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  51. アドラステア帝国、各領地の情報をまとめた名鑑。 機密は書かれていないため閲覧および持ち出しの制限は 特になし。 1180年版。
  52. フレスベルグ領  皇帝直属領。帝国南部に突き出た半島の大部分を占め  る。広く南の海に面し、温暖で暮らしやすい気候が特  徴。帝都アンヴァルはフォドラ有数の港街でもある。  領内は商業と漁業が特に発展しているほか、帝都の東  は森林地帯になっており、狩猟や林業も盛ん。
  53. エーギル領  公爵領。帝国の東海岸、内海である“珠の海”に面す  る。領都ボラマスはアンヴァルと並ぶ良港であり、魔  道都市モルフィスを含む東方諸国との交易で賑わって  いる。領内は漁業に加えて農業や、交易品や東方の技  術を利用しての工芸も発達しており、豊かである。
  54. ベルグリーズ領  伯爵領。アミッド大河からメリセウス要塞まで南北に  広く、グロンダーズ平原の大半を領地とする。肥沃な  土地で多種多量の穀物が栽培され、「帝国の台所」と  まで言われる。また、馬の育成も盛んであるなど、帝  国の軍事を支える一大地帯となっている。
  55. ヴァーリ領  伯爵領。東部がグロンダーズ平原、西部がオグマ山脈  から成っており、特に鉄鉱山を多く抱えていることで  有名。かつてはフレスベルグ領との境に南方教会領が  あったが、今ではヴァーリ領に吸収されている。鉱業  では他領の追随を許さぬ発展を遂げている。
  56. フリュム領  子爵領。アミッド大河と“珠の海”に挟まれる好立地  にありながら、山がちな地形と湿地帯の多さが領地の  発展を阻害している。北部の山中では近年、多くの遺  跡が発見されており、その調査が進められている。
  57. フェニヤ領  子爵領。フォドラ最南端の領地。東に浮かぶ幾つかの  島の領有も主張しているが、支配の実態はない。温暖  で乾燥した気候を生かして多くの貴重な農産物が栽培  され、バクスや食用油の一大産地となっている。
  58. アドラステア帝国、各領地の情報をまとめた名鑑。 機密は書かれていないため閲覧および持ち出しの制限は 特になし。 1180年版。
  59. ヘヴリング領  伯爵領。オグマ山脈から西のミアハ海岸まで、東西に  長い形をしている。帝国の東西を繋ぐミアハ街道を擁  し、中央には要害たる領都モズグズがある。土地の肥  沃さでは他領に劣るものの、豊富な資源や交易での優  位性を活かした産業が盛んである。
  60. ゲルズ領  公爵領。帝国の最北端に位置し、帝国では比較的涼し  い気候が特徴。5年前のダグザ=ブリギット戦役で取  り潰されたヌーヴェル家の領地を吸収し、最西端の地  も有することになった。東部の広大な台地は森林に覆  われており、更なる発展が期待されている。
  61. 旧アランデル領  大公領であったが、皇帝直轄領に組み入れられた。  “黒き森”と呼ばれる深い森が特徴で水源も多い。   ギリング領  男爵領。狭く険しい土地だが、貴重な鉱物が出る。
  62. オックス領  男爵領。“フォドラの牙”と呼ばれる半島の北半分に  位置する。北部には平野と大河、南部には山地と良港  があり、領内の地形は多種多様だが、産業に突き抜け  たものはなく、平凡な発展に留まっている。
  63. エッサー領  子爵領。山で囲われた巨大な盆地が特徴。領都は帝都  を除けば帝国一の学術都市であり、魔道研究も盛ん。 ロッキン領  子爵領。西のヒュミル領と共に毛織物業が盛ん。
  64. ヒュミル領  子爵領。東のロッキン領と共に毛織物業が盛ん。 メニヤ領  子爵領。入り江の多いミアハ海岸の西側を有する。漁  業が盛んなほか、船舶の一大製造地でもある。
  65. マルティン領  男爵領。新興の領地であり、特色は少ない。 バルナバシュ領  男爵領。ガルグ=マクの西、険しい山地と森林がその  領地のほとんどであるが、木工業や果樹栽培で有名。
