- おう、エーデルガルトか。
- あら、エーデルガルトね。
- ……珍しいわね。
何か調べもの?
- 柄じゃないのはわかってるが、
どうしても気になる報告があってな。
- 柄じゃないのはわかってるけど、
どうしても気になる報告があってね。
- ローベ伯が帝国への臣従を表明した時、
同調の動きを見せた諸侯がいただろ?
- ローベ伯が帝国への臣従を表明した時、
同調の動きを見せた諸侯がいたわよね?
- だが、俺たちが同盟へと転進して、
王国軍が南下してきちまったら……
- けど、私たちが同盟へと転進して、
王国軍が南下してきちゃったら……
- そんな話などなかったように
しれっと王国の諸侯として動いてる。
- そんな話なんかなかったように
しれっと王国の諸侯として動いてるわ。
- よく覚えていたわね。
確かにそうよ。
- エリデュア家やデュバル家……彼らも
ローベ家同様、こちらにつく予定だった。
- 王国がそいつらを平気で使ってるのも、
やっぱグロスタール伯と同じなのか?
- 王国がその人たちを平気で使ってるのも、
やっぱりグロスタール伯と同じなの?
- 信頼なんかできなくても、貴族というだけで
大事にしなきゃならない。
- 信頼なんかできなくても、貴族ってだけで
大事にしなくちゃいけないのよね。
- もちろんよ。でも、グロスタール家の
当主が交代したように……
- 個々人が大事にされるとは限らないわ。
「血」のみが重要なのだから。
- 王国も同盟も、そこは同じってわけか。
- 王国も同盟も、そこは同じってわけね。
- あら、帝国だって例外ではないわよ。
私はなるべく平等に扱っているけれど。
- それでも軍務卿や内務卿の家を
蔑ろにすることなどできない。
- かつての宰相エーギル公に協力していた
彼らが、私に忠誠を誓うことは……
- 果たして変節かしら。
グロスタール伯との違いは何?
- わからないと言う
- 私心の有無だと言う
- 状況に差があると言う
- わからないな。
違いなんてあるのか?
- わからないわね。
違いなんてあるの?
- 何のために心を変えたか、かしら。
- 欲に塗れてるかどうか、とか?
金のために裏切るとかは、汚いしな。
- 欲に塗れてるかどうか、とか?
金のために裏切るとかは、汚いものね。
- ええ、そうも言えるわね。
私は、何のために心を変えたか、だと思う。
- 劣勢の時に裏切っちまうのは仕方ない、
って話か? 命は惜しいしな。
- 劣勢の時に裏切っちゃうのは仕方ない、
って話? 命は惜しいわよね。
- 一部は、そのとおりね。
私は、何のために心を変えたか、だと思う。
- 自分が財産や土地を得るため、
復讐のため、誇りのため……
- そんな下らない理由での変節には、
何の価値もないわ。
- 金を得るためや、復讐のためが、
くだらないか。耳が痛いな。
- 金を得るためや、復讐のためが、
くだらないか。耳が痛いわね。
- 貴方とは違うでしょう。
ただの傭兵ならともかく、領主なのよ?
- その選択一つで、領地に住まうすべての
民の人生が変わってしまう。
- そういう判断をできる者だけが、
人の上に立てる……。
- 俺はずっと傭兵をやってきて、
貴族に雇われることもあったが……
- 私はずっと傭兵をやってきて、
貴族に雇われることもあったけど……
- これまで貴族の在り方なんかに
興味を持つことはなかった。
- これまで貴族の在り方なんかに
興味を持つことはなかったわ。
- だが、お前に拾われて、
軍中での地位も上がって……
- けど、あなたに拾われて、
軍中での地位も上がって……
- 初めていろいろなものが見えてきた。
この世界に、どんな人間がいるのかが。
- 初めていろいろなものが見えてきたの。
この世界に、どんな人間がいるのかが。
- [HERO_MF]……。
- 正直、エーデルガルトの考えは
俺には難しすぎるなと思うこともある。
- 正直、エーデルガルトの考えは
私には難しすぎるなって思うこともあるの。
- でも、だからこそ、お前と一緒にいれば、
俺は何かを手に入れられる気がするんだ。
- でも、だからこそ、あなたと一緒にいれば、
私は何かを手に入れられる気がするのよ。
- そう。なら、お互い様ね。
- 私も貴方に、私には見えない多くのものを
見せてもらっているわ。
- 姓さえ持たない平民の貴方が、
私の下で剣を振るっている……
- それは私にとっても大きなことなのだから。