1. うーん……。何か物足りないなー。 胸元の装飾が寂しいからかな……。
  2. なかなか売り物の首飾りみたいには いかないもんねー。
  3. ヒルダちゃん、どうしたの?
  4. ……あ、ドロテアちゃん。 今ね、首飾りを作ってるんだー。
  5. あと少しで完成ってところなんだけど、 どこか物足りない感じがして……。
  6. それで、どうしようかなーって。
  7. あ、ヒルダちゃんお手製の装飾品ね? ずっと見てみたかったのよ。
  8. 私が意見を出してもいいものかしら?
  9. もちろん! 教えて教えてー!
  10. これは……良い出来じゃない。市井の 品なんかより、よっぽど手が込んでるわ。
  11. あ、鎖の部分は植物の蔓を模しているのね。 なるほど……。
  12. 素人考えで申し訳ないけど、この花の飾りの 下に葉っぱを加えるのはどう?
  13. 花と蔓の間に、橋渡しするような模様が あれば、物足りなさが解消されるかも。
  14. おお……。 確かに良いかも! すっごく良さそう!
  15. ありがとう、ドロテアちゃん! 試してみるねー。
  16. お役に立てて良かったわ。
  17. また小物作りで困ったことがあったら、 ドロテアちゃんを頼ろうかなー……。
  18. ふふ、私でよければ聞くわ。 あ、あとね、ヒルダちゃん。
  19. 貴女が作った装飾品、 売り物にする気はない?
  20. えっ? 売れるかな?
  21. ええ、これだけの品はなかなか見ないわ。 例えば……歌劇団でも使えそうよ。
  22. それって、帝都のミッテルフランク歌劇団 ……ってことよね?
  23. ええ、舞台衣装って、 たくさんの装飾品を使うから。
  24. そうしたら、貴族の人たちが揃って 買い求めるようになるわ。すぐにね。
  25. ドロテアちゃん、大好き! 凄く嬉しいよー。
  26. ……そうだ。 もしかして、もっと協力できないかな?
  27. あたしね、いつかこういう装飾品を作る 職人の学校を開きたいなーって。
  28. そういう仕事とか学校の運営とか、歌劇団を 引退する人に手伝ってもらえないかな?
  29. 歌劇団の人たちって職業柄、 装飾品に詳しいと思うし……どう?
  30. ………………。
  31. 名案よ、ヒルダちゃん! とんでもないことを考えつくのね。
  32. 引退した団員の就ける仕事って少なくて、 歌劇団としても悩みの種だったはず。
  33. この話、是非進めましょ? 約束ね。
  34. うん、じゃあ約束。 ドロテアちゃんに出会えて良かったなー。