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ふう……。 次はいつ、帝都に戻れるかしら……。
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おや、ドロテア殿。 邪魔をしてしまいましたか。
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大丈夫ですよ。ちょっと考え事をしてた だけですから。何かしら?
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実は、貴殿のいた歌劇団のことで……
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もしかして、何かあったの?
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いえ、貴殿宛てに手紙が来ているだけです。 ちょうど私の手が空いていたので……
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直接持ってきたのですよ。 ついでに話をしたいと思いましてね。
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もう、驚かせないで。貴方が来るなんて、 よっぽどの話かと思ったじゃないですか。
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くく……それは申し訳ありませんでしたな。 安心してください。
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さて、話というのは他でもない、なぜ貴殿が 歌劇団に戻らないのか、ということです。
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どういうこと? 私、戻りたいなんて言いましたっけ。
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いいえ。 ですが……そこなのですよ。
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貴殿は決して、戦いが好きではない。 傷つく人を見て心を痛めるほどでしょう。
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それに、歌劇団から戻らないかと誘いを 受けていることも存じています。
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それなのに、こうして前線に立ち続けて いることが不思議でしてね。
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………………。 確かに、貴方の言うことはもっともですね。
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私自身、歌劇団に戻る道を考えたことは ありますから。
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歌劇団で巡業して各地に歌を届け、人々の 戦争で擦り減った心を癒やして回る……
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例えばですけど、そういう道を選んだって、 エーデルちゃんやみんなの力になれる。
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それは確かでしょう?
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ええ、むしろ非常に有用な働きかと。
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でも……私は、みんなと一緒に 戦いたかったんです。
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自分だけ安全な場所にいたくなかった。 この気持ち、わかります?
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わかりますよ。私とて、そのような気持ちが 皆無でここにいるわけではありません。
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しかしそれなら……前線に歌劇団を呼び、 歌姫として兵士を慰撫する手もあります。
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貴殿がそれを考えつかないとは 思いませんが。
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何でもお見通しなんですね。 少し悔しくなっちゃうわ。
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もう一つの理由は、私が平民として、 エーデルちゃんを支えていきたいから。
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歌姫なんて立場でいたら、普通の平民の 扱いは受けられないでしょう?
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貴族と平民の身分の差をなくそうとしている エーデルちゃんの力になるために……
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私は、ただの平民の代表として、 戦い続けたい。わがままですけどね。
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………………。 これは驚きましたな。
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私は貴殿の覚悟を見くびっていました。 我が主のために、苦難の道を行くとは……。
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それに、他にも大事な理由はありますよ。
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まだあると?
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ここには未来があって、頼り甲斐もある、 貴族のご子息がいっぱいでしょ?
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帝都で歌姫に群がってくる軟弱者たちより、 よっぽど魅力的ですから。
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くくくく……なるほど、それは重大事です。 貴殿は実に強かで好感が持てますな。