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よう! 公務からの帰りか? 皇帝陛下は忙しくて大変だな。
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ええ、ありがとう。 ………………。
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どうした? おれをじっと見て…… ……! まさか!
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バルタザール……絶対にあり得ないから、 妙な勘違いはやめなさい。
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ただ……本当に口説いてこないと思って、 少し見直しただけよ。
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ヒューベルトから聞いていた話があまりにも 散々な内容だったから、意外で。
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そりゃあ確かにそうだろうよ。 だが、おれが口説かねえって言ったんだ。
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おれの言葉のほうを信じてほしかった 気はするねえ。
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それは申し訳なかったわ。
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ただ、これまでなかっただけで、 これからもないという保証はないでしょう?
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確かにな。……ただなあ、おれにとっちゃ 本当にお前は口説く対象じゃねえんだ。
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お前は賢すぎるし、繊細すぎる。 おまけに地位も高すぎる。
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おれには手が届かねえ女だ。
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何というか……反応に困る評価ね。
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だが、口説くならともかく、 雇われるには良い相手だぜ?
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金払いは良いし、帝国軍と一緒にいりゃ おれの追っ手も近づけねえ。
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貴方が変なものを引き寄せるせいで、 陣地の守りに影響が出て大変なのよ。
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だったら、放っておいてくれても いいんだぜ?
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おれがそんなに頼りない男に見えるかね? てめえの身くらいてめえで守れる。
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お前のその賢さや、仲間思いなところは、 おれ以外の奴のために発揮してくれってな。
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……確かにそうしたほうが、 きっと効率的なのでしょうね。
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でも、私はそんなに賢い女ではないわ。 自分で決めたことは、守らずにはおれない。
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てめえで決めたこと?
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私の道は、フォドラを征する道。 従わぬ者を排除していく、戦いの道。
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だからこそ、私と志を同じくする者、 私に従う者、私を信じる者を……
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私は決して見捨てたりはしない。 自分のできる限り、守りたいと思うの。
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それが、借金塗れで女好きの どうしようもない傭兵であってもね。
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おおい、途中まで良い話だったってのに 急に酷いオチだな、お前。
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まあいい、お前がそういうつもりなら、 おれはこの立場を甘受させてもらおう。
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これほど拳の振るい甲斐がある雇い主は、 なかなか探しても見つからねえだろうしな。
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ふふっ、そう思ってもらえるよう、 私も努力は怠らないわ。
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それじゃ、私は行くから。 軍議には出てちょうだいね?
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……おっと、危ねえ、危ねえ。 つい口説きたくなっちまいそうになる。
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ヒューベルトの奴がいなけりゃ、 軽率にお近づきになろうと思うのによ。