1. ふっ。先の戦いを振り返ってみれば、 我ながら見事な戦略だったように思う。
  2. 流石はこの僕、ローレンツ=ヘルマン= グロスタールだ! はーっはっはっはっは!
  3. これはこれは、ローレンツ様。 素晴らしき哄笑でございます。
  4. そのような華麗な振る舞いが似合うのは、 貴方様をおいて他にはおられませんわね。
  5. ……ん? コンスタンツェさんか。 どうかしたのかね?
  6. 何もございませんわ。
  7. 私のような者が貴方様にお気遣いいただいて しまい、とても申し訳なく思っております。
  8. ま、待ちたまえ! どうしたというのだ? 君らしくないではないか。
  9. いつもの君ならば僕に勝ち誇った笑いを 披露するだろうに、いったい何が……!
  10. ……! そういえば、以前にも 彼女の様子が違うことはあったな……。
  11. 体調が悪いのかと思っていたが、これは そんな生易しい話ではないのか……?
  12. もしや、私の身の程を弁えない言動が、 勘気に触れてしまったのでしょうか。
  13. ならば、いかようにでも罰をお申しつけ ください。平伏してお受けいたします。
  14. 何を言っているのだ、コンスタンツェさん! 君の心は貴族だと、言っていたではないか。
  15. お戯れも程々にしてくださいませ。 私は今やただの平民にございます。
  16. ローレンツ様のどのような命にも、粛々と 従うしかない愚かな存在でございますわ。
  17. ……自分を取り戻してくれたまえ、 コンスタンツェさん!
  18. ヌーヴェル家を再興するのだろう? その気概はどこへ行ったのだ!
  19. まあ、何とお優しいお言葉でしょう。
  20. 貴方様のお言葉を否定するのは、 大変心苦しいことではあるのですが……
  21. ヌーヴェル家の再興などという荒唐無稽な 夢、私が叶えられるはずもありませんわ。
  22. そんな……。 まさか、コンスタンツェさんは……
  23. 家の再興という夢破れて己に絶望し、 このように人まで変わってしまったと……。
  24. 何たることだ。 ……僕が、どうにかしてやらねばなるまい!
  25. ローレンツ様のお手を煩わせるなど、 とんでもないことでございますわ。
  26. いや、そう言わないでくれ。 僕が好きで勝手にやることだ。
  27. ああ、本当にお優しいローレンツ様……。
  28. ですが、ローレンツ様に助けられても、 「私」は決して喜ぶことはありませんわ。
  29. 不躾で身勝手なお願いではあるのですが、 どうか見守るだけにしていただけないかと。
  30. ううむ、そう言われてしまうとな……。 君への認識を、また改めねばならないか。
  31. 君との決着をつけるべくいろいろと考えて いたのだが、これは勝負どころではないな。
  32. はい、どのような勝負をしたところで、 貴方様が勝ってしまわれますわ。
  33. そうだな……。君には一度、拒絶されたが、 あえて言っておこう。
  34. ローレンツ=ヘルマン=グロスタールに 不可能なことはないのだ!
  35. 君が夢を取り戻し、僕の力を必要とした 時には……必ず声をかけてくれ。
  36. はーっはっはっはっは!