1. ……アッシュ。良いところに来たな。
  2. どうしたの? それは……お茶だよね。 もしかして、休憩の邪魔をしちゃったかな。
  3. ……いや。気にするな。 それよりもこの茶を、お前に飲んでほしい。
  4. え、いいけど……あっ。もしかして この薬草茶、ドゥドゥーが作ったの?
  5. ……ああ。興味が湧いて、 薬草について少し調べてみた。
  6. 陛下にお出ししようと思って、 試しにいくつか作ってみたんだが……
  7. お前に、率直な意見をもらいたい。
  8. なるほど、そういうことだったんだ。 それじゃあ、ありがたく頂こうかな。
  9. ………………。 この味は……。
  10. ……どうだ。
  11. ドゥドゥー。 この薬草って、もしかして……
  12. 以前、お前が採ってきたのと同じ花だ。 いくつか他の薬草を混ぜて、蒸らした。
  13. 王都の薬師がよく作るとも書いてあった。 ……口に、合わなかっただろうか。
  14. ううん、その逆だよ! なんだか、懐かしい味がして……
  15. ああ……そうだ。これ、僕がロナート様に 引き取っていただいた頃、飲んでいたんだ。
  16. ……ロナート殿が、淹れていたのか。
  17. うん……。あの頃のことはまだ覚えてる。 ほら、僕、貴族とは無縁の生まれだから……
  18. ロナート様と一緒に暮らし始めた頃は、 何をするにも緊張しちゃって、大変だった。
  19. そんな時、あの方が淹れてくださった お茶を飲んだらすごく落ち着いたんだよね。
  20. ……この茶には、気分を落ち着かせて 緊張を解く効果があるとも記されていた。
  21. ロナート殿は、お前が安心できるよう 手を尽くしていたのかもしれん。
  22. うん……ロナート様のことだから、 きっと僕を慮ってくれたんだろうと思う。
  23. 本当に小さい頃の話だから、このお茶が どんなものなのかも聞かなかったけど……
  24. そうか……こういうお茶だったんだね。 2年も王都にいたのに、知らなかったよ。
  25. ロナート様は、リュファス様にも このお茶を振る舞っていたのかな。
  26. ……本人から、話を聞いてはいないのか。
  27. うん。ずっと昔、リュファス様と 仲違いしてしまったみたいで……
  28. 僕、あの方が王都にいた時の話は 全然聞いたことがないんだ。
  29. でも、薬草に造詣が深いのは、 君が陛下を気遣っているのと同じように……
  30. リュファス様に、何かしてあげたいと 思ったからだったのかもね。想像だけど。
  31. ……そうかもしれんな。
  32. ……さて。ごちそうさま、ドゥドゥー! 美味しかったし、すごく心が軽くなったよ。
  33. よければ作り方を教えてくれないかな。 これ、僕もみんなに振る舞ってあげたい。
  34. ああ……もちろんだ、アッシュ。