link ローレンツ volume_up
やあ、アネットさん。ごきげんよう。 今日も君は溌剌として、可憐な花のようだ。
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………………。 ……ごきげんよう、ローレンツ!
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アネットさん? 急に不機嫌になって、 どうしたのかね?
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別に……不機嫌とかじゃないけど。 ただ、ちょっと昔の出来事を思い出したの。
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魔道学院にいた頃、貴族の子に 馬鹿にされたことがあったなあって……。
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なに? いったい誰がそんなことを?
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君ほどの才媛を捕まえて、馬鹿にするような 貴族がいたら、顔を見て笑ってやるとも。
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ふうん……じゃあ、ローレンツは 鏡を見て笑わなきゃいけないね……。
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……む、それはどういうことだね。 まさか君を馬鹿にしたのが、この僕だと?
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そうだよ。魔道学院で初対面のあたしを 馬鹿にしたこと、覚えてるんだからね。
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『おや、こんな子供がいるとは迷子かね。 親御さんはどこかわかるかな。』……
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『名門と名高い王都の魔道学院に、場違いの 町娘がいたら馬鹿にされてしまうよ』って!
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はあ……何が迷子よ。 これは流石に怒っていいよね、あたし?
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む、おぼろげながら思い出してきたぞ。 そうか、君があの時の町娘か!
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ああ、いや……君は町娘などではなく、 ドミニク男爵の姪御だったのだな。
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これは本当に申し訳ないことをした。 僕の無礼をどうか許してほしい。
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……ま、まあ、別にいいけど。 根に持ってるのも馬鹿馬鹿しいし……。
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学院の中で、再び君と話す機会でもあれば その時に誤解が解けたとは思うのだが……
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おそらくその日を最後に、君と学院で 顔を合わせる機会はなかったからな。
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言われてみれば、その日以来 学院でローレンツを見かけなかったかも。
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あの後、すぐに同盟領へと 帰還するよう父に言われたのだ。
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国王の崩御に伴って、王国内の情勢が 不安定になってしまったからね。
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ああそっか、なるほど……。 “ダスカーの悲劇”、だね……。
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万一のことがあっては、王国と同盟、 両者の関係にもひびが入りかねない。
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そういった事情から、やむを得ず短期間で 学院を辞めることになってしまったのさ。
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そうだったんだ……それが今、こうして また一緒にいるなんて、不思議な縁だね。
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ああ、魔道学院、士官学校と続いて、 三度目の縁となる。よろしく頼むよ。
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うん! ……あ、でもまたあたしのことを 子供とか言ったら、今度は許さないからね。
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そんなことは二度とないと約束するとも。 それにあの時の詫びと言ってはなんだが……
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何かあれば必ず君の力になると約束しよう。 必要とあらばいつでも呼んでくれまえ。
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この僕……ローレンツ=ヘルマン= グロスタールが、すぐに駆かけつけよう!
link ローレンツ volume_up
はーっはっはっはっは!
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あ、あははは……。