1. ……この期に及んでスレンが動くか。 数節前に撃退したばかりだったのだがな。
  2. 前回は一部の部族の暴走だったようですが、 此度はまた別の一団による侵攻かと。
  3. 敵は少数だと聞いているが、現況下で 辺境伯の動きを阻害されるのは痛手だな。
  4. 先王陛下と共にスレン族と戦ってから、 もう14年近い歳月が過ぎています。
  5. 元々好戦的な民族ですし、王国の混乱を 知れば間違いなく攻め入ってくるでしょう。
  6. ……ならば問題は、誰が王国の状況を スレンの者たちに伝えたか、という点か。
  7. おい、猪。いるな。 少しばかり不味いことになった。
  8. どうした、フェリクス。
  9. 連邦国の連中が、フラルダリウス領に 侵入した。今も西へと侵攻を続けている。
  10. ……連邦国が? どこから入ってきた。 東側の国境は十分に警戒していたはずだが。
  11. 海だ。奴らは巨大な船を使って海を渡り、 フラルダリウス領東岸の湊町を占拠した。
  12. 巨大な船だと? レスターに大規模な兵力を 運べる船があるなど聞いたことがないが……
  13. 知るか。聞きたいのはこちらのほうだ。 実際に船で現れたものは仕方あるまい。
  14. ……だが、いかに巨大であっても船は船、 輸送できる兵力には限りがあるはずだ。
  15. とすれば彼らも無用な消耗は望みますまい。 恐らく、まっすぐに西進してくるはずです。
  16. 奴らの狙いはあくまで王都ということか。 ならばその途上で食い止めねばならん。
  17. それが“ファーガスの盾”の責務だからな。 ……俺は自領に戻り、迎撃の用意を整える。
  18. 陛下、私にも同道の許可をいただけますか。 前領主として看過できん事態ですから。
  19. そうだな。王家からも援兵を送ろう。 ……生きて戻ってこい。必ずだ。