0. よう、ローレンツ。厳しい戦いだったが、 お互い、無事に生還できてよかったな。
1. ああ……君の助けがなければ、僕は今頃 名誉の戦死を遂げていたところだ。
2. 僕を慕う女性たちを悲しませずに済んだ。 そのことについては礼を言っておこう。
3. ……何か引っかかる言い方だな。
4. 以前、君に話したことを覚えているな？ このフォドラの、あるべき秩序についてだ。
5. 覚えていると言う
6. 忘れたと言う
7. ああ、確か……貴族は平民を守り、平民は おとなしく寝てろ、みたいな話だったか。
8. 寝てろ、とは言っていないが…… 貴族には平民を守る責務がある。
9. いや、覚えてないな……。 あるべき秩序って何のことだ？
10. まったく……貴族は平民を守る責務がある という、そういう話をしただろう？
11. 逆に貴族が平民に庇われ、挙げ句、 その平民が命を落としてしまったら……
12. それはもう貴族失格と言わざるを得ない。 危うく、僕がそうなるところだった。
13. そうは言うが、俺が助けなきゃ、 たぶんお前は死んでたぞ？
14. 僕を助けたことで、君は窮地に陥った。 危うく君まで死ぬところだったじゃないか。
15. だが、こうして生きてる。
16. 運が良かっただけだ、自覚したまえ。
17. いいか？　平民が自らの命を投げ打ってまで 貴族を助けようとなど、しなくてよいのだ。
18. 平民の命と引き換えに生き永らえるなど、 僕には耐えがたい屈辱なのだよ。
19. 今回のようなことは、決して、二度と、 しないでくれたまえ。いいね？
20. 謝罪する
21. 拒否する
22. ああ、悪かったよ。 ごめんな。
23. ……！　ま、待て。誤解しないでくれ。 僕は何も、謝ってほしいわけではないのだ。
24. 助けてもらった相手に謝罪を求めるなど、 僕がそんな狭量で身勝手な男に見えるか？
25. わかったよ、なら謝ったのは取り消す。 ……面倒な奴だな。
26. それが助けてもらった相手に言う言葉か？ 見損なったぞ、ローレンツ。
27. なっ……待て、違うんだ。感謝はしている。 ただ僕の立場を理解してほしいだけなのだ。
28. そんな必死になるなよ。見損なったってのは 取り消すから。……面倒な奴だな。
29. 面倒とは失敬な。 僕にとっては大事なことなのだよ。
30. 先に言っとくが、次に同じようなことが あったら、俺はまたお前を助けるぞ？
31. 何だと？ 全然わかってくれていないではないか！
32. いや、お前の言いたいことはわかるが、 俺にも俺のやり方ってもんがある。
33. 傭兵上がりとはいえ、目の前で仲間に 死なれたら後味が悪いことこの上ない。
34. その仲間が俺より弱い奴なら尚更だ。 助けてやらなきゃ仕方ないだろ？
35. 君より弱い……それはもしかして、 僕のことを言っているのか？
36. 違うのか？　そもそも庇われたくないなら、 もっと強くなればいいだろ。
37. ……確かに、君の言うとおりだ。 正論すぎて文句を言う気にもなれない。
38. いいだろう、これからの僕を見ていたまえ。 僕はまだまだ伸びしろのある男なんでね。
39. 君を凌ぐ強さを身につけ、 貴族の僕が、平民の君を助ける……
40. そしてフォドラの秩序は守られる！ うむ、万事解決だな。はーっはっはっ！
41. ……悪い奴じゃないんだがな。