- ……兄上。それだけは認められません。
アネットに遺産を持たせるなど……!
- 落ち着け。遺産を持たせるからといって、
危険な前線に送り込むわけではない。
- 心配しないで、父さん。だってこれは、
あたしにしかできない仕事なんでしょ?
- ドミニクの紋章と、“英雄の遺産”……
それがあればみんなの士気も上がるんだよ。
- ……愚息の尻拭いをさせてすまぬな。
あやつなら、遺産も扱えたというのに……。
- ……領地を捨てて逃げ出したシモン殿が
ここへ戻るなど、考えにくいことです。
- ……流石に、返す言葉もない。
すべて、私の教育が足らなかったゆえだ。
- あやつには、我らが飢えや寒さに苦しまず
生きてこられた理由を説くべきだった……。
- そんな顔しないでください、伯父さん。
シモンが戻るまで、あたしが頑張ります。
- アネット、だが……。
- もうっ、父さんったら心配し過ぎ!
前線の人たちに比べたらなんてことないよ。
- 今もいろんな場所で、みんなが戦ってる。
戦って……死んじゃった友達もいるよ。
- なのに、あたしだけ逃げるなんてできない。
今、遺産を使えるのはあたしだけなんだし。
- ……すまん、アネット。
- ……危険を感じたら、すぐに逃げろ。
決して、お前を失いたくはない……。
- うん、わかってる。
……あたしたちみんなで、この国を守ろう!