1. ……さて、以前議題に挙げた作戦について 皆の意見を聞かせてもらいたい。
  2. 俺としては、やはり兵力を集めて、 一息に砦を攻め落とすべきだと思うが……。
  3. ハッ、相変わらずの猪突猛進ぶりだな。 小勢で兵站拠点を狙えば、事足りるだろう。
  4. ………………。
  5. ……おい、何か言いたげだな。 考えがあるなら言え。
  6. いや……特に、そういうわけではない。
  7. ほう、自分の考えはないと? 賛成か反対かくらい、口にしたらどうだ。
  8. あまり食ってかかるな、フェリクス。 それよりも、話の続きを聞かせてくれ。
  9. 正面から攻めずとも、少数で忍び込んで 食料庫を焼けば痛手を与えられる。
  10. ……兵糧の奪取を諦めることにはなるが、 他に兵力を回す余裕が作れる、か。
  11. だが、哨戒を掻い潜って火を放つなど、 そう容易くはないだろう。俺が手勢を……
  12. 俺が、その役割を引き受ける。 それならば文句はあるまい。
  13. ………………。
  14. ……さて、作戦もだいぶまとまってきたな。 そろそろ一度、休憩にしようか。
  15. しかし何なんだ、貴様は。 先程から物言いたげな顔をして。
  16. ……お前がいて、よかったと考えていた。
  17. は?
  18. 悪意も遠慮もない、 純粋な反論を陛下にぶつける者は、稀有だ。
  19. そういった者がいるからこそ、 軍議が円滑に進む。
  20. チッ……俺とて、賛成できる時はしている。 何にでも食ってかかっているわけではない。
  21. そう、だろうか……。
  22. 昔から、奴は危なっかしいところがある。 誰かが止めねば、何をしでかすかわからん。
  23. 何しろ誰かのためだと吹き込めば、大喜びで 己の命を投げ捨てるような男だからな。
  24. ……そうだな。
  25. だが、奴に死なれては困る。 ファーガスも聖教会も諸共に滅ぶだけだ。
  26. だから俺が、この役を買って出た。 王の命を……この国を、守る役をな。
  27. ふ……“王の盾”か。
  28. おい……何だその顔は! だいたいお前も自分の意見があるのなら……
  29. 軍議の度、そう言ってくれるのも おれを気遣ってくれているからだろう。
  30. 感謝している、フェリクス。
  31. ……フン、それくらいは当然だろう。 俺たちは同じ王を戴く、同胞なのだからな。
  32. 待たせたな、そろそろ再開しよう。
  33. しかし、随分と話し込んでいたようだが、 いったい何の話をしていたんだ?
  34. は……。 陛下、フェリクスが……
  35. 阿呆! それ以上口を開くな! さっさと続きを始めるぞ!