1. あ、ローレンツ。厳しい戦いだったけど、 お互い、無事に生還できてよかったわね。
  2. ああ……君の助けがなければ、僕は今頃 名誉の戦死を遂げていたところだ。
  3. 僕を慕う女性たちを悲しませずに済んだ。 そのことについては礼を言っておこう。
  4. ……何か引っかかる言い方ね。
  5. 以前、君に話したことを覚えているな? このフォドラの、あるべき秩序についてだ。
  6. 覚えていると言う
  7. 忘れたと言う
  8. ええ、確か……貴族は平民を守り、平民は おとなしく寝てて、みたいな話だったかしら。
  9. 寝てろ、とは言っていないが…… 貴族には平民を守る責務がある。
  10. いや、覚えてないけど……。 あるべき秩序って何のこと?
  11. まったく……貴族は平民を守る責務がある という、そういう話をしただろう?
  12. 逆に貴族が平民に庇われ、挙げ句、 その平民が命を落としてしまったら……
  13. それはもう貴族失格と言わざるを得ない。 危うく、僕がそうなるところだった。
  14. そうは言うけど、私が助けなきゃ、 たぶんあなた死んでたわよ?
  15. 僕を助けたことで、君は窮地に陥った。 危うく君まで死ぬところだったじゃないか。
  16. けど、こうして生きてるわ。
  17. 運が良かっただけだ、自覚したまえ。
  18. いいか? 平民が自らの命を投げ打ってまで 貴族を助けようとなど、しなくてよいのだ。
  19. 平民の命と引き換えに生き永らえるなど、 僕には耐えがたい屈辱なのだよ。
  20. 今回のようなことは、決して、二度と、 しないでくれたまえ。いいね?
  21. 謝罪する
  22. 拒否する
  23. ええ、悪かったわ。 ごめんね。
  24. ……! ま、待て。誤解しないでくれ。 僕は何も、謝ってほしいわけではないのだ。
  25. 助けてもらった相手に謝罪を求めるなど、 僕がそんな狭量で身勝手な男に見えるか?
  26. わかった、なら謝ったのは取り消すわよ。 ……面倒な人ね。
  27. それが助けてもらった相手に言う言葉なの? 見損なったわ、ローレンツ。
  28. なっ……待て、違うんだ。感謝はしている。 ただ僕の立場を理解してほしいだけなのだ。
  29. そんな必死にならないでよ。見損なった ってのは取り消すから。……面倒な人ね。
  30. 面倒とは失敬な。 僕にとっては大事なことなのだよ。
  31. 先に言っとくけど、次に同じようなことが あったら、私はまたあなたを助けるわよ?
  32. 何だと? 全然わかってくれていないではないか!
  33. いえ、あなたの言いたいことはわかるけど、 私にも私のやり方ってものがあるの。
  34. 傭兵上がりとはいえ、目の前で仲間に 死なれたら後味が悪いことこの上ないわ。
  35. その仲間が私より弱い人なら尚更よ。 助けてあげなきゃ仕方ないでしょ?
  36. 君より弱い……それはもしかして、 僕のことを言っているのか?
  37. 違うの? そもそも庇われたくないなら、 もっと強くなればいいわけで。
  38. ……確かに、君の言うとおりだ。 正論すぎて文句を言う気にもなれない。
  39. いいだろう、これからの僕を見ていたまえ。 僕はまだまだ伸びしろのある男なんでね。
  40. 君を凌ぐ強さを身につけ、 貴族の僕が、平民の君を助ける……
  41. そしてフォドラの秩序は守られる! うむ、万事解決だな。はーっはっはっ!
  42. ……悪い人じゃないんだけどね。