- ふむ。こんなところだろうか。
ヒルダ、そちらはどうだ?
- うん。あたしのほうも準備できたよー。
- ささやかな料理しか作れなかったけど、
戦いの合間だし、仕方ないわよねー。
- ああ、宴は料理の質で決まるのではない。
勝利を祝う気持ちを共有するのが第一だ。
- ホルスト殿、先の戦いもご活躍でしたね!
フォドラで貴方に敵う者はいませんよ!
- まったくです。私も貴殿のように
なれたらいいのですが……。
- いや、私だけの力ではない。
皆の力があってこそだ。
- ………………。
- ……やっぱり兄さんは凄いなあー。
今回も大活躍だったし、きっと宴の主役ね。
- 昔から真面目で努力家で才能に溢れてて、
あたしとは大違い……。
- ……さて、それでは始めよう! 今回の
勝利の立役者であるヒルダを祝する宴を!
- ……へっ?
- ヒルダ殿、すべての兵を代表して
感謝の意を申し上げます!
- 貴女の咄嗟の対応がなければ、
我らは生きて帰れなかったでしょう!
- 今回ばかりはホルスト殿も、ヒルダ殿に
頭が上がりませんなあ。はっはっはっ。
- あたしが立役者って、どういうこと?
宴の主役は兄さんじゃないの?
- 何を言っている。今回はおまえの活躍を
皆で祝うための宴だぞ!
- だって……あたし、何かしたっけー?
前線には出たけど、苦戦して引き返して……
- その途上で追撃してきた敵を発見し、討った
だろう? あれが、敵の総大将だったのだ!
- おかげでその後、敵軍は総崩れ。我らは
攻勢に転じて勝利を掴むことができた。
- あの人、総大将だったの?
そんなに強くなかったけどなー。
- 振り向きざまに、えいってやったら、
一発で倒れちゃったしー。
- はっはははは。おまえは自分の強さに
いまだ気づいていないらしいな。
- ゴネリル家にあっては、ホルスト殿を除き
ヒルダ殿に勝てる者など一人もいません。
- 皆、ヒルダ殿を頼りにしているのです。
これからも頼みますぞ!
- はあー、みんなに褒められて楽しかった。
でも、なんで宴を開いてくれたのー?
- 普通にあたしを褒めてくれたら、
それだけで別によかったのにー。
- ヒルダ、おまえはいつも兄である私を立て
自分のことを誇ることがない。
- 私は、おまえにもっと自分を誇ってほしい。
誇るだけの力をお前は持っているのだから。
- そして皆にも、おまえの素晴らしさを
知ってもらいたいのだ!
- そのための宴だ。今回はささやかだったが、
次回はもっと盛大にやろうではないか!
- ……それ、誰が準備するの? 今回だって、
ほとんどあたしがやったんですけどー。
- いや、食材さえ用意できれば、
次は私が自慢の得意料理を振る舞おう。
- 得意料理って、またあの、どこで拾ったか
わからない……
- 楽しみにしていてくれ、我が愛しの妹よ!
はっはっはっはっはっ!