1. はっ!
  2. 相変わらず、良い腕してるじゃねえか。
  3. バルタザールか。 近頃、熱心に訓練しているな。
  4. ま、おれもしょっちゅう酒に呑まれたり、 金を無心したりしちゃいられねえからな。
  5. ……金の無心は頻度の問題じゃないと 思うが。
  6. 確かに! お前の言葉はいつも核心を 突いて……いや、抉ってくれるぜ。
  7. 本当に抉られているのか? まるで堪えていないように見えるぞ。
  8. いやあ、これでも堪えているのさ。 おれの心の核は穴だらけでボロボロだ。
  9. けど、それを表に出しちゃあ男が廃るだろ?
  10. まあ、そうだな。 それが事実なら、悪くない。
  11. だろう? ようやくシャミアにも おれの良さが伝わったか。
  12. 今までは、お前の良さをおれが一方的に わかってるだけだったからな。
  13. 腕は一流、酒も賭け事も、気も強くて、 己を飾らねえ正直者……
  14. 実におれ好みの女で困っちまうぜ。
  15. ……困るのは自由だが、 正直、私はあんたの良さには懐疑的だ。
  16. 酒も賭け事も弱いが、気は変に強く、 飾っているのかどうかもよくわからん男……
  17. ま、腕は一流だな。 戦場でのみ信頼できる。
  18. 腕しか見解が一致しねえのかよ! だっはっは、こりゃ厳しい評価だ。
  19. それはそうだろ。 他にどう評価しろと言うんだ。
  20. そいつは……てめえで言うわけには いかねえだろう。
  21. てめえの良さってのは、相手が認めて 初めて意味があるってもんよ。
  22. なるほど、たまに至言……らしきことを 言うのはあんたの良さだな。
  23. そこは素直に至言って言ってくれても いいんじゃねえか?
  24. いつも一歩届かず、さ。
  25. いつもかよ!? 仕方ねえ、もう少し 男を磨いて至言を蓄えてくるかね。
  26. そうだな。 あんたはやればできる男だ。
  27. 期待せずに待っているよ。
  28. いやいやそこは期待してくれよ!? 最後まで手厳しいなあ、お前は。