1. うーん……こうすれば…… いや、ああすれば……。
  2. あら、リシテア~。 厨房にいるなんて珍しいじゃない。
  3. メルセデスこそ、 こんな時間に何しに来たんです?
  4. ふふ、軍のみんなに お菓子を焼いてあげようと思って~。
  5. なるほど……甘いお菓子で 兵の士気を上げようというわけですね。
  6. それなら、わたしも手伝いますよ。 あんた一人じゃ、到底回らないでしょう?
  7. そうねえ……じゃあ、頼んでもいいかしら? まずは果物の皮剥きを……あら?
  8. どうしたんです?
  9. この果物、ほとんど傷んじゃってるわ~。 香りづけに使おうと思ったのに……。
  10. 勝手に買いに行くわけにもいかないし、 果物は諦めたほうがよさそうね~……。
  11. メルセデス、一応聞きますけど、 今、厨房でお菓子に使える材料は何ですか?
  12. ええと、卵と小麦粉とお砂糖と…… それから少しだけれど、種油があったわ。
  13. 代わり映えしない材料しかないなら、 作り方のほうを工夫すればいいんです。
  14. 工夫? 何かいい案があるのかしら~?
  15. そうですね……例えばほら、 鍋に入れた砂糖をよく煮詰めて……。
  16. ありがとう、リシテア。 おかげでみんなに楽しんでもらえたわ。
  17. 二つに割ったらお砂糖の蜜が出てくるなんて とっても素敵な発想ね~。
  18. ふふ、わたしの自信作ですからね。 ……でも、半分はメルセデスのおかげ。
  19. まあ、私の? 確かに、作るのは手伝ったけれど……。
  20. この前、あんたがくれた虹色の焼き菓子。 あれがどうにも忘れられなくて……
  21. もっと美味しいお菓子を作ってやろうと、 休憩時間にお菓子の研究を始めたんです。
  22. それで思いついたんだから、 あんたのおかげでも間違いじゃないでしょ。
  23. リシテア……でも、訓練で忙しいのに しっかり休まなくて大丈夫なの~?
  24. 作るのだって、気分転換になりますし。 忙しいからこそ、お菓子は必要なんです。
  25. ふふっ……そう。 あなたなりの休み方を見つけたってことね。
  26. はい。体を鍛えたり、魔法を覚えたり 日々の訓練も、もちろん大事ですけど……
  27. 時にはこうして休憩を挟んだほうが、 訓練もはかどるって気づいたんです。
  28. あらあら。 リシテア、あなた本当に変わったわね~。
  29. 余裕が出てきたというか、 前よりも、お姉さんになった気がするわ。
  30. お姉さんって…… わたし、最初からお姉さんですし。
  31. う~ん……もっと大人の女性? じゃあ、お母さんかしら~?
  32. それはちょっと違う気も……まあいいです。 そういうことにしておいてあげます。
  33. ねえリシテア、またお茶会をしない? あなたのお菓子、他にも食べてみたいわ~。
  34. たまにならいいですよ。メルセデスからは、 有意義な助言も貰えそうですしね。