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そういう存在に君がなってみる、 というのはどうかね?
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……お誘いどうも。
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光栄な話だとは思うけど、わたしには 他にやりたいことがあるんだ。
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師匠みたいな傭兵になるのが夢で、 今まさにそれを叶えてる途中なんだよ。
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……そうか。 君の夢を壊すわけにはいかないな。
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君の夢の成就を願っているが…… いつでも気が変わったら言ってくれ。
link レオニー volume_up
ああ、心に留めておくよ。 ……ありがとな、ローレンツ。