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随分とお忙しそうですね、 グロスタール伯爵閣下。
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リシテア君か。
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……そうだな。爵位を継いだ者として、 領民のすべてを担う責務は大きい。
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外交、軍事、産業……。僕が先頭に立って、 皆を守ってやらねばならないからね。
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爵位を継いだ、責務ですか……。
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ああ。ゴネリル家もヒルダさんの兄上、 ホルスト卿が後を継いで尽力している。
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エドマンド辺境伯もマリアンヌさんへの 継承の用意を整えていると聞く。
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エドマンド辺境伯は、後継者を失った。 この痛手は計り知れまい。
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コーデリア家は……爵位継承の話は いまだに聞かないな。
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………………。
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リシテア君。 君はいつ爵位を継ぐんだ?
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わたしは……継ぐつもりはありません。 コーデリア家は父の代で終わりです。
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……そうか。 訳を聞いてもいいかな?
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……わたしの両親は、貴族であるがゆえに 長い間、酷い目に遭い続けてきました。
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だから、父と母には貴族の責務とは無縁の 静かな余生を送ってほしいんです。
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……とはいえ、そのせいで領内が 混乱しては元も子もないですから。
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残された領民が困ることがないように、 あらゆる手を打っているところです。
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………………。
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ご両親を案ずるのであれば、一人で 背負い込まず、この僕を頼りたまえ!
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助けが必要ならば、声を上げたらいい。 君はもっと誰かを頼るべきだ。
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頼ることは、決して恥ではない。 それが家族のためとあらば尚更だろう。
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わ、わたしは恥だとか、 別にそんなこと……!
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リシテア君。僕は君に、コーデリア家の 爵位を継いでほしいと思っている。
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ご両親のためを思って行動し、なおかつ 領民への心配りさえ忘れていない。
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そんな君以上に領主に相応しい者が 他にいるだろうか? いや、いまい!
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………………。
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おそらくご両親のこと以外にも、「君」に、 何か継げない理由があるのだろう。
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……!
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だが、そういうことこそ仲間を頼るのだ。 僕たちはそんなに信に足らないか?
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フォドラを一つにせんという仲間たちだぞ? どんな問題にも解決の糸口はある。
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この大戦争を止めようという仲間たちだぞ? どんな問題にも解決の糸口はある。
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この大戦争を止めようという仲間たちだぞ? どんな問題にも解決の糸口はある。
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何より僕が、全力で君の力になるのだ。この ローレンツ=ヘルマン=グロスタールがね!
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わ、わかりましたって! とにかく爵位の 話は戦争が終わった後にしてください!
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あんたを頼れるかは、それまでに しっかり見極めさせてもらいますから。
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ああ、気の済むまで存分に見極めたまえ! この僕の頼もしさをね! はーっはっは!
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……間に合うといいけど。