  66. ファーガス神聖王国、各領地の情報をまとめた名鑑。 機密は書かれていないため閲覧および持ち出しの制限は 特になし。 1180年版。
  67. ブレーダッド領  王領。領地の大半を寒冷な荒野が占めており、冬には  一面の雪原へと姿を変える。経済の主軸は林業と鉱業  であり、特に銀の採掘量はフォドラ随一を誇る。南西  部には800年の歴史を持つカムロス大聖堂がそびえ  立ち、古くから巡礼者たちの街として栄えてきた。
  68. フラルダリウス領  公爵領。東西で異なる二つの顔を併せ持つ。穏やかな  “白角海”に面する東部では漁業が、広大な針葉樹林  を有する西部では狩猟や林業が盛んに行われている。  南のダヌ川流域には穀倉地帯が広がっており、しばし  ば北部で最も肥沃な土地と称される。
  69. イヴァン領  公爵領。林檎の栽培とそれを原料とした酒造が盛ん。  特に蒸留酒は、歴代の王に愛されてきた逸品である。 旧クレイマン領  子爵領であったが、現在は王家直轄領となっている。
  70. カロン領  伯爵領。工芸、特に玻璃の製作が盛ん。大修道院の玻  璃窓の製作と修繕はカロン領の職人が手がけている。 エレボス領  侯爵領。大修道院への北の玄関口として栄える。
  71. デュバル領  伯爵領。各地にトータテス湖などセイロス教の聖地が  点在しており、敬虔な信者が数多く巡礼に訪れる。 プライデリ領  男爵領。岩塩坑を保有し、長く製塩業で栄えてきた。
  72. ベリナス領  子爵領。目立った特産物はない。“獅子王”ルーグが  盟友と共に決起した土地であると言われる。 ブレナス領  子爵領。領都は刃物の街として知られている。
  73. ファーガス神聖王国、各領地の情報をまとめた名鑑。 機密は書かれていないため閲覧および持ち出しの制限は 特になし。 1180年版。
  74. ゴーティエ領  辺境伯領。フォドラの最北に位置し、国境のルスカ山  脈に拠ってスレンの襲撃を防ぐ役割を担っている。領  土の大半が針葉樹の森に覆われており、一年を通して  気候は非常に寒冷。主な産業は林業と漁業だが、領都  の周囲は草原が広がり、畜産業が盛んである。
  75. ガラテア領  伯爵領。険峻な岩山や荒野が面積の大半を占める、荒  涼とした土地。農耕には向かず、規模の大きな街もご  くわずか。しかしフラルダリウス領との境界付近には  天馬の好む牧草が群生しており、良質な天馬の生産地  として知られている。
  76. ドミニク領  男爵領。小さいが、風光明媚な土地である。沿岸諸都  市は、アルビネとの交易により商業が発達している。 ギディオン領  子爵領。北の山間では、僅かだが金が産出される。
  77. ローベ領  伯爵領。西部はアリアンロッドを中心に製鉄や鍛冶で  栄えている。東部ではバクスの製造が盛んである。 エリデュア領  子爵領。西方教会の影響を受けた独特な文化を持つ。
  78. イーハ領  大公領。領地の大部分を占めるイーハ平原で行われる  小規模な狩猟と、傭兵の派遣が経済の中核を成す。 マテウス領  子爵領。古くから、漁業と造船を主産業としている。
  79. ゲライント領  伯爵領。南部を流れるタラヌス川の流域は肥沃な平原  であり、一面に牧歌的な田園地帯が広がっている。 イーニッド領  子爵領。良質な羊毛の産地として名高い。
  80. レスター諸侯同盟、各領地の情報をまとめた名鑑。 機密は書かれていないため閲覧および持ち出しの制限は 特になし。 1180年版。
  81. リーガン領  公爵領。肥沃な平原と草原が領地の大部分を占め、領  都のデアドラは“水上都市”の異名を取る華やかな港  街である。飛び抜けている分野はないものの、農業、  漁業、商業、製造業などあらゆる産業が活発であり、  足りないのは鉱物資源のみだという。 
  82. グロスタール領  伯爵領。同盟ではリーガン領に次ぐ大きさで、森林と  平原から成る。酪農をはじめとした農業が盛んである  と共に、林業や狩猟など豊かな自然を生かした産業が  発展している。また古くから芸術が盛んで、領都であ  るエドギアには多くの芸術家の工房が立ち並ぶ。
