- 帝国は……初めから我らを討つ気が
なかったようだな。
- 最悪、父上の処断を要求されるのではと
懸念していましたが……。
- 帝国側の態度を見る限り、
それも杞憂に終わりそうですね。
- フ……これでも私は良き領主であると
自負しているからな。
- 私の命を奪っては、この地が上手く
治まらないと考えたのかもしれない。
- 父上ほど領民に敬慕されている領主は、
フォドラ広しと言えど他にいないでしょう。
- だが……そうであるならば、やはり
今回は判断を誤ったと言えるだろう。
- 盟主の口車に乗って、余計な戦いを
起こすべきではなかった。
- それは負けたから結果的にそう思うだけで、
勝っていれば違う評価になるのでは?
- ますます発展するグロスタール領を、
民は大いに喜んでくれたでしょう。
- 戦いに「もしも」がないように、
統治にも「もしも」はあり得ない。
- あの時こうしていたら、
と思っても遅いのだ。
- ………………。
- 故に、私はお前に後を託す。
お前なら、私の失態を取り返してくれる。
- それに……帝国にとって私は裏切り者。
身を引かなければ余計な警戒を招くだろう。
- ……わかりました、父上。
- この期に及んで、僕も父上のその判断が
間違っているとは思いません。
- これからは僕が、帝国と共にある、新たな
グロスタール家を率いていきます。
- レスターいちの名家の当主、
新しきグロスタール伯爵として。