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ふむ、過去にはこのような事例も……。 なるほど……。
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こんな夜更けまで、熱心ですな。
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っ!? ……ヒューベルトか。 君こそこんな夜更けに何を?
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またエーデルガルトにも知らせず、 新たな悪だくみでもしているのかね?
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失礼な決めつけはやめてもらえますかな。 くく……何か根拠でもあるので?
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む……いや、それはないが。 確かに、決めつけてすまなかった。
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いえいえ……悪だくみはしていましたので、 謝罪は不要ですよ。
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そうか。 ……って、やはりしていたのではないか!
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それで、何を熟読していたので?
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ヒューベルト、私の話を……
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判例を集めた本、ですかな。 しかも帝国貴族を裁いた例の。
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あ、ああ…… 我が父との決着を、見据えてね。
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法の定めるところに従えば、反逆は死罪だ。 しかし実際の運用はそうなってはいない。
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特に貴族は、助命されている例が多い。 最近になればなるほどな。
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爵位の返上だの、財産や情報の提供だの、 それまでの功をもって贖うだの……
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ありとあらゆる言い訳を駆使して、 貴族は生き延びようとします。
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手足をもごうとも死なず、地下深くに 幽閉しようとも這い出てくる……
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息の根を止めない限りは、ですな。
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……前ベストラ候のように、かね?
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さて、あの男が皇帝に正しく仕えず、反逆と 取られかねない行動を取ったことは……
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紛れもない事実です。
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ならば……
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だが、彼は残念ながら捕縛の際に抵抗し、 不幸な事故が起きて命を落とした。
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彼が果たして反逆の罪を犯していたかなど、 すべては闇の中。証明しようもありません。
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それは詭弁ではないか。罪あるがゆえに 貴殿が討ったと、誰もが思っているぞ。
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貴族として、正しく彼を公の場で 裁くべきだった。そうではないのか?
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そうしようとして、父に逃げられたのは どこの誰でしたかな。
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息の根を止めぬ限り、生き足掻く……
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貴族とはそういう生き物だと、 先程言ったでしょう。
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だからこそ私は、こうして父の逃げ道を 塞ぐために過去の事例を調べているのだ。
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再起などさせない。 私は父を、正しく断罪する。
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だから私は、再び父を捕らえた時に、二度と 逃がさぬよう過去の事例を調べているのだ。
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再起などさせない。 私は父を、正しく断罪する。
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……仮に、父が兵を挙げるような 真似をすれば、戦場で討ち取るしかないが。
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くくく……できますかな、貴殿に。
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できるできないではない。 ……この手で、始末をつける。
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そうせねば、私は許せぬのだ。
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己がエーギル公爵位を継ぐことも、 宰相の座に就くことも……。
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くくくくく…… それを決めるのは陛下ですよ。
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ですが、陛下の利になるのであれば、 貴殿の覚悟は歓迎されるでしょうな。