1. アネット、こんな遅くまで何かの研究か?
  2. ううん、研究じゃないの。 ちょっと、これを書いてたんだよね。
  3. 何だ、この黒い小虫が飛び回ってるような 絵は……。
  4. 絵じゃなくて楽譜だよ! 虫はないでしょ、虫は。
  5. 悪い、悪い……これが楽譜か。 もしかして、また新しい歌を……?
  6. そうだよ。良い曲が思い浮かんだから、 忘れないうちに書き留めておきたくて!
  7. 聴かせてほしいと頼む
  8. どんな曲なのか尋ねる
  9. 良かったら、聴かせてくれないか? どんな曲なのか気になるぞ。
  10. 駄目です。まだ歌詞が固まってないもの。 方向性は何となく決まってるんだけどね。
  11. どんな曲なんだ? 楽譜は読めないから、 まったく見当がつかなくてな。
  12. 楽しい感じにしようとは思ってるよ。 まだ歌詞のほうは固まってないけど。
  13. みんなの心の支えになるような…… 歌うだけで元気が出るような歌にしたいの。
  14. 心の支えになる、か。 完成が楽しみだな。
  15. ……ねえ、[HERO_MF]。 あの騎士の歌のこと、覚えてる?
  16. 騎士? ああ、あの人面馬……ごほん。 騎士の歌だな。もちろん覚えてるぞ。
  17. あたしね、またあの歌を聞いたの。
  18. アネット……もう諦めろって。 元凶の俺が言えた話じゃないが……。
  19. 違うの。諦めるとかじゃなくって…… 傭兵の人がね。死に際に歌ってたんだ。
  20. 全身傷だらけで、息も絶え絶えなのに、 その歌を口ずさんで、楽しそうに笑ってた。
  21. すごく苦しいはずのに、どうして そんな顔ができるんだろうと思って。
  22. きっと、仲間と楽しく飲んで歌ってた時の ことでも思い出してたんだろ。
  23. 戦いが終わった後の宴はいつもそうだ。 傭兵も騎士も入り交じり、歌って騒いで。
  24. そう……かもね。その人を弔いながら、 あたし、ずっと考えてたの。
  25. あの歌詞が広まったのは不本意だったし、 正直なところまだ納得いってないけど……
  26. あの人が最期に寂しい思いをせずに 済んだなら、それでよかったのかもって。
  27. 言っただろ? アネットの歌は、 誰かの支えになってるかもしれないって。
  28. きっとその傭兵の他にも、お前の歌に 救われた奴はたくさんいるはずだ。
  29. かく言う俺も、つらい時はお前の面白い歌を 思い出して、元気を取り戻してるからな。
  30. それ、要するに歌詞…… ……まあ、いっか。素直に喜んでおくよ。
  31. よしっ。だったらこれからも、 いろんな歌を作らないとだね!
  32. その意気だ、アネット。……それで、その 曲の歌詞はどんなものになる予定なんだ?
  33. 今のところ、仲間や友達と一緒に お料理を囲む歌にしようと思ってるんだ。
  34. 美味しそうなお料理が次々出てきて、 それをみんなで楽しく食べるの。
  35. 聴いてるだけで腹が減ってくるような、 楽しい歌になりそうだな。
  36. そうでしょ? その後は、おかわりを 作るために、食材を狩りに行くんだけど……
  37. ……ん?
  38. びっくりするほど大きな熊と出会って、 仲間と一緒に死闘を繰り広げるの。
  39. 熊との死闘……? 楽しい飯はどこへ……?
  40. ……まあ完成を待つか。 出来上がったら、一番に聴かせてくれよ?
  41. うん、約束するよ!