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よいしょ、よいしょ……。
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……ふう。メルセデス、 そちらの飼い葉を取ってもらえますか?
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え、ええ……わかったわ~。 ちょっと待ってちょうだいね……。
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あっ、無理はしないでください! やっぱり私がやりますから……
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はあ……どうにか終わったわね~。 ごめんなさい、結局任せっきりで……。
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いえ、気にしないでください。 メルセデスには日頃助けられていますし……
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何より、馬の世話は慣れていますから。 この程度はどうということもありません。
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ふふっ、ガラテア家と言えば、 精強な天馬騎士団で有名だものね。
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はい。……といっても、天馬は維持費が かさみますし、そう数は多くないのですが。
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子供の頃は、兄たちと一緒に 天馬や馬の世話をしたものです。
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そういえばイングリットには、 お兄様がいらしたんだったわね~。
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ええ。上の兄はガラテア領で父の補佐を…… 下の兄は騎士として他家に仕えています。
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兄妹で一緒に馬のお世話だなんて、 とっても仲良しなのね。素敵だわ~。
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でも、年も離れていましたし、一緒に 遊ぶこともほとんどありませんでしたよ。
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特に上の兄はとても厳格な人で、私が 馬を駆って野山を走り回ろうものなら……
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「そんな危険な真似をしてはいけない。 おまえに万一があってはならないんだぞ」
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……などと、父と口を揃えて言うのです。 何をするにも息苦しい子供時代でした……。
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今思えば、私は家で唯一の紋章持ちですし、 皆の心配も仕方がなかったと思いますが。
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そうなのかしら? 紋章があるから、 大切にされてたっていうよりは~……
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あなたが可愛くて 仕方なかっただけだと思うわよ~。
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それに、年も離れていたんでしょう~? きっと心配で放っておけなかったんだわ。
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そういうものでしょうか……。いや、決して 兄と仲が悪かったわけではないのですが。
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紋章がなくたって、あなたのお兄様たちは あなたを大事にしていたはずよ。
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私なんて今でも弟の世話を焼きたく なってしまうし、気持ちはよくわかるの~。
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私もね、小さい頃はよく弟の世話を 焼いていたから、気持ちはよくわかるの~。
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納得できたような、できないような……。 流石にあそこまで過保護になる必要は……
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あらあら。そんな素直じゃない子は こうしちゃうわよ~。
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メ、メルセデス? どうしたんですか? いきなり私の頭を撫でて……
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ふふっ、今日は私がお兄様たちの代わりに イングリットを可愛がっちゃおうと思って。
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な、何を言っているんですかメルセデス! ほら、休憩はここまでにして戻りますよ!
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ふふっ、そうね。そうしましょうか~。