- ………………。
- ………………。
- ………………。
- なあ、この空気、どうにかならないのか?
- ねえ、この空気、どうにかならないの?
- こんな状態で戦場に行くとか、
上がる士気も上がらないぞ。
- こんな状態で戦場に行くとか、
上がる士気も上がらないわよ。
- あっ……そ、そうですね。すみません。
私としたことが、つい物思いに耽って……。
- 考え事かと聞く
- 励ます
- 深刻な顔して、考え事か?
- 深刻な顔して、考え事?
- ええ……こうしてダスカーを訪れ、皆と共に
戦う日が来るなど想像していなかった、と。
- 面白い話でもしてやろうか?
笑えば悩みなんて吹き飛んじまうぞ。
- 面白い話でもしてあげる?
笑えば悩みなんて吹き飛んじゃうわよ。
- お気遣いありがとうございます。
けれど、そう心配しないでください。
- こうして皆と共にダスカーを訪れる日が
来るとは……と、考えていただけですから。
- ドゥドゥーは、よく訪れているのでしょう?
陛下から、いろいろと聞いていますよ。
- ……ああ。
- 私たちはまだ、ダスカーには不慣れです。
頼りにしていますからね。
- ……イングリット。
- 確かに……辛気臭い顔はすべきではない。
かといって、明るく振る舞う必要もない。
- まあ、今回は相手が相手だからな。
何も思うなというのは、無理な話だろうよ。
- 聞いた話だと確か、今回の相手は
ダスカーの民の一派……だったよな。
- 聞いた話だと確か、今回の相手は
ダスカーの民の一派……だったわよね。
- ああ。暴動の鎮圧を要請されてな。
ダスカーの中でも揉めているらしい。
- ……今のダスカーは、
2つの勢力に割れている。
- 平たく言えば、ファーガスとの
共存を目指す者たちと、厭う者たちだ。
- 近頃は関係も改善されつつあるが、やはり
いまだに怨恨を捨てきれん者たちも多い。
- それは、そうだよな。
身内を虐殺されたんだし……。
- それは、そうかもしれないわね。
身内を虐殺されたんだし……。
- 陛下はその負債を返そうと尽力されている。
何度も足を運ばれて話し合ってきた……。
- 今回の件も、その一環と言っていいだろう。
- だが、それでここまで重い空気になるか?
暴動を鎮圧するだけだろ。
- でも、それでここまで重い空気になる?
暴動を鎮圧するだけでしょ。
- もちろん大事な人たちが死んじまった
場所だからってのはあると思うんだが……。
- もちろん大事な人が死んじゃった
場所だからってのはあると思うけど……。
- 先日、情報がもたらされてな。
- 暴動の首謀者は、かつてダスカーに
国王襲撃部隊を呼び込んだ者だという。
- 暴動を鎮圧しつつ、その者を捕縛して
王都へと移送するのが、俺たちの任務だ。
- ダスカーの民でありながら、
“ダスカーの悲劇”に関与していた者。
- グレンの……仇。
- ちょっと待ってくれ。あの事件に、
ダスカーの民は関わってなかったんじゃ?
- ちょっと待って。あの事件に、
ダスカーの民は関わってなかったんじゃ?
- 大部分のダスカー人は、だ。
- 無論、あの事件の首謀者は別にいるが、
ダスカー側にも関与していた人間はいる。
- 少なくとも、国王の部隊を襲撃できるほどの
軍勢を手引きし、迎え入れた者の存在は……
- 最初からわかっていたし、あの猪も
ダスカーの長と協力し、探り続けてきた。
- とうとう見つけたわけか。だが、流石に
そいつが暴動を扇動するのは筋違いだろ。
- とうとう見つけたわけね。でも、流石に
その人が暴動を扇動するのは筋違いでしょ。
- ………………。
- イングリット。
その者を、殺さずにいられるか。
- ……殺すなという、陛下の命には従います。
彼らからは情報を引き出さねばならない。
- 真実を明かして、罰すべきを罰する。
それもまた復讐……なのですから。
- まあ、奴とて殺したいのはやまやまだろう。
だからこそ俺たちを遣ったのかもしれん。
- ……そうだろうな。
陛下の信頼には、応えなければ……。
- ……ええ。
- ………………。
- 鼓舞する
- そっとしておく
- 将が落ち込んでたら兵士も弱気になる。
ここは、もっと胸を張って行かないか?
- 将が落ち込んでたら兵士も弱気になるわ。
ここは、もっと胸を張って行かない?
- ……そのとおりだな。俺たちは、猪の……
国王の代行者としてダスカーへ来ている。
- 万が一にも負けるわけにはいかん。
それはわかっているだろうな。
- ……当たり前だ。
- ………………。
- ………………。
- 心配は無用ですよ。戦いが始まれば、
暗い顔などしている暇はないでしょうし。
- ……さて。間もなく戦闘が始まる。
軍議に向かうぞ。