- ほう、これは……お前が作ったのか。
なかなか悪くないな。
- ファーガスの料理は不味いと思うか?
俺は、そこまでとは思わんのだがな。
- ……食べねば力も出んからな。
- まあ、たまには遠乗りもいいだろう。
それで、行き先はどこだ。
- 近頃は雑事が立て込んでいてな。
お前との遠乗りは、良い息抜きになる。
- ふ、剣の稽古にはうってつけだな。
お前も、良い場所を見つけたものだ。
- 獣の気配がするな。
相当豊かな森のようだ。
- 相当登ったな。これだけ険峻な地形ならば
戦いの時にも利用できそうだ。
- 澄んだ水場だな。魚も多い……。
泳ぐのにはちょうどいいかもしれん。
- そんなものを俺に渡してどうする?
まあ、受け取っておくが……。
- 随分な大物を捕まえたようだが……甘いな。
俺がもっと大きなものを獲ってこよう。
- おい……俺とてそうしたいのは山々だが、
狩りをするなら領主の許可を得てからだ。
- お前にそんな趣味があったとはな。
連れて帰ろうなどとは思うなよ。
- 要らん。その程度、自分でできる。
お前の手を煩わせるような傷ではない。
- チッ……要らん! どう見ても、
歩けんほどの怪我ではないだろうが!
- 俺は魚より肉のほうがいい。
無論、魚が嫌いというわけではないが。
- それがいい。
失くした者も困っているだろう。
- お前がどこの誰だろうと、どうでもいい。
重要なのは腕が立つか否か、それだけだ。
- あのまま士官学校に在学していられれば、
剣の腕も磨けただろうが……仕方あるまい。
- ブレーダッドとフラルダリウスは代々……
ファーガスの建国以前からの腐れ縁でな。
- 腹が減っては戦などできんと言うが、
今年の収穫はいったいどうなることか……。
- ゴーティエ領は土地柄、酪農が盛んでな。
うちの領地にも、そうした強みが欲しい。
- 帝国、同盟、双方に最強の呼び声高い者は
いるが……王国最強は、誰なのだろうな。
- あの猪も……昔の嘘臭い態度に比べれば、
多少はマシになった。多少はな。
- 強い者は好きだ。特に剣の腕が立つ者だな。
強ければ強いほどいい。
- 騎士道というものは好かん……だが、騎士を
従える立場になって理解できた部分もある。
- さあな。理想はいろいろとあるが……
今はそんなことを考えるべき時ではない。
- お前に相談できることがあるとすれば……
剣術についてだな。後で少し相手をしろ。
- 母と叔父には頭が上がらん。俺が片づける
べき仕事まで、引き受けてくださっている。
- ……チッ。わざわざそれを話して何になる。
昔の話が聞きたいのなら、猪にでも聞け。
- 戦い方はどうあれ、皆それなりに腕が立つ。
この軍の居心地は悪くないな。
- 改めてそう尋ねられると答えにくいが……
やはり前線で剣を振るってこそではあるな。
- お前が率いている私兵団は、練度が高い。
今度調練の様子を見せてもらうとしよう。
- あの“馬鹿”に雇われていれば苦労も尽きん
だろうが、せいぜい力を尽くすことだな。
- 考えねばならんことは増えたが、
暇を持て余しているよりは余程いい。
- ダスカーの戦士隊と手合わせをしてな……。
独特な“技”を遣う。あれを取り入れれば……。
- 何だ……。
埃でもついているのか?
- 束ねている分には邪魔にならんが、
そろそろ切ったほうがよさそうだ。
- おい、人の顔をじろじろと何の用だ。
言いたいことがあるならはっきり言え。
- はあ、また人の顔を……もう何も言わん。
勝手に見ているといい。
- 正直な話、もう少し軽い装束を、
誂えてもらうべきだったかもしれん。
- これでも一応公爵位にある身だからな。
最低限、身なりは整えておかねばならん。
- フン……まあ、たまにはこうして
出掛けるのも悪くないかもしれんな。
- お前のおかげで良い息抜きができた。
また機会があれば呼べ。
- ああ、やるぞ。