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フェリクス、捜させやがって! お前、何で言ってくれなかったんだよ。
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チッ……いきなり何だ。
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何だも何も……前に、お前が兵士の喧嘩に 首を突っ込んだって話があったろ。
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あったな。……心配しなくても、 もう同じような真似はしていない。
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そうじゃなくてさ。うちの兵士から詳しい 話を聞いたんだ。お前、口止めしてたな。
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お前んとこの兵士が、ゴーティエの嫡子…… つまりは俺を馬鹿にしてたんだって?
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で、そいつが近くにいた奴に絡み、 そこにお前が乱入していった、と。
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フン。本当に馬鹿馬鹿しい真似をした。 もうやらん。
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兵に道理を説くのも責務だと思って、 出ていったまではいいが……
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知ってのとおり、俺は口より先に 手が出る性分でな。悪癖もいいところだ。
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にしたって、何でまた秘密にしてたんだ? 俺に聞かせたくない理由でもあったのかよ。
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……聞くに堪えんような雑言を、 わざわざ伝えてやる義理もないと思った。
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そう言われると逆に気になっちまうが。 ……まあ、悪かったよ。勝手なこと言って。
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……いや。謝罪すべきは俺のほうだ。 お前の話だったから、つい公私を混同した。
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気にすんなよ。俺が軽んじられるのは、 言っちゃなんだが当然のことなんだろうし。
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俺はそれだけ遊び歩いてきたからな。 数え切れないくらいの人に迷惑をかけた。
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悪いのはお前でも、お前んとこの 兵士でもない。他ならぬ過去の俺さ。
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わかっているなら、なぜ幼い頃のうちに 振る舞いをどうこうしようと思わなかった。
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そうやってちゃらんぽらんに 振る舞っていないと、俺は……
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……駄目になっちまう性分でなあ。 いやあ……良くないとは思ってたんだが!
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はあ……。まあいい。お前が馬鹿に されるのは、当然なのかもしれんが……
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お前のことを何一つ知らん人間が、 勝手な話をしているのが気に食わなかった。
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お前はまだ家督を継いだわけではないが、 何だかんだ言って皆の役に立っている。
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猪も……俺も、お前にはそれなりに 助けられていない……わけではないからな。
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えっ、いきなり何だよ、照れるな。 ……何でお前まで顔真っ赤なんだよ。
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チッ、うるさい、このド阿呆め。 いちいち茶化さねば人の話も聞けんのか!
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……お前は……それなりに頭も舌も回る。 軍略でも内政でも、勝る者はそういまい。
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いつかお前が言ったように、国内外を問わず 解決すべき問題は山積しているが……
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お前の力があれば……少なからず 状況も前に進む、と思っている。
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なに言ってんだ。そんな大きな問題、 俺一人には荷が重すぎるっての。
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確かに、俺はお前よりもちょっとばかり 悪知恵が働くかもしれないが、それだけだ。
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俺とお前で、足りないところを補い合って ファーガスを、陛下を支えてやるのさ。
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……そうだな。
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その……今後も、頼む。認めたくはないが、 俺にはお前が必要なのだろう。たぶんな。
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それに……お前がいなくては、 どいつもこいつも辛気臭くてかなわん。
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わかってるよ。わざわざ言われなくたって、 俺はずっと、お前と一緒にいるからさ。