- ……万一ヘヴリング領を抜かれれば、
王国軍が帝都に雪崩れ込む羽目になる、か。
- そうだ。ここから東、オグマ山脈によって
狭められた隘路の先に……
- アンヴァルの西の玄関とも言える、
ヘヴリング領の領都モズグズがある。
- ヘヴリング伯閣下らが、そこで最後の
防衛陣を敷いておられるだろう。
- 我々はその前陣というわけだ。
もちろん勝てるにこしたことはないが……。
- もう「最後」と言うまでに
追い詰められてるってわけか……。
- ああ。ベストラ侯をはじめ、幾人かの要将が
行方知れずになったという話もある。
- 帝都や東部の戦線で、いったい何が
起こっているというのか……。
- 確かに、近頃の帝国軍は様子がおかしい。
お前らの部隊はまだマシなほうだよ。
- 嘆かわしいことだがな。
信頼できる将のほうが、少ないんだ。
- 必要のない略奪を嬉々として行う者や、
焼いた村落の数を競い合う者。
- そういった者を次々と登用したのは
摂政閣下なのだが……
- おいおい、いいのか?
帝国の実情がだだ漏れだぞ。
- あ、ああ……いや、いいんだ。
正しい情報に従って動いてほしい。
- お前たちの活躍が、この防衛戦の勝利に
かかっていると言っても過言ではない。
- だが、他言無用で頼む。
軍の士気に影響が出ても困るからな。
- 俺たち傭兵が主戦力とはよ……。
が、仕方ねえんだろうな。
- まあいい。報酬さえ貰えるんなら、
俺たちは自分の仕事をこなすだけだ。
- ……ジェラルト殿。
- もしこの戦いで俺が死ぬことがあれば、
傭兵団と帝国との契約は切れる。
- そうなれば、お前たちは帝国が犯す非道に
加担し続ける必要はない……。
- ………………。
- ……兄さん。
- ……おい、[BYLETH_MF]、
あれから調子はどうだ?
- やっぱりその見た目には、
どうにも慣れねえな。
- それは自分もだ。
けど、戦場に出れば気にならないと思う。
- それは自分もだよ。
けど、戦場に出れば気にならないと思う。
- それならいいがな……。
- この局面に来て、王国軍も
かなりの兵力を投入してきた。
- だからか知らねえが、
妙に胸騒ぎがするんでな……気をつけろよ。
- わかった。ジェラルトこそ、気をつけて。
- わかった。ジェラルトこそ、気をつけて。
- ……っと、そうだ。
お前に渡すものがあるんだった。
- こいつは俺が昔使ってた剣でな。
切れ味は最高だ。やるから好きに使え。
- セイロス騎士団の団長に与えられるもんだが
……傭兵団の荷物の中で眠ってたんだよ。
- ……そういえば、騎士団長だったんだな。
アロイスがそんな話をしていた。
- ……そういえば、騎士団長だったんだね。
アロイスがそんな話をしていた。
- まあ、一昔前の話だがな。
俺はもうその剣を握るつもりはねえ。
- だけど、いいのか?
思い出深い剣だろう。
- だけど、いいの?
思い出深い剣だよね。
- ほこりをかぶったままでいるよりは、
お前に使われたほうが剣も幸せさ。
- ありがとう、ジェラルト。
大事に使わせてもらう。
- ありがとう、ジェラルト。
大事に使わせてもらう。
- ああ。
俺の分まで使ってやってくれ。