0. ふみゃああ……。
1. あれ……猫じゃない。 だいぶ怯えてるわ。
2. どうしたの？　誰かに追われてるの？ ふふ、まあ答えてくれるわけが……
3. …………………。
4. ………………！？ な、何があったの、イエリッツァ。
5. ……ん？ 前にもこんなことなかったかしら。
6. ……ここに、いたか。
7. 私に何か用？
8. お前ではない……そいつだ。 食糧庫を、荒らしたのでな……。
9. そいつって、この猫のこと……？
10. ……そいつは、足が速い。以前にも、 私から逃げ回ったことがある……。
11. ふーん、逃げ回ったことが……って、あ！ もしかして、前にあなたが追ってたのは……
12. そいつだ……。 ……怪我をしていた。
13. 傷を見てやろうとしたら……逃げた。 結局……兵士が、捕まえていたが……。
14. …………………。
15. …………………。
16. なるほど……。 逃げ出したのは人じゃなくて、猫だったの。
17. そういえば、人とは一言も言ってなかった 気もするわね。勘違いしちゃってた。
18. いや……私も、言葉足らずだった。
19. でも、正直意外よ。 あなたが猫の面倒を見ようとするなんて。
20. 人であれ獣であれ、何人たりとも 寄せ付けない雰囲気を纏ってるしね。
21. 私が厭うのは……人だけだ。
22. ……猫の面倒を、見たこともある。 バルテルス家の屋敷で、姉と……。
23. へえ、そうなの。 なら昔は怖がられてなかったのね。
24. ……ああ。
25. だがあの猫も、母と姉が去った後…… ある時から、行方がわからない……。
26. 血に塗れた私を、恐れたのかもしれん……。
27. そうかもしれないと答える
28. そうではないと答える
29. 猫には詳しくないけど、獣は危険を感じ取る 力に長けてるって言うしね。
30. あなたが危険な存在になったのを、 感じたのかもしれないわ。
31. ………………。
32. 猫には詳しくないけど、そう簡単に 面倒見てもらった相手を忘れるかしら？
33. ……私に、聞くな。
34. うーん、まあとにかく。あなたはこの 食料泥棒を捕まえてどうするつもり？
35. ……連れていく。 もう盗みを働かんように……
36. ふしゃーっ！？
37. ちょっと！　何をするつもり？ 怯えてすっ飛んでっちゃったじゃない。
38. 食糧を、与えてやるだけだ……。 なぜ怯えられたのか……。
39. ……あなたの良さが猫に伝わるには、 まだまだ時間がかかりそうね。