- まったく……馬鹿なことするよなあ。
兵士同士の喧嘩に首を突っ込むなんてさ。
- ………………。
- まさかそのまま乱闘騒ぎとは……。
お前もまだガキってか、フェリクス。
- 下手な真似したら、フラルダリウス公爵家の
名声が失墜しかねない。それに……
- お前を公爵として重用してる陛下にまで、
余計な悪評が立つかもしれないんだぜ。
- ……わかっている。
- ほんとかあ? そう言ってる割には
すごく不貞腐れてるように見えるけどなあ。
- チッ……お前に説教されると腹が立つ。
お前はいつも説教される側だっただろう。
- 何言ってんだよ。お前だって、
最初から説教される側だったろ。
- 俺は毎度お前の悪巧みに
巻き込まれていただけだ、阿呆。
- ええ、本当かなあ……まあ、何でもいいが。
で? 何でまたあんな騒ぎを起こしたんだ?
- ……別に。首を突っ込んだ以上、
引っ込みがつかなくなっただけだ。
- 気をつけてくれよな。……ったくもう、
首にまでアザが出来てるじゃないか。
- 公爵閣下に何かあったら、これからの
ファーガスはどうなるかわからないんだぜ?
- 俺がいなくとも回るとまでは言わんが、
戦場で死ぬのは常に想定しているつもりだ。
- いやお前なあ……今お前がいなくなったら、
ファーガスは、それに陛下はどうなるんだ?
- ただでさえあの人にはやるべき仕事が多い。
その上、全部を独りでやろうとする性質だ。
- 帝国との戦争、フォドラの外との戦い、
国内統治に、いろんな制度の改革……。
- お前みたいな奴が隣にいてやらないと、
とても回らないと思うけどなあ。
- 何を他人事のように言っている。
それはお前も同じだろうが。
- いずれはゴーティエ辺境伯の嫡男として、
家督を継ぐのだろう。自覚はあるのか。
- わかってる、わかってる。自覚はあります。
この清廉潔白な振る舞いがその証拠だ。な!
- 清廉潔白、か。まあ確かに、
多少は日頃の素行も改まったようだが……
- 何だよ。お前にしては歯切れが悪いな。
そこはもっとこう、褒めるとこだろ。
- フン。褒めるも何も、赤子がようやく
立って歩き始めたようなものだろう。
- お前がどれだけ立派なことを言って
これまでの素行を悔い改めようが……
- その程度で簡単には拭い去れんほどの
前科があるのだと、自覚するんだな。
- ああ、相変わらず毒舌だなあ……。
まあお前らしいっちゃらしいけどさあ。
- ……まあ業腹ではあるが、お前の
言葉どおり今回は少しばかり軽率だった。
- ……それだけは、反省するとしよう。