1. はあっ!
  2. やっ!
  3. やりました、レオニーさん! 大きな鹿ですね……!
  4. ああ、みんなも喜びそうだ。 じゃあ手早く解体して……ん?
  5. どうしました?
  6. なあ、イグナーツ。 この鹿、矢が1本しか刺さってないよ。
  7. あ、本当だ……。ボクとレオニーさん、 どちらかは外してしまったんでしょうか?
  8. 2本とも当たったような気が していたんですけど……。
  9. 矢は軍の支給品だから、 見た目で区別はできないしな。
  10. まあでも、これはわたしの矢かね。 良い手応えがあったし、間違いないよ。
  11. ええっ、ボクのって可能性はないんですか? ほら、あんまり深く刺さっていませんよ。
  12. 非力なボクの矢じゃないですか? いえ、その、自信はないですけど。
  13. ああ、言われてみると…… あんたの腕が百発百中なのは確かだしね。
  14. でも、そしたら、わたしのあの手応えは 何だったんだ? 自信あったんだけどなあ。 
  15. 何か別の獲物に当たった、とか? いえ、見当たらないですよね、あはは……。
  16. まあいいや。矢を抜いといてくれ。 わたしは吊るす場所を用意するよ。
  17. は、はい。 わかりました!
  18. ん、あれ? 奥に何か……あっ!
  19. おーい、イグナーツ。何やってるんだ? 血抜きの準備は終わったぞ。
  20. レオニーさん! もう一本の矢、見つけましたよ!
  21. 何だよ、嬉しそうに。 矢は、どこに刺さってたんだ?
  22. 刺さった矢の奥から、 砕けた矢じりが見つかったんです。
  23. それで辺りをよく探してみたら、 弾け飛んだ矢の欠片みたいなものが……。
  24. ってことは……最初に刺さった矢に、 次の矢が命中したってことか?
  25. そうみたいです。矢が浅く刺さってたのも そのためだったんですよ。
  26. なるほどねえ。でもさ、二人の狙いが 完璧に一致するなんて凄い偶然だよな。
  27. ええ、寸分たがわず同じ場所に 命中したってことですもんね。
  28. いやあ、当たった!っていう手応えが 錯覚じゃなくて良かったよ。
  29. かなり自信があったから、違うんなら どうしようかと思っててさ。
  30. ボクも、勘が鈍ったんじゃないかと思って 不安になっちゃいましたよ。
  31. ぷっ……あっはっはっは! わたしたち、同じことを考えてたんだな。
  32. あははは! そうですね。自分の矢だって 言いつつも、相手のだと思ってたというか。
  33. そりゃそうだろ? イグナーツが この距離で外したところ、見たことないし。
  34. それを言ったらレオニーさんもそうですよ。 狩りの腕は、抜群じゃないですか。
  35. ……はは、仲間にあんたみたいな奴がいて 良かったよ。戦場でも心強いしな。
  36. こちらこそ、ですよ! これからも一緒に頑張りましょうね!