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誰も、いないわね。 ……あの子はいるかしら。
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みゃあ。
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私を待っていたの? よしよし、いい子ね……。
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今日は小魚を持ってきたわ。 あっ、こら、がっついてはダメよ。
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みゃう、ぎゃうっ!
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ふふ、足りないって? そうしたらまた……
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あれ、エーデルガルトさん。 こんなところで会うなんて珍しいですね。
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っ!? ……リンハルト、奇遇ね。 貴方こそ、こんなところで何を?
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いやあ、ちょっと徹夜続きで眠くてですね。 すぐそこで昼寝してたんですよ。
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すぐそこで? 貴方、もしかして……
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うにゃっ!
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あれ、猫ですか? ここに住んでるんですかね?
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さあ、わからないわ。 私もここで猫を見るのは初めてだもの。
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初めて? へえ、そうなんですか。 なんだか貴方に慣れている気もしますけど。
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確かにそうね。 ……何? 言いたいことがあるなら……
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いやあ、猫って良いですよね。 特に人の近くで暮らす猫は。
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そう? 貴方の口からそんな言葉が 出てくるとは思いもしなかったわ。
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え、そうですか? こう見えて僕は猫に惹かれてるんですよ。
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その可愛さに人が集まってきて、いろいろと 世話を焼いてくれたりするでしょ?
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? 猫はただ可愛いというだけで、 世話をしてもらえるわけじゃないのよ。
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鼠や害虫を駆除してくれるし、 飼えば主の心を癒やしてくれる。
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言うなれば、互いのできることをして、 助け合う関係性を築いているの。
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猫がそんなこと考えてますかねえ。 好き勝手に生きているだけじゃないですか?
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自由気ままに生きた結果、人のほうが勝手に 評価してくれるなんて……
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猫は本当に幸せ者ですよ。 食べるものにも事欠きませんし。
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まあ、自由に生きた結果だったとしても、 猫にはそれだけの価値があるということよ。
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でも、リンハルト。貴方が猫に一家言を 持っているなんて意外ね。
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もしかして飼った経験があるのかしら。 それなら教えてほしいことが……
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猫を飼う? そんな面倒なこと、 僕がするように見えますか?
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……見えないから、意外だったのだけれど。
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なるほど。なんかさっきから、話が 合わないなあと思ってたんですよね。
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もしかして、エーデルガルトさんって、 猫を飼いたいんですか?
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僕はずっと、猫みたいに飼われたいって 話をしてたんで……そりゃ合いませんね。
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え? あ、そう。 ……はあ。
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リンハルト、飼われたいと思うのは自由よ。 自由だけれど……
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世話をしてもらうことを要求するなら、 まずそれ相応に働いてみせることね。
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だいたい貴方はいつもそうやって……
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あーいや、やめましょう。ほら、陛下、猫が 貴方に可愛がってもらいたがってますよ。
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みゃ?