  83. ダフネル領  侯爵領。西側に山地、東側にビムル川の河口を含む平  野が広がる。王国との境界にあることと、デアドラと  の往来が容易なことから、商業を中心とした多種多様  な産業が発展する。領内には“煉獄の谷”アリルもあ  るが、人の住める土地ではない。
  84. フレゲトン領  子爵領。領地は小さいが、アミッド大河に架かる最大  の橋ミルディンを有し、交易で巨利を得ている。 シーワード領  子爵領。山がちの小さな領地で目立った特産はない。
  85. オールバニ領  子爵領。大修道院へ向かう巡礼者の中継地。 バーガンディ領  子爵領。大修道院への東の玄関口。アミッド大河の源  流に近く、カレドニス台地などの自然も豊か。
  86. レスター諸侯同盟、各領地の情報をまとめた名鑑。 機密は書かれていないため閲覧および持ち出しの制限は 特になし。 1180年版。
  87. ゴネリル領  公爵領。“フォドラの喉元”を含む起伏に富んだ地形  が特徴で、そこから産出される希少な輝石類は貴族の  間で人気が高い。また、隣国パルミラとの小競り合い  が頻発することから多くの騎士団や傭兵が集まり、彼  らを相手とする商売が非常に盛んである。
  88. コーデリア領  伯爵領。“フォドラの喉元”の南の付け根から西に広  がり、南側はほぼアミッド大河に面している。それを  水源として多様な作物が栽培されてきたが、近年では  グロスタール領の発展に押されている。また酒造も盛  んであり、コーデリア産のヴァダは高級品とされる。
  89. エドマンド領  辺境伯領。レスター最北部と、その西に浮かぶ島を領  地とする。多くの商人が属する交易の中心地であり、  莫大な利益を上げている一方で、島には多くの海賊、  北の対岸にはスレンの民がおり、近頃ではパルミラか  らも船が来るなど、決して安全な地とは言えない。
  90. アダルブレヒト領  男爵領。堅固な立地を生かして金融業が興っている。 ミュラー領  男爵領。狭い土地ながらほぼすべてを森林に覆われて  おり、良質な材木をレスター各地に輸出している。
  91. ネルソン領  子爵領。東方教会に接し、守護する役目を持つ。 クパーラ  “山の民”が暮らす領域。厳密には諸侯同盟には含ま  れていない。僅かながら周辺の領地と交流がある。
  92. 孤月の節 15の日 南方教会に属する“紅の騎士団”に怪しい動きあり、と の報告が入ったようだ。前節の末に皇位継承が成ったば かりだというのに……いや、だからこそか。しかし目的 がわからない。中央教会は関与しているのか? 紅の騎 士団も元はセイロス騎士団の一部隊。大司教が空位……
  93. 孤月の節 19の日 一連の動きに、先日爵位を継いだヴィトーリア=フォン =フリュムが関与している線が濃厚になった。彼女は現 ヴァーリ伯の娘。紋章持ちだが兄もそうであり、兄が嫡 子に、彼女は紋章持ちが生まれなかったフリュム家に嫁 ぎ、当主となっていたのだ。噂では彼女は教務卿に……
  94. 孤月の節 20の日 フリュム家の騎士団の一部と共に、“紅の騎士団”が蜂 起した。情報が漏れたため事を急いだのだろう。彼らは ヴァーリ伯の蟄居およびフリュム伯の教務卿就任を求め ているとのことだが、今の陛下は誇り高きお方。お膝元 に近い南方教会領での武力蜂起など絶対に許さない……
  95. 大樹の節 7の日 ヴァーリ伯が亡きヴィトーリアに教務卿の座を譲ること を条件に、兄を嫡子にするという密約を前陛下と結んで いた事実が判明した。伯は前陛下が病没されたのを良い ことに反故にしたようだ。だが、彼女も南方司教と密通 し、事を起こすに至った点では大いに責任がある。……
  96. 大樹の節 12の日 南方司教の追放と南方教会の取り潰しが決まった。全土 に衝撃が走ったことだろう。中央教会からどれほど抗議 が来るかはわからないが、陛下は教団と距離を取ること を望まれたのだ。この件の前では、ヴァーリ伯の引退や フリュム子爵の後継問題など霞んでしまう。かくいう……
