link ラファエル volume_up
おう、ローレンツくん。遅かったな。 賊の大将にやられちまったかと思ったぞ。
link ローレンツ volume_up
あの者に詳しい話を聞いていたのだ。 君たちにも伝えておかねばなるまい。
link イグナーツ volume_up
彼らがエルヴィン様を恨んでいた事情、 ですか?
link ローレンツ volume_up
ああ。彼らは噂どおり、元傭兵団だった。 父の代に当家に雇われていたそうだ。
link ローレンツ volume_up
当初は村落の賊退治や、領境の警備など、 ごく普通の仕事を請け負っていたらしい。
link ローレンツ volume_up
だがある日、父の使いという者から 妙な指示を受けたんだそうだ。
link イグナーツ volume_up
妙な指示?
link ローレンツ volume_up
リーガン領に向かう商人を脅かして 引き返させろ、というものだったらしい。
link シェズ volume_up
確かに妙だな。 そんなの傭兵がやる仕事じゃないだろう?
link シェズ volume_up
確かに妙ね。 そんなの傭兵がやる仕事じゃないでしょ?
link ローレンツ volume_up
ああ。彼らも丸腰の商人を相手に、 剣を振り上げるわけにもいかず……
link ローレンツ volume_up
考えた末に、野生の魔物を追い立てて 商人を襲わせることにしたんだそうだ。
link シェズ volume_up
なるほど、頭がいいな。
link シェズ volume_up
なるほど、頭がいいわね。
link イグナーツ volume_up
感心しないでくださいよ。
link シェズ volume_up
なんてことを考えるんだ。 下手したら人が死ぬぞ。
link シェズ volume_up
なんてこと考えるのかしら。 下手したら人が死ぬわよ。
link ローレンツ volume_up
……ああ、そうだな。 続きを聞いてくれ。
link ローレンツ volume_up
ある日、いつものように商人の一団が 来るのを確認した彼らは、魔物に襲わせた。
link ローレンツ volume_up
普通の商人ならば逃げて助かるはずだった。 しかし一人が剣を抜き、魔物と戦い始めた。
link ローレンツ volume_up
それが……当時のリーガン公、 ゴドフロア殿だったらしい。
link ローレンツ volume_up
だがゴドフロア殿は奮戦空しく命を落とし、 彼を守ろうとした商人たちも犠牲になった。
link イグナーツ volume_up
それが、ラファエルくんのご両親……
link シェズ volume_up
じゃあ、前グロスタール伯の陰謀のせいで、 当時のリーガン公やラファエルの両親は……
link シェズ volume_up
なら、前グロスタール伯の陰謀のせいで、 当時のリーガン公やラファエルの両親は……
link ローレンツ volume_up
そうなる。……ラファエルくん、すまない。 父に代わり謝罪させてくれ。このとおりだ。
link ラファエル volume_up
おいおい、やめてくれよ。 ローレンツくんは何も悪くねえだろ。
link イグナーツ volume_up
……本当はボクの両親がゴドフロアさんに 付き添うことになってたんです。
link イグナーツ volume_up
なのに都合が合わなくてラファエル君の ご両親を推薦してしまって……
link ラファエル volume_up
イグナーツまで、やめろって! 親のことで子供が気遣うもんじゃねえぞ。
link シェズ volume_up
なあ、ローレンツ。それって本当に お前の父さんの指示だったのか?
link シェズ volume_up
ねえ、ローレンツ。それって本当に あなたの父さんの指示だったの?
link イグナーツ volume_up
ボクも、そこは疑問でした。エルヴィン様は 貴族の誇りを大事になさってますから……
link イグナーツ volume_up
商人に嫌がらせするような、 卑劣な真似をするとは、とても……。
link ローレンツ volume_up
うむ……賊の話から推察するに、どうやら 家人が勝手にやったことのようだ。
link ローレンツ volume_up
しかし、父が気づいた時にはその家人は姿を 消し……真意はわからないままになった。
link ローレンツ volume_up
残った悪事を働いた傭兵団を、父は 罰さざるを得なかった、というわけだ。
link シェズ volume_up
それは傭兵団にしてみりゃ、雇い主に 裏切られたと思っても仕方ないな。
link シェズ volume_up
それは傭兵団にしてみたら、雇い主に 裏切られたと思っても仕方ないわね。
link ラファエル volume_up
お前の父ちゃんも知らなかったんだとすりゃ 尚更、ローレンツくんは関係ねえだろ。
link ローレンツ volume_up
いや、領内の不始末は領主たる父の責任で あり、その後を継いだ僕が負うべき問題だ。
link ローレンツ volume_up
遺族である君や君の家族には、相応の補償も させてほしい。でなければ僕は……
link ラファエル volume_up
そんなもん、要らねえって! 家族ならオデが食わせてやるしよ。
link ラファエル volume_up
オデにとっちゃ、親のことはもう、 事故ってことで片づいてた話なんだ。
link ラファエル volume_up
今更ごちゃごちゃ言われちまったら、 どう片づけ直せばいいのかわからねえぞ。
link ローレンツ volume_up
しかしだな……
link ラファエル volume_up
しかしもかかしもねえぞ。 この話はもう、終わりだ。
link ラファエル volume_up
けど、賊討伐の礼はしてもらうからな! 良い肉をおごってくれんだろ?
link ラファエル volume_up
良い肉……楽しみだなあ。 考えただけでよだれが出てきたぞ。
link ローレンツ volume_up
くっ……このままでは僕の気が済まない。 いったいどうしたらいいのだ。
link シェズ volume_up
これ以上、どうもしなくていいだろ。 またラファエルを怒らせちまうぞ。
link シェズ volume_up
これ以上、どうもしなくていいでしょ。 またラファエルを怒らせちゃうわよ。
link シェズ volume_up
イグナーツ、お前もな。
link シェズ volume_up
イグナーツ、あなたもね。
link イグナーツ volume_up
はい……。
link シェズ volume_up
上等の肉さえ用意してやれば、 それでいいんじゃないか?
link シェズ volume_up
上等の肉さえ用意してあげれば、 それでいいんじゃない?
link シェズ volume_up
他にできることなんて、何もないだろ。 なあ、イグナーツ。
link シェズ volume_up
他にできることなんて、何もないでしょ。 ね、イグナーツ。
link イグナーツ volume_up
はい……。
link シェズ volume_up
何言ってるんだ、俺の分も肉を頼むぞ。 もちろんイグナーツの分もな!
link シェズ volume_up
何言ってるのよ、私の分も肉を頼むわ。 もちろんイグナーツの分もね!
link イグナーツ volume_up
えっ、いや……は、はい。
link ローレンツ volume_up
よし……ならば誰も見たことのないような 特上で極上の肉を仕入れてみせよう。
link ローレンツ volume_up
名門グロスタール家の誇りに懸けてな! はーっはっはっはっは!
link シェズ volume_up
……ああ、ローレンツはそれでいい。
link シェズ volume_up
……うん、ローレンツはそれでいいわ。
link イグナーツ volume_up
そうですね。