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はあ……。やっちゃった……。 陛下にあんな失礼を……。
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陛下はお優しいから怒ってないだろうけど、 合わせる顔がありませんね……。
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おや、モニカ殿…… こんなところで壁と会話でも?
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……なんですか、ヒューベルト。
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今のあたしは、あなたに構っている余裕は ないんです。放っといてください。
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くく……承知しました。
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先程、エーデルガルト様が悲嘆に暮れながら 『モニカを傷つけてしまった』と……
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言っていたことは、貴殿には伝えないように しておきましょう。
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え? 陛下が? というか、思い切り 伝えてるじゃないですか……。
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ただの独り言です。
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……陛下の部屋に絵があったんです。 その、お世辞にも上手ではなくて。
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『どなたかの子供の落書きですか?』って 聞いたら、陛下の描いた絵で……。
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陛下があたしを傷つけたなんて、 とんでもない……。
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傷つけてしまったのは、あたしなんです。 それが、情けなくて……。
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まあ、エーデルガルト様は ああ見えて繊細ですからな。
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衝撃のあまり、とっさに貴殿を傷つける 一言を放ってしまったのかもしれません。
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気にする必要などありませんよ。 私でもよくあることですので。
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……ヒューベルトは凄いですね。 陛下の言葉に右往左往しなくて。
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以前、従者になりたかったと言いましたが、 ……あたしには無理だったと思います。
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陛下があまりにも眩しくて、おそばにずっと いるなんて精神が耐えられそうにないです。
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そう思えば、今のこの距離感のほうが、 あたしには合っているのかも……。
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おや、そうなのですか。 貴殿が従者になる機会はあるというのに。
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機会……?
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この戦争が一段落すれば、陛下は貴族という 身分の破壊に乗り出すでしょう。
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まずは領地と爵位を切り離す……貴族で あっても領主である必要はなくなります。
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そうすれば、嫡子であっても常に陛下と 共にいることも可能な気がしますがね。
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……! 確かに、そうです。 何で考えが至らなかったんでしょう。
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陛下の目的は、何度も聞いたはずなのに、 それが自分の身にどう影響するか……
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よくわかっていませんでした。 愚かですね、あたしは。
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いえ、枠組みとはそういうものでしょう。 容易く揺れ動くことはない。
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だからこそ陛下は、荒療治で破壊しようと しているのです。人々の、常識を。
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………………。
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正直、あなたほど陛下の従者に相応しい人は いないと思います。ですが、負けません!
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いつか陛下の従者になり、貴族の……いえ、 貴族を超えた新しい生き方を示します!
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そうと決まれば、こんなところでうじうじ なんてしていられませんね!
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くくくく……立ち止まっているかと思えば、 一瞬で抜き去っていく……。
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私としても置いていかれるわけには いきませんな。進歩し続けなくては。