  97. (誰かの日記のようだ。それなりの地位にあった者だ  と思われるが、大部分が欠けてしまっている)
  98. 第一幕 あらすじ  アドラステアの村娘リヨラは、オグマの山々の麓に広  がる深い森の中に迷い込んでしまう。不思議な霧の立  ち込める森を抜けた先で彼女が出会ったのは、巨大な  謎の存在。長い一角を持つ飛竜にも天馬にも似た生き  物だった。
  99. 第二幕 あらすじ  巨大なそれを恐れて逃げ出したリヨラだったが、魔法  のかかった霧を抜け出すことができず途方に暮れてし  まう。やがて霧の中から怪しい青年が現れると、彼女  に声をかける。「この先に私の家がある。そこで休む  といい」と。
  100. 第三幕 あらすじ  深い森の中での奇妙な共同生活が始まった。青年は腕  の立つ狩人のようであり、様々な道具を作る鍛冶師の  ようでもあった。やがてリヨラは彼に惹かれていく。  そんな彼女に待っていたのは、再びの巨大な生き物と  の出会いだった。
  101. 第四幕 あらすじ  この森の真実を知ってしまったリヨラは、深い葛藤に  悩まされることになる。青年はそんな彼女の様子…… (ミッテルフランク歌劇団によって上演されたことの  ある、演劇の筋書きのようだ)
  102. 帝国暦731年 大樹の節 ブリギットを無事に発った我らが船団は、気候にも恵ま れ、ついにダグザの大地をこの目に捉えた。やけに白い 砂浜の向こうに、不気味な密林が広がっている。情報で はこの辺りに集落があるとのことだったが、建物どころ か船や人影も見当たらない。北と南、どちらに舵を……
  103. ……突然、ぱらぱらと矢が飛んでくる。木々の間から敵 に狙われたらしい。不意を突かれた兵士たちが幾人か倒 れ、慌てて盾を上げて体を隠す。だが矢の数も勢いも、 思ったほどではない。ダグザ軍は帝国のミアハ地方、そ してブリギットでかなりの兵を失っている。防衛する戦 力が残っていないとは思わないが、思ったより容易……
  104. ……ヒュミル子爵の嫡男が率いる第三船団は、入り江の 中に誘い込まれた。敵の罠だった。なぜ気づけなかった のか。我々は岬の東端をぐるりと回頭したつもりだった が、霧の向こう、南側にも海岸があったのだ。行き場を 失った船の櫂同士がぶつかり、先頭の船は座礁したのだ ろう、すでに傾き始めている。我々の目の前で、仲……
  105. ……海が燃えている。いったいどんな魔道を使ったと言 うのだ。炎の蛇は徐々に我々の船へとその舌を伸ばして いる。外洋に広がった敵の船陣。あれを突破せねば誰一 人として生きては帰れない。いや、陛下にこの敗戦を報 告することを考えると、ここで死んだほうがと思わない でもないが、我々が誇りを捨てるなどあってはなら……
  106. ……ブリギットは叛旗を翻し、寄港しようとした船の半 分を沈められた。口惜しいが、今は逃げることしかでき ない。連中はダグザが負けたからこちらに尾を振ったに 過ぎなかった。こちらが負ければ再びダグザに尾を振る だけだ。元より言葉も通じぬ小島の住人、しかし王が欠 片も約定を守る気がなかったとは。いや、そもそも……
  107. ……ヌーヴェルの街が見えてきた。我らは生き延びたの だ。ギヌンギの港を出た時に比べれば、船の数は十分の 一以下に減ってしまっている。壊滅としか言いようがな い。そして戦果は皆無どころか、ブリギットとの関係を も失った。ダグザの民は恐ろしかった。空を舞い、海を 焼き、森を跳び回り、突然に牙をむく。奴らはいっ……
  108. 第九章 王の難題  クラウス王が熱病によって死の床に伏し、  王子クルーフォーはひどく頭を悩ませていた。  あまりにも急な病であったものだから、  彼の偉大なる父親は、兄弟の誰が  王位を継ぐのかを定めていなかったのだ。
