1. ………………。 砂、風、雨……天気の話、です?
  2. さっきから、うんうん唸って…… どうしたのかな。
  3. リンハルト……よいところ、来ました。 これ、わたし、理解、悩みます。
  4. それって、手紙? あれ、君は読むのは問題なかったよね。
  5. はい、読めます。しかし、意味、理解する、 できません。あなた、読む、願います。
  6. ええ、君への手紙なんでしょ? 誰からか知らないけど、遠慮したいなあ。
  7. それでは、返事、できません。 わたし、教える、頼みます、リンハルト。
  8. 仕方ないなあ……。 じゃあ読むけど……。
  9. なるほど、これは確かに読めない。 古めかしい表現の羅列だね……。
  10. 『果てなかりし砂の大地ありて、 此の身もいずれ砂とならざらむ。』
  11. 『嗚呼、西風よ。慈の雨を運びたもうたか。 我が喜びは溢れる河面がごとくなりけり……』
  12. ……うん? ひょっとして、これ恋文なんじゃ……
  13. 恋文、愛の告白、ですか? ……可能性、ある、あります。
  14. それならそうと先に言ってほしかったなあ。 まあ、見てしまったものはしょうがないか。
  15. はい、仕方ありません。
  16. 恋文、読めない、より、意味、成さない、 成しません。伝わる、役目、大事です。
  17. いや、わかるけど…… 僕は全然読みたくないからね。
  18. それで、あなた、意味、理解する、しました? わたし、教授、求めます。
  19. はあ……そうだね。これは古い比喩を使って、 手紙の送り主が君への愛を綴っているんだ。
  20. 綴り過ぎていて、ちょっと心配になるけど。
  21. 愛、熱烈、ですか? 構いませんが、 わたし、相手、ほとんど、知りません。
  22. ほとんど知らないの? 毎日会っているかのような文章だよ。
  23. しかも、技法的にもいろいろと間違っていて、 よろしくない出来だね……。
  24. ブリギットを意識したんだろうけど、雨を 運ぶのは西風じゃなくて南風だし……
  25. そもそも「慈の雨」は女神からの贈り物だ。 君の譬えとしてはかなり無礼だろう。
  26. それに、自分を砂の大地に譬えているのに、 急に河が現れて氾濫してる……滅茶苦茶だね。
  27. 技法、難しい、思います。 しかし、リンハルト、あなた、詳しいです。
  28. いや、僕もたいして詳しくないよ。 そんな僕がわかるほど、酷い文章ってこと。
  29. それで、返事はどうするつもり?
  30. わたし、未熟、痛感しました。感謝、です。 フォドラの古い表現、勉強します!
  31. まさか、勉強して古風な返事を返すつもり? そのやり取り、成立するかな……。