- くく……いつ私の嗜好を調べたので?
ありがたく食べさせてもらいましょう。
- ほう……貴殿の真意が気にかかるところ
ですが、感謝はしておきますよ。
- 貴殿に悪気はないのでしょうが、
私にも苦手なものはありましてな。
- 遠乗りですか。付き合いましょう。
貴殿の監視もできますしな。
- 監視など、とんでもありません。
純粋に楽しむことにしましょう。ええ。
- 遠乗りは遮るもののない場所を駆けるのが
一番です。貴殿もそう思いませんか?
- 森は視線が通りにくいですからな。
奇襲にはうってつけの地形ですよ。
- 貴殿はご存じですかな? 煙と何とやらは
高いところが好きという言葉を。
- 二人で小舟を浮かべ、やがて戻ってきたのは
片方だけ……いえ、ただの物語ですよ。
- 貴殿は鳥獣にも詳しいのですか? 私は
毒を持った生物しか見分けられませんよ。
- それは……いえ、ただの落書きでしょうな。
何の変哲もないただの……。
- ほう……それで? 貴殿は二人きりになって
いったい何をしようと言うのですかな。
- そう思って私が道を覚えておきました。
貴殿は迷子の常習犯ですからな。
- 貴殿の手を煩わせてしまうとは……
恥ずかしい話ですよ、まったく。
- は? 私を背負う?
なるほど……転んだ私への戒めですか。
- まさか私と二人で小舟に乗る光景を
想像しましたか? ……やれやれ。
- 酔った経験がおありで?
馬上が平気なら問題ないと思いますがね。
- 今日のことを話したら、陛下も行きたがって
いましたよ。誘ってあげてはいかがですか。
- よく遠乗りには付き合わせられています
からな……貴殿も熱を上げているので?
- 私が自分を狙うなら、今この時こそ最大の
機会……と考えそうですな。
- 貴殿は、我がベストラ家に入っても
やっていけそうですな。くくく……。
- 遠乗りに出ていると……ふと有用な戦略が
浮かんでくることがありませんか?
- この大地には、初めは女神などいなかった。
経典にも書いてあることですよ。
- 貴殿は相変わらず楽しそうですな。
いえ、私も楽しんでおりますが。
- 私が好きなのは、賢く、主の役に立つ者。
つまりは貴殿……などと言うとでも?
- 腐るほどありますが、今、強いて挙げるなら
「思い出話」でしょうか。
- 夢は秘めておくからこそ良いのです。
当てていただく分には構いませんが。
- 悩み、ですか……。
はあ……、貴殿の処遇を相談しても?
- 父が死んだのはご存じのとおりですよ。
それ以外? さて、どうですかな。
- 貴殿と出会った頃に、またろくでもない者が
現れた……と思った話でもしましょうか。
- 近頃の陛下は以前より自由に振る舞われて
いる。素晴らしいことです。
- 戦い方は手段に過ぎません。敵が死ぬ……
その結果が得られれば良いのですよ。
- 要注意人物の一人、といったところかと。
監視を外すわけにもいきませんしな。
- 陛下の役に立つという意味では、貴殿は
非常に貴重な人材ですよ。非常に。
- 元気ですよ。まさか貴殿まで、顔色が悪い
などと言い出しはしないでしょうな。
- 正直に言えば少し疲れていますよ。
ですので、こうして気分転換を。
- この頭の中には……私しか知らない情報も
詰まっています。興味がおありで?
- もう少ししたら髪を切ろうかと。貴殿も
前髪をばっさり落としてはいかがですか。
- そう見つめられると、流石の私も
たじろいでしまいますな。
- 変な顔でもしてほしいのですか?
お断りですが。
- 私が暗器でも持っていると?
そんなところにはありませんよ。
- 好きでこのような色を纏っているわけでは
ないのです。返り血が目立ちませんのでな。
- なかなか興味深い時間でしたよ。
貴殿と二人きりというのもね。
- くくく……貴殿といると飽きませんな。
是非、また呼んでください。
- すぐに片づけるとしましょう。