  109.  兄のバンフィグは軍略と武芸の才に恵まれていたが、  本人は戦争と権力を好まぬ穏やかな人柄だった。  裏を返せば、それは君主には向かぬということだ。  弟のカイトは、父に似てとても聡明であり、  またいかなる時も非情に徹することができたが、  それゆえに騎士たちからは冷徹と恐れられていた。
  110.  クルーフォー自身は兄弟と違って紋章を持たず、  王家の者が持つべき膂力も持ち合わせなかった。  それゆえ彼は、自分が兄や弟と王位を争えるとは  露ほども考えていなかったのだが、  兄と弟が王位を巡って殺し合うさまを想像すると  それだけで身を裂かれるような思いがした。……
  111.  ……ある時、クラウスの妹のモリアンが、  兄が記したという書きつけを見つけてきた。  そこには「最も民に愛された者が玉座に就く」と、  一言だけ、確かにクラウスの筆跡で記されていた。  このたった一言の書きつけが、血で血を洗う、  悲劇の継承戦争のきっかけとなったのである。……
  112.  ……騎士たちの争いの後、ファーガス王国は  どの王子を奉じるべきかを巡って三つに割れた。  ファーガス地方の騎士たちはバンフィグを、  ミアハ地方の騎士たちはクルーフォーを、  そしてレスター地方の騎士たちはカイトを支持した。  彼らはそれぞれ、国土を三つに分割して継承し……
  113.  ……彼女は歯の根を鳴らし謀の失敗を悔やんだ。  目をかけていたカイトを王位に就けるつもりが、  企ては凡庸なるクルーフォーによって暴かれた。  多くの犠牲を払い、三人の兄弟は武器を捨て…… (どうやらファーガスの歴史に取材した物語のようだ)
  114. 892年 竪琴の節 スレン族による大規模な侵攻。彼らはルスカ山脈を越え てファーガス北部に攻め入り、そのままファーガス地方 へと南下。ファーガス王バンフィグは、ブレーダッド領 北部からフラルダリウス領北部にかけて、各地にコナン など数多くの城塞を築き、これを迎撃する。
  115. 895年 飛竜の節 ついにスレンを撤退せしめたファーガスは、一転攻勢に 出るも、スレンの抵抗と猛吹雪のために侵攻を断念。こ れを以て戦いに終止符が打たれる。この戦役で最も功を 上げたのは、王家の騎士にして十傑ゴーティエの裔であ る若き猛将、レティシア=ゾエ=ゴーティエであった。
  116. 896年 大樹の節 バンフィグは王領の北部をレティシアに割譲。彼女を辺 境伯に叙し、国境の守護を命じた。その後、レティシア はスレンとの境であるルスカ山脈に数多くの砦を築くと ともに、セイロス聖教会に“破裂の槍”の返還を求める など、北方の守りを堅固にすべく務め……
  117. …… 1169年 翠雨の節 夏を待ち、ファーガス王ランベールは共に北部を統べる ゴーティエ・フラルダリウス両家と連合して、スレンへ と兵を向ける。王国軍はルスカ山脈の砦の一つに拠って 陣を張り、スレン軍と戦端を開いた。
  118. 1169年 角弓の節 王国軍は順調に半島北西へと攻め上るが、族長オレグ率 いる軍と交戦中、突如戦場に巨大な獣が闖入。両軍共に 大打撃を被る。ランベールは重傷を負い、オレグは谷底 に姿を消した。オレグの子は、己の末子であるレフを人 質としてゴーティエ家に差し出し、和平を願い出た。
  119. 父上、母上 こうして手紙を書くのは4節ぶりですね。 寒い日が続きますが、恙なくお過ごしでしょうか。 こちらは師匠の無茶苦茶な修業に付き合わされたり、 危うく殿下に骨を折られかけたりと大変でしたが、 まあ何だかんだ、それなりに楽しくやっています。
  120. 今回手紙を書いたのは、角弓の節のダスカー行きに 私も同行することになった、とお伝えするためです。 以前お会いした際、父上は随分心配していたようですが 私も……な鍛え方はしていませんし、いざとなれば 「盾」にはなれるでしょう……なんて冗談を言ったら、 まったく笑えない、と殿下に小言を……ましたよ。
  121. ダスカーとの会談が終わって落ち着いた頃にでも、 一度……貰って、……の城に帰るつもりです。 フェリクスがどれだけ……上げたか確かめたいですし。 くれぐれも……を怠るな、と言っておいてください。 私はともかく、殿下に勝ちたいと思っているなら、 大岩を担いで山を走り回る……はしてもらわないと。
