link アネット volume_up
よしっ……大丈夫大丈夫。 サッと取って、サッと帰るだけだから……
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……こんばんは、アネット。
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……！
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す、すみません。 驚かせてしまいましたね。
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あっ……イングリットかあ……。 ごめんね……ちょっとびっくりしちゃって。
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いえ、気にしないでください。 しかしこんな夜更けに、どうしたのですか？
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えっと、食堂に参考書を忘れちゃって。 取りに行こうかなって思ってたの……。
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奇遇ですね。私も忘れ物を探しに、 食堂へ向かっていたところなのです。
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じゃ、じゃあ、あたしと一緒に行こうよ！ イングリットがいてくれたら心強いから！
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え、ええと……心強い？ どういうことでしょうか……まあ、いいか。
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………………。 く、暗いね……。
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！？　ねえ、今変な音がしたよ！？ あ、ああ、あの草むらのほうから……！
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草むら？　あら、あの人影……。 まさか、またこんな遅くまで……
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あ、アネット！？　走らないでください、 そちらには確か糧食の箱が……！
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いっ……たーーーーい！！！ 何でこんなところに木箱がーーーー！
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アネット……。
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いろいろあったけど、何とか辿り着けたー！　 ありがとう、イングリット！
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ぶ、無事に辿り着けてよかったです……。 アネットは暗い場所が苦手なのですか？
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そうなの……昔から駄目なんだよね。 克服したいなとは思ってるんだけど。
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そういうイングリットは怖くないの？ ほら、幽霊だっているかもしれないんだよ？
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特に……暗い場所に抵抗はありませんね。 幽霊だって見たことがありませんし……。
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でも、想像したら怖くない？　死んだ人が、 地の底からもぞもぞ這い上って……とか！
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ガラテア領の辺りにも伝わる伝承ですね。 子供の頃、よく兄に聞かされたものです。
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けれどそれが本当なら、今頃地上は死者で いっぱいになっているのではありませんか？
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う、うーん、確かにそうなんだけど。 気持ちの問題というか……。
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死者が幽霊になって会いに来るなんて、 本当にあったら、素敵だとさえ思います。
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人は、死んでしまったらそれきりなのです。 もう二度と会うことも話すこともできない。
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……そっか。そうだよね。死んじゃったら、 それで終わりなんだもんね……。
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だったら……ううん、だからこそ 今この時間を大切にしないと、だよね？
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ええ、私はそう思います。 人生はたった一度しかないのですから。
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……よしっ、イングリット！ 帰りはあたし一人で大丈夫だよ！
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えっ、大丈夫なのですか？ ここへ来る時はだいぶ苦戦しましたが……。
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だってほら、苦手な物を克服できるのも、 こうやって生きている今のうちでしょ？
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暗いところはもちろん怖いけど…… あたし、頑張ってみたいんだ！
link イングリット volume_up
ふふ……あの明るさ、私も見習わないとね。 生きている今のうちに……か。