1. ふむ、過去にはこのような事例も……。 なるほど……。
  2. こんな夜更けまで、熱心ですな。
  3. っ!? ……ヒューベルトか。 君こそこんな夜更けに何を?
  4. またエーデルガルトにも知らせず、 新たな悪だくみでもしているのかね?
  5. 失礼な決めつけはやめてもらえますかな。 くく……何か根拠でもあるので?
  6. む……いや、それはないが。 確かに、決めつけてすまなかった。
  7. いえいえ……悪だくみはしていましたので、 謝罪は不要ですよ。
  8. そうか。 ……って、やはりしていたのではないか!
  9. それで、何を熟読していたので?
  10. ヒューベルト、私の話を……
  11. 判例を集めた本、ですかな。 しかも帝国貴族を裁いた例の。
  12. あ、ああ…… 我が父との決着を、見据えてね。
  13. 法の定めるところに従えば、反逆は死罪だ。 しかし実際の運用はそうなってはいない。
  14. 特に貴族は、助命されている例が多い。 最近になればなるほどな。
  15. 爵位の返上だの、財産や情報の提供だの、 それまでの功をもって贖うだの……
  16. ありとあらゆる言い訳を駆使して、 貴族は生き延びようとします。
  17. 手足をもごうとも死なず、地下深くに 幽閉しようとも這い出てくる……
  18. 息の根を止めない限りは、ですな。
  19. ……前ベストラ候のように、かね?
  20. さて、あの男が皇帝に正しく仕えず、反逆と 取られかねない行動を取ったことは……
  21. 紛れもない事実です。
  22. ならば……
  23. だが、彼は残念ながら捕縛の際に抵抗し、 不幸な事故が起きて命を落とした。
  24. 彼が果たして反逆の罪を犯していたかなど、 すべては闇の中。証明しようもありません。
  25. それは詭弁ではないか。罪あるがゆえに 貴殿が討ったと、誰もが思っているぞ。
  26. 貴族として、正しく彼を公の場で 裁くべきだった。そうではないのか?
  27. そうしようとして、父に逃げられたのは どこの誰でしたかな。
  28. 息の根を止めぬ限り、生き足掻く……
  29. 貴族とはそういう生き物だと、 先程言ったでしょう。
  30. だからこそ私は、こうして父の逃げ道を 塞ぐために過去の事例を調べているのだ。
  31. 再起などさせない。 私は父を、正しく断罪する。
  32. だから私は、再び父を捕らえた時に、二度と 逃がさぬよう過去の事例を調べているのだ。
  33. 再起などさせない。 私は父を、正しく断罪する。
  34. ……仮に、父が兵を挙げるような 真似をすれば、戦場で討ち取るしかないが。
  35. くくく……できますかな、貴殿に。
  36. できるできないではない。 ……この手で、始末をつける。
  37. そうせねば、私は許せぬのだ。
  38. 己がエーギル公爵位を継ぐことも、 宰相の座に就くことも……。
  39. くくくくく…… それを決めるのは陛下ですよ。
  40. ですが、陛下の利になるのであれば、 貴殿の覚悟は歓迎されるでしょうな。