  122. 追伸。 先日、……から上等な短剣を賜ったので、 手紙と一緒にガラテア領に……させました。 もし彼女がフラル……ウス領に来ることがあれば、 いつも寂しい……をさせて済まないと伝えてください。          ……=ゴーヴァン=フラルダリウス
  123. (誰かが家族に宛てた手紙のようだ。  ところどころ文字が滲んでおり、読みにくい)
  124. ……会合の開催を呼びかけたクローディア夫人を始め、 ダフネル家に生まれた女性たちは伝統的に“烈女”と呼 ばれるに相応しい勇気と行動力、それに強情さを備えて いたそうですが、貴女もまた例外ではなかったのでしょ う。
  125. いまだ平穏とはほど遠いレスターにあって、あえて東方 騎士団を解散するなど、誰が予想できたでしょうか?  もちろん、諸侯の多くは貴女の考えを理解し、今回の決 断を賞賛していますが、同時に大きな懸念を抱いている ことも事実です。
  126. 貴女は剣を捨てると仰いましたが、盾までも捨てるのは 時期尚早と言わざるを得ません。そこで、我々は貴女に 一つの提案をさせていただくことに決しました。 すなわち今後、当家が東方騎士団に代わる東方教会の盾 となることを認めていただきたい。
  127. これを受け入れてくださるならば、貴女の考えに難色を 示している大司教の諮問をかわすこともできましょう。 夫人も、義理の妹である貴女を大変に心配しておられま す。そこも踏まえて、どうかお聞き届けください。 貴女に主の加護のあらんことを。              ハンス=フォン=ネルソン
  128. 終章  王を名乗る男が、腰に下げた革袋から小さな笛を取り  出して思い切り吹く。すると夜空に大きな黒い影が現  れ、男のそばに飛竜が舞い降りる。目を見張る娘に向  かって男は事もなげに言う。  乗るも自由、乗らぬも自由。好きなほうを選べ。
  129.  躊躇う様子もなく飛竜に歩み寄る娘に、王の家来を名  乗る男が声をかける。  あなたはどこかの領主の娘だという。それが本当なら  ば住み慣れた土地での暮らしに不満などないはず。そ  れを捨ててまでなにゆえ我が王の気まぐれに付き合う  のか?
  130.  娘は家来を名乗る男に笑顔を向けて答える。  彼は私にまだ見ぬ景色を見せてくれるでしょう。その  ために私はすべてを投げ出そうとしている。馬鹿げた  選択かもしれませんが、これは私の気まぐれです。そ  んな気まぐれに我が身を委ねる時、人は真の自由を手  にすることができるのではありませんか……
  131. (実在の誰かを題材にした物語のようだが、  前半が欠けており推定は難しそうだ)
  132. 青海の節 2の日 曇り 蛮勇を誇るパルミラの大軍を前に、我々は前線を後退せ ざるを得ず、喉元に急造した砦に籠もるしかなかった。 もしこの砦を抜かれれば、パルミラのレスター侵入を許 すことになる。なんとしても防がなくては。
  133. 青海の節 5の日 曇りのち雨、風強し 攻勢を緩めぬパルミラ勢に対し、得意の弓を以て応戦す るも、折からの風雨が邪魔をして、思うように狙いが定 まらない。明日にも帝国軍の弓箭隊が増援として到着す ると聞いているが、この天候が続くなら、弓兵では戦力 の足しにはならないだろう。どうしたものか……。
  134. 青海の節 6の日 雨、風強し 風雨が続いている。合流した帝国の弓箭隊が放つ矢は、 案の定、虚しく地に刺さるばかりだった。 帝国軍は軍師風の男も連れていたが、役に立つとは思え ない。彼は何かの器具を使ったり紙に数字を書いたりす るのに忙しく、作戦の一つも出してこないのだから。
  135. 青海の節 7の日 曇り、風強し 突如、軍師風の男は帝国と同盟の弓兵を集めてそれぞれ に細かな数字を示し、狙うべき方向と射角を修正するよ う告げた。半信半疑ながら指示どおりに修正して弓を射 ると、矢は面白いように敵に命中し始めた。 「計算どおりだ」と語る彼は、何と数学者だそうだ!
