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イングリット、良いところにいたな。 “トビアス傭兵団”って知ってるか?
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何です、藪から棒に。トビアス…… ……どこかで聞いたような気もしますが。
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あれ、知らないか。ベルラン団長の 話も、あんまり信用ならないもんだな。
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俺が昔いた傭兵団の団長が、まだガキの頃に 身を置いてた一団らしいんだが……
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そこの団長は、とある領主に忠誠を尽くし、 領主からも重臣として扱われたというんだ。
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珍しいですね。傭兵と雇用主とは、普通 金銭で結ばれた関係に留まるものですが。
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どうやらそいつらは戦いだけじゃなく、 城下の発展にも尽力したらしくてな。
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例えば、剣や弓を置いて鍬を持ち、 荒れた貧しい土地を必死で開墾したとか……
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財政難に苦しむ貴族のためにと、 街で店を開いて商売を始めたとか。
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最早、傭兵の域を超えているような……。 それとも、傭兵としては普通なのですか?
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まさか。戦いが生業の傭兵に そんな仕事を頼んでくる奴はいない。
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仕事を頼んだその領主も、受けた傭兵団も どちらも型破りだったってことだ。
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流石にそうですよね。開墾や商売をする 傭兵団なんて、前代未聞だと思います。
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結局、その団長は領主と固い絆で結ばれ、 “片腕”とまで呼ばれるようになった。
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ようは「傭兵」だの「領主」だの、 肩書きに縛られる必要はないってことだ。
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傭兵だって、雇い主のためにと 武器を置いて農民まがいの仕事をした。
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領主がどんな仕事をしたって、 俺はそこまでおかしいとは思わないな。
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……ふふ、なるほど。そうして、 先日の話に繋がるというわけですね。
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ありがとうございます、[HERO_MF]。 自分なりに、考えてみようと思います。
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ああ。答えを探すのは大変だろうが、 俺でよければ相談にも乗ろう。
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ああ。お前がどんな答えを出すか、 期待して待ってるさ。
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何はともあれ、団長の昔話なんかが イングリットの役に立ったなら良かった。
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俺もトビアス傭兵団の話を聞いた時は、 そんな話があるのかと思ったもんだ。
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ええ、本当に……。トビアス、トビアス…… やはりどこかで聞いたような……。
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……そうだ! その領主というのは、 もしや祖母のことではありませんか?
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お前の祖母さん? というとたぶん、 先代のガラテア伯……だよな?
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はい。よく覚えてはいませんが、 祖母の友人がそんな名前だったような。
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あのご老人が傭兵団長だったなんて、 にわかには信じがたい話ですが。
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もしそうだったなら、やっぱり よっぽど重用されてたんだろ。
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こんな形で話が繋がるとは、 不思議な縁を感じるな。
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ふふ……そうですね。