1. 『……元気で過ごしていますか。  姉弟で、喧嘩などしていませんか。』
  2. 『私は変わりありません。  何不自由なく過ごしています。』
  3. 『王国の教会を離れてしばらく経ちますが、  私は何とか暮らしています。』
  4. 『……戦争が終わったら、 また3人で一緒に過ごして……』
  5. ……母上は、息災のようだな。
  6. ええ。お手紙に、あなたと再会できたって 書いたら、すぐに返事が届いたのよ~。
  7. ふふっ、嬉しかったんでしょうね~。 お母様はいつもあなたを心配していたから。
  8. ………………。
  9. バルテルスのお家で別れたきりだったし…… 近いうちに、顔を見せてあげてちょうだい。
  10. お母様の手紙にも書いてあったけれど、 戦争が終わったら、また3人で一緒に……
  11. ……それはできん。
  12. ……どうして?
  13. 私は…… 母上に、顔を見せるべきではないだろう。
  14. 父を斬り、家中の者を皆……斬った。 殺人者を……母に会わせたくはない。
  15. ……その話は、私も聞いているわ。 でも、あなたにも事情があったんでしょう?
  16. それをきちんと話しさえすれば、 お母様だってわかってくださるわよ~。
  17. ……そういうことではない。 私の中には……殺戮を好む悪鬼がいる。
  18. “死神”は…… お前や母上も、躊躇なく殺すだろう。
  19. そうなれば、私は…… きっと、私のままではいられない。
  20. 大丈夫よ。今、こうして私と話していても あなたは昔のあなたのままだわ~。
  21. 甘いお菓子と猫が大好きな、 エミールのまま……。
  22. ……メルセデス。
  23. たとえ今は、そうだとしても…… いつか、私の中の悪鬼が死んだとしても……
  24. 私は……己の罪が許されるまで お前たちと、共には暮らせない。
  25. ……そして、罪が許される日など、 ともすれば永遠に来ないかもしれない。
  26. そんな……。
  27. 法によって裁かれ……罪をあがなう。 それが、私の望みだ。
  28. ……そう。それが、あなたの決断なのね。
  29. それなら、どんなに寂しくたって 頑張ってねって、応援してあげなくっちゃ。
  30. でもね。たとえ何年かかろうと、お母様も 私も、ずっとあなたを待っているから。
  31. あなたが胸を張って、お母様の前に 顔を出せる日を……待っているから。
  32. ……ああ。
  33. その時には私もお母様も、おばあちゃんに なっているかもしれないけれど……
  34. あなたの大好きなお菓子を食べながら、 いろんなことをゆっくりお話しましょう。
  35. ……そうだな。 ありがとう。姉上。