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……ふうっ! 今日はこんなところかな。
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こんな夜更けに物音がすると思ったら…… 君だったか。
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ローレンツか。いつも普通の訓練の後に 一人で鍛えてるんだよ。
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いつ起こるかわからない戦いにも 備えるのが、傭兵ってもんだからね。
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そうか……すっかり心構えも傭兵だな。
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思えば、君が傭兵になったと知った時には 安堵もしたが、自責の念に駆られたものだ。
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……ん? 何でだ? あんたには関係ない話だろ?
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いや、無関係とは言えない。
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君の出身のサウィン村は、 我がグロスタール家の領地にある。
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恥ずかしながら、入学当初、君がそうだとは しっかり把握していなくてね……。
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学校が休止になった後、自領出身の生徒が どうなったか、気になって調べたのだよ。
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ほー。それで、わたしがどうなったのか、 知ったのか。
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ああ。グロスタール家を継ぐ者として、 領民を案ずるのは当然の責務だ。
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ガルグ=マクに来るにも、相応の対価を 払い、苦労を重ねてきただろう。
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そんな者が、苦しみに喘ぐようなことに なっては困るからな。
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教団に支払った金は、学校の休止後に ある程度返してもらえたんだけどね。
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けど、それだけだ。職の斡旋もなければ、 領主からの助けもなかった。
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だから、自分でどうにか傭兵見習いとして 入り込んで……後はまあ、運が良かったよ。
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………………。 ……すまなかった、レオニーさん。
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謝罪するよ。貴族としては父に代わって、 元級友としては僕自身が、だ。
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やめてくれよ。 あんたのせいじゃないんだし。
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わたしは自分の意志で村を出たんだ。 この腕一本で生きていくって決めてね。
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村にいれば、貴族に守ってもらえたんだろ? でもわたしは、そうじゃない道を選んだ。
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平民が貴族に頼らないで生きていく。 そういう時代が、来てもおかしくないだろ?
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……それでは君は、これから先、 貴族は必要なくなるというのかね?
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そうは言っていないよ。 あんたに守られたい平民だっているだろ。
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でも、平民全員を貴族が守るなんて、 難しいと思うんだ。こんなご時世だしな。
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わたしみたいな人は、きっと増えてくよ。 ま、ずっと先の話かもしれないけどね!
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貴族の在り方が変わる時代、か。 平民の枠に収まらない、平民……?
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………………。