  136. 青海の節 10の日 快晴、無風 敵の攻勢が弱まるのと同時に風も止み、ようやく反撃の 好機を得る。数学者殿がいなければ、ここまで耐えられ なかったはずだ。勝利したのち、もし再会が叶ったなら ば、必ず伝えよう。数学者殿こそ、この戦いの一番の功 労者であったと――
  137. ……という事実があり、真偽は定かではないのだが、本 書においては考慮しないこととさせていただく。 さて、前段が長くなってしまったが、「麗しき聖人」と 聞いて多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、やはり聖 マクイルその人であろう。宝石にも喩えられる彼の美貌 を歌う詩歌は数知れず、中でも乙女の頬を撫でる風……
  138. ……大きな翼が 風を呼びました   空から虹が 降り注ぎました   おお、美しきあなたよ   その炎でわたしの心を焼き尽くして これは聖マクイルについて歌った帝国初期の女性詩……
  139. ……一人忘れてはならないのが、聖キッホルである。彼 は数多の浮き名を流したという説と、一途な愛を貫いた という説がある。聖人たちの多くが婚姻を結んだ記録が ない中で、はっきりと結婚したと明言され、その娘まで もが聖人に列されている事実から鑑みれば、後者の説が 有力であろうと私は考える。何よりロディ海岸には……
  140. ……以前の存在として、およそ空想の域を出ない話では あるが、聖ルカという子だくさんの聖人がいる。彼は恋 多き男であり、多くの愛を育み、多くの命を生み出した とされるのだ。ただしその姿も多岐に富んでおり、果た して本当に「麗しき聖人」だったのか。何らかの力によ り姿を変えていただけではないのかと考えると、い……
  141. (聖人についての本のようだ。  人物画が多く載せられている。  かなり読み込まれた形跡がある)
  142. 第13章 獣の紋章  またの名を“モーリスの紋章”という。千年以上前、  ネメシスに従った11人の氏長の1人モーリスが持っ  ていたとされる。モーリスは勇敢な戦士であった。若  くして剣一本で巨狼を討ち、氏族の英雄と褒め称えら  れた。すぐに父を倒して長の座を継ぐと……
  143.  ……モーリスがいつ紋章を授かったか定かではない。  一説にはネメシスとの一騎打ちに敗れ、彼の下で戦う  ことを誓った時といわれている。あるいは邪なる存在  を目の前にした時、ネメシスから預かった英雄の遺産  “ブルトガング”がその思いに応えて輝いたともいわ  れている。いずれにせよ彼が剣と共に……
  144.  ……帝国軍にとってモーリスと“ブルトガング”はま  さに“災厄の獣”であった。彼の剣は殺すことに特化  していた。特に馬上や空中の敵は良い「的」だった。  戦場を駆け巡るモーリスは多くの将兵を殺し、ついに  は聖戦士の一人を殺すに至った。返り血を浴びた彼の  姿には、敵のみならず味方も恐れを抱いたという……
  145.  ……グロンダーズの会戦以降、戦線が北上するにつれ  てモーリスは正気を失っていった。その契機が何だっ  たのかも定かではない。彼はいつの日か敵陣を突破す  るとそのままどこかへ姿を消した。戦場の北には、霧  の立ち込める広大な森があった。捜索の兵が一人とし  て戻らなかったミルシャの魔の森が……
  146.  ……獣の紋章は散り散りに野に下ったモーリスの息子  たちに受け継がれていた。彼らは他の氏族の家や、帝  国を厭う領主の陰に隠れて密かに生き続けた。やがて  忌避すべき紋章が表沙汰になると、その持ち主はなぜ  か急な病に倒れ、あるいは事故に遭ってすぐ命を落と  した。そうして誰もが獣の紋章を隠そうと……
  147. フォドラ怪奇談 “血の果実”  かつて戦場となり多くの血が流れた地には、血のよう  に赤い果実が生るという。小さな粒が幾重にも重なっ  たそれは甘く、かじりついた者の渇きをも満たすが、  気づけばそれなしには生きられなくなり、やがて……  グロンダーズ地方の古き伝承である。
  148. フォドラ怪奇談 “彷徨えし獣”  ミルシャの魔の森に霧が立ち込める夜、この世のもの  とは思えぬ叫び声が響きわたる。そんな夜は絶対に森  に入ってはいけない。生きて帰ってきた者がいないか  らだ。血に飢えた獣が霧と共にやってくる……。  レスター地方の古き伝承である。
  149. フォドラ怪奇談 “地の底の亡霊”  地の底から響く恐ろしい声。それは女神の御許に辿り  着けず、薄暗い死の国を彷徨い続ける死者の怨嗟の声  であるという。彼らは陽の光の下を行く生者を妬んで  おり、時には地底へと引きずり込んでしまう……。  ファーガス地方の伝承である。
  150. フォドラ怪奇談 “ダナの砂嵐”  北には侵入者を拒む砂漠があるという。砂漠のふちを  行商人が通るだけでは現れないが、何かを求めて砂漠  の中へと足を踏み入れると辺りの景色は一変。巨大な  砂嵐が巻き起こり、入った者を切り裂くという。  地域不詳の古き伝承である。
  151. フォドラ怪奇談 “霧の巨人”  夜明けちょうどに山に入ると、霧に包まれてしまうこ  とがある。そんな時はうずくまって霧が晴れるのを待  つのだ。決して逃げ出してはいけない。あなたを踏み  潰せるほどの巨大な霧の巨人が追ってくるから。  ファーガス地方の古き伝承である。
  152. フォドラ怪奇談 “死神の鎌”  赤狼の節、満月の晩には窓を塞いで寝なければいけな  い。なぜなら大きな鎌を持った死神が命を刈りに来る  から。外を出歩くなどもってのほかだろう。血をすべ  て吸い取られた死体となって発見される……。  ミアハ地方の古き伝承である。
  153. フォドラ怪奇談 “赤い悪魔”  穏やかに見える“白角海”の底には赤い悪魔が眠って  いる。悪魔は船から落ちる者がいると、すぐに手を伸  ばして沈めてしまう。それを防ぐには油を…… (フォドラの各地に伝わる怪奇を集めた書のようだ)
  154. 第一章 啓示録  女神は天であり、女神は大地である。  今にあり、昔にあり、やがて来たる時にある。  かの目はすべてを見通し、かの耳はすべてを  聞き、かの手はすべてを受け止める。
  155.  女神の証を受け取りし者、  言葉を預かりし者、すなわちセイロス。  天の、大地の御使いとして、  セイロスは恵みと平安をあなた方に届ける。
  156.  女神よりの全能を以て。  セイロスは、女神の剣として邪を除け、  セイロスは、女神の子として王を封ず。  セイロスは、女神の翼として人を導き、  セイロスは、女神の声として愛を説く。
  157.  その剣に、あなたの剣を委ね、  その王を、あなたの上に戴き、  その翼で、あなたの生を助け、  その声が、あなたの心を赦す。  あなた方に女神の加護あらんと。
  158. 第二章 創世記  曇りなき大海に、まずフォドラがあった。  遙かなる旅を終えし女神は、  フォドラを見出し、降り立たれた。  女神は生きとし生けるものを創りたもうた。
  159.  女神は草木を創り、鳥獣を創り、  そして最後に、人を創りたもうた。  人は力を欲し、女神はそれに応えられた。  天の恵み、大地の恵み、そして魔の恵み。  人は魔道を得、力を増した。  力が邪を呼び寄せるとも知らずに。
  160.  女神の加護のもと、人は生きた。  より多くを成し、より富み栄え、  いつしかフォドラで最も力ある存在となった。  しかし、北より、邪なる存在が訪れる。  大地を蝕み、天を穢す、邪。  フォドラに混迷が、訪れる。
  161.  邪なる侵略に対するため、  女神は力を創りたもうた。  超常の武具と、そを使うための血。  人はその力を手にし、邪と戦った。  邪を討ち破り、北へと追いやった人々。  彼らは英雄と呼ばれた。
  162.  英雄らは数百年を生きたが、やがて  その命も尽き、後には血と力のみが残る。  英雄の血に宿りし力を“紋章”と呼び、  英雄の振るいし力を“英雄の遺産”と呼ぶ。  かくして、新しき時の縁は、紡がれていった。
  163.  英雄の子孫たちは、血を求め、