- おや、ペトラ殿。
このようなところで奇遇ですな。
- どうですか、各地を転戦する生活は。
貴殿には慣れぬこともあるでしょう。
- はい、時折、寒い、ありますが、
皆のおかげ、支障、ほとんどないです。
- くく……それは重畳ですな。
- この調子で貴殿が、帝国軍に根を下ろして
くれるならば、大歓迎なのですがね。
- いいえ、わたし、いずれ、ブリギット、
戻る、戻ります。
- あなた、知る、でしょう。
わたし、王となる道、目の前です。
- ええ、わかっていますとも。
- ブリギットの帝国への従属は、
貴殿の王位継承と共に解消される……。
- その密約は、すでに我が主と
貴殿の祖父との間で成立しています。
- エーデルガルト様、ゲルズ公、どちらも、
ブリギットのため、考える、感謝します。
- 確かに、外務卿のゲルズ公も貴国のために
精力的に動いていたようですな。
- 外交方針で対立していたアランデル公が
いなくなったおかげで……
- やりやすくなったのでしょう、
少し若返ったような気さえしますよ。
- 若返る、ですか?
白い髪の毛、増える、気がしますが。
- ……そうですな。
内面はともかく外見は、増えましたな。
- しかし、貴殿には
申し訳ないことをしました。
- ブリギットとの約定、今の時点で
表に出すわけにはいきませんからな。
- 仕方ない、なくあります。
7年前の戦争、覚えている人、多いです。
- 戦争中、帝国の人々の心、
揺らがせるわけにはいきません。
- 理解いただいて、助かりますよ。
- はい。しかし、ブリギットの民は皆、
この約定、知っています。
- もしも、反故、される……
無駄な血、大量、流れる、思います。
- ほう……それは、脅しですかな。
- いいえ、ただの、心配です。
もちろん、帝国、信じています。
- そのようなこと、起こらない、当然です。
違いますか、ヒューベルト。
- ……くくく。
くくくく……!
- 貴殿はすでに王というわけですな。
これは失礼しました。
- 無論、そのようなことは起こりません。
帝国とブリギットは……
- 貴殿と陛下のように、支え合って、
共に未来へと進むのですから。
- はい、あなた、見届ける、思います。