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はあ……。
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どうしたんだよ、イングリット。 随分疲れてるみたいだが。
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いいえ……ただ、やってもやっても お父様の頼み事が尽きなくて。
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この間の戦闘の報告書を作って…… 天馬の維持費について、陛下に交渉して……
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……あなたも陛下もフェリクスも、 よくもまあ、あんなに働けるものだわ。
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何だよ、大丈夫かよ。 お前らしくないな。
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私、机仕事には向いていないのかも。 ……はあ。自分が情けない。
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よし。ならば俺が一肌脱いでやろう…… てことで食事だ食事。おごるぜ、お嬢さん。
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ちょっと、私まで口説くつもり?  あなた、成長したんじゃなかったの?
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お前って奴はなあ……人の気遣いくらい、 茶化さずに受け取っておけよ。損するぜ。
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……それもそうね。なら、ありがたく。 気を遣ってくれてありがとう、シルヴァン。
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ちょうど仕事が一段落したところだったの。 付き合ってもらえるかしら。
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ふう……満足だわ。こんなにお腹いっぱい 食べたのは、久しぶりかもしれない。
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そもそも近頃は、何だかんだで忙しくて ゆっくり食事を取る機会も少なかったし。
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そいつは自腹を切った甲斐があったな。 ちゃんと食べたら、元気出てきたろ?
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久しぶりにその豪快な食べっぷりを見たら、 何だか俺も安心したよ。
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ちょっと……私の食べるところを見て 安心するって、いったいどういうことよ。
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あっははは、悪い悪い。 他意はないんだ。
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ただ、お前が美味そうに飯にありついてる ところを見ると、こう、落ち着くというか。
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たぶんそれは、陛下もフェリクスも、 お前の家族だって、同じだと思うぜ。
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……そういうものかしら。
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誰も昔のままではいられない。 この間、お前もそう言ってたろ。
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だからこそ、変わらないものがあるってのが 俺たちにとってはすごく嬉しいんだよ。
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変わらないもの……。
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……待ちなさい。納得しかけたけど、つまり 私が普段から食べてばかりってことよね?
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お前が食い意地張ってるのは事実だし……。 けど、それが悪いとは言ってないだろ?
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眉間に皺寄せてる顔よりも、幸せそうに 飯を食べてる顔のほうがずっといい。
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……もう。何を言ってるんだか。
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変わらないものなら、他にもあるじゃない。 すごく大事なものが、ここにね。
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大事なもの?
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私たちの友情。これは今も昔も、 これからもずっと変わらないでしょう?
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私たちの関係は変わっていっても、 互いを大切に思う気持ちは揺るがないわ。
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……イングリット。お前って奴はどこで そんな気障な文句を身につけたんだ?
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なに馬鹿なこと言ってるのよ。 ほら、みんなに差し入れを買って帰るわよ。
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……はいはい、喜んで。 どこへでもお供しましょう。