1. ふう……今日は上々の仕上がりだ。 相手してくれてありがとな、イエリッツァ。
  2. ………………。
  3. しかし……何度か手合わせしてきたが、 正直まだアンタのことがわからないよ。
  4. 腕は確かだが、そこに感情が乗ってない。 剣から伝わってくるものが何もない。
  5. それが、本気を出さずにいるせいなら、 やっぱりもう一度全力で……
  6. ………………。
  7. どうした、そんな黙り込んじゃって。 何か気に障ったか?
  8. ………………。 ……ならば貴様の剣で、俺を愉しませろ。
  9. ………………。 ……ハッ、受けて立とう。
  10. チッ、やっぱり別人だな……!
  11. 足りん……もっとだ……。 俺の渇きを潤してみせろ……!
  12. ……ったく。
  13. ……ああもう、やめだ、やめ。 こんなのつきあってられるかっての。
  14. 何……?
  15. イエリッツァの剣と違って、アンタの 剣からはいろんなものが伝わってくる。
  16. アンタは強い奴と楽しく殺し合いができれば それだけでいいのかもしれないが……
  17. アタシには守るべき相手がいる。 戦い続ける理由がある。
  18. 一瞬の享楽のために使ってやれるほど、 この命は安くないんだよ、“死神騎士”。
  19. ………………。
  20. そういうわけで、アタシじゃあんたの願いに 付き合ってやることはできないが……
  21. フォドラは広い。付き合おうっていう 酔狂な奴もいるかもしれない。
  22. 探せば、意外と近くにいたりしてな?
  23. そいつを見つけるってのを、当面の 「戦う理由」にしたらどうだ。
  24. ………………。
  25. ……とは言ったが、アタシも戦士だ。 強い奴との勝負はいつだって心が躍る。
  26. 命の奪い合いは勘弁願いたいが、 手合わせだったら大歓迎さ。
  27. また相手してくれよ、“先生”。 それじゃあな。
  28. ……ふ。
  29. 彼女ならば、私の中の魔性ごと 斬り捨ててくれるのではと思ったが……
  30. ……厳しい女だ。