1. ………………。
  2. ……あれ? ドゥドゥー? 何してるの、そんなところで。
  3. ……アネット。 少し……稽古をしていた。
  4. そっか。 お疲れ様、ドゥドゥー。
  5. けどもう食事の時間だし、そろそろ 切り上げたほうがいいんじゃないかな。
  6. ……もう少し、続けたい。 今のままでは……不十分だからな。
  7. 不十分って……斧の腕前の話? 今でも十分凄いと思うけどな。
  8. ……遺産を振るうことのできん力不足を、 補わねばならん。
  9. フェリクスたちも、お前も、 遺産の力を振るって活躍している。
  10. ……どれだけ腕を磨こうと、及ばん。 少しでも、その差を埋めなければ……。
  11. ……正直、おれはお前が羨ましい。 “英雄の遺産”を振るい、戦えるお前が。
  12. 何だか……珍しいね? ドゥドゥーが弱音を吐くなんて。
  13. ……すまん。聞き流してくれ。
  14. ううん、あたしは嬉しいんだよ! ドゥドゥーと仲良くなれた気がして!
  15. だけど、ドゥドゥーはそのままでも 十分みんなの役に立ててると思うよ。
  16. ……そう、だろうか。
  17. うんうん。遺産なんてなくたって、 ドゥドゥーはすっごく頼りになるけどな。
  18. 紋章や遺産が役に立つのなんて、 せいぜい戦争の時くらいだし……
  19. あたしはむしろ、お料理やお裁縫が得意な ドゥドゥーが羨ましいって思うの。
  20. それに体が大きくて、重たい斧だって 軽々振り回せるし、それも羨ましい!
  21. ……互いに、ないものねだりということか。
  22. そういうこと。というか、ドゥドゥーが 遺産まで使いこなせちゃったら……
  23. もう完璧すぎて、いよいよあたしたちの いる意味がなくなっちゃう。
  24. たくさん訓練するのは良いことだけど、 そうやって自分を追い込んじゃ駄目だよ。
  25. ……お前は強いな。アネット。
  26. その明るさは、おれだけでなく 周囲の皆を、いつも前向きにしてくれる。
  27. えへへ……そう言われると照れちゃうかも。 まあ、これがあたしの取り柄だからね。
  28. 少しでもドゥドゥーの 役に立てたなら、嬉しいな。
  29. ……さ、もう戻ろう! 今日の夕食は、あたしが作ったんだよ!
  30. 実は途中でお鍋の底が抜けちゃって、 どうなることかとは思ったんだけど……
  31. ……鍋の、底が?
  32. でも、何だかんだで美味しく作れたから ドゥドゥーにもたくさん食べてほしいんだ!
  33. 鍋の底……いや、まあ、いい。 料理が冷める前に、食べるとしよう。