1. ………………。
  2. ディミトリ、今日は折角の休暇だろ? 何でそんな浮かない顔なんだ。
  3. いや……落ち着かなくてな。
  4. 皆が忙しく働いているというのに、 何もしないのはひどく歯痒い……。
  5. 別に、何日も休もうって話じゃない。 たまにはゆっくり過ごせばいいだろ。
  6. お前の悪い癖だな。 どうしてそんなに働きたがるんだ。
  7. それが、俺の義務……いや。俺が、 そういうふうにしか生きられないからだ。
  8. 王の子としてフォドラに生を受けた以上、 この命は最初から、俺のものではないし……
  9. ……あの惨劇を生き残った俺にしか 背負えない使命があるとも、思っている。
  10. 理解を示す
  11. 否定する
  12. まあ、気持ちは理解できなくもない。
  13. 俺も、傭兵団が壊滅した時には多少なりとも 思うところはあったしな。だが……
  14. わからないな。だからと言って、何で お前が一人で背負わなきゃいけない?
  15. 周りの連中に負担をかけないようにして、 結局何もかもが上手くいかなかったら……
  16. お前は、それに満足できるのか?
  17. ……俺は、皆を少しでも幸せにしたい。 あの日の死者も、今を生きる人々もだ。
  18. そんな理想を何の犠牲も払わずに 遂げられるとは、俺も思っていない。
  19. だが、俺の理想などに巻き込まれたせいで、 他の誰かが苦しむのは、認められない。
  20. 一人で背負える重荷なら、背負ってしまった ほうがずっと楽なんだ。俺にとってはな。
  21. 皆を幸せにしたいなんて言うが、 お前の幸せはどこにあるんだ?
  22. 自分を大事にできない奴が、 周りの奴を大事にできるわけないだろ。
  23. そう言われてしまうと、返す言葉もない。 だが、俺の幸せと言われても……困るな。
  24. そんなこと、ついぞ考えてこなかった。 幸せ。幸せ……か。何だろうな。
  25. 何でわからないんだ。 お前が嬉しいと感じるのはどういう時だ?
  26. 倒せなかった相手を倒した時とか、 勝って生き延びた後の宴とか、あるだろ。
  27. ………………。
  28. 俺にそんな幸せを享受する権利などないと 思うが、もし許されるなら……
  29. 人々が安穏と暮らしていける国を築き、 彼らの笑顔を見ながら死にたいな。俺は。
  30. お前……前からずっと思ってたんだが、 すごい辛気臭い性格してるよな?
  31. 何で幸せを考えてて出てくるのが、 よりによって死の間際なんだよ。
  32. 辛気臭い……そうだろうか。 だが他に幸せと言われても、難しいな。
  33. もっと他にないのか? 例えば、早く 戦争を終わらせて、皆で戦勝を祝うとか。
  34. ドゥドゥーたちに言えば、 きっと喜んでご馳走を作ってくれるだろ。
  35. ……いや。俺にはそんなもの、勿体ないよ。
  36. だが、お前たちの喜ぶ顔が見られるのなら、 それもいいのかもしれないな。
  37. ……はあ。確かにお前は、 「民想いの優しい王様」にはなったな。
  38. そこはいい。変えられない性分というか、 お前が一生背負い続けるものなんだろ。
  39. だったら俺たちが、お前の分まで 勝手にお前を大事にするぞ。いいな?
  40. 手始めに休暇を満喫させてやる。 まずは遠乗りだ、ディミトリ!
  41. ……ありがとう、[HERO_MF]。