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ユーリス、少し良いだろうか。
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おっと……何かご用ですか、セテスさん。 仕事の話なら別の場所で聞きますけど。
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いやなに、そんな話ではない。 君が学者と話しているのを見かけたのでね。
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随分と真剣に聞き入っていたようだから、 何を話していたのか気にかかったのだ。
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え、ああ……まあ、セテスさんなら 知っていて当然の話だと思いますけど。
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フォドラ十傑の伝承について、 ちょっと教えてもらってたんですよ。
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ほう、勤勉だな。 素晴らしいことだ。
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勤勉も何も、貴族なら持ってて当然の教養が 俺には備わってなかったってだけの話です。
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……十傑は主より紋章の力を授かり、 フォドラの地に迫った邪悪を討ち払った。
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そしてその力は、英雄たちを定命の肉体から 解き放ち、死の淵からも救い上げた……。
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そう伝わっているな。紋章を持つ者の中には 常人より長く生きる者もいるというし……
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一説によれば、解放王ネメシスは 数百年もの時を生きたとも言われている。
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へえ……。
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だが、なぜそのようなことに 興味を持ったのだ?
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あー……セテスさんになら、まあいいか。 自分が何者かを、知りたかったからですよ。
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セテスさんの立場なら、俺が持ってる 紋章についても知ってるでしょう。
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ああ。君が士官学校に 入学してきた時は驚いたものだ。
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何しろすでに失われたはずの、 オーバンの紋章を持っていたのだから。
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……けど、その紋章がどこから来たのか、 俺にはさっぱり見当がつかないんですよ。
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まあ、母親の身分が身分ですから、 自分の父親がどこの誰かもわかりませんし。
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紋章の存在を知るまでは、自分が母さんの 息子ってのは疑ってなかったですけど……
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知ってからは、自分のすべてに 確証が持てなくなっちまったというか。
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そうか……君自身にも、 その紋章の由来はわからないのだな。
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十傑は、紋章の力を生まれながらに 持っていたわけじゃないって話ですけど……
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もしかしてそういう線もあるかなと思って、 十傑の伝承を調べてたんです。
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……君の紋章がどのようなものであれ、 主からの授かり物であることには違いない。
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その血に宿る力に感謝し、大事にするのだ。 そうすれば、いずれ道は見えてこよう。
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あっはは、経典どおりの励ましをどうも。 それじゃあ俺は用事があるので、これで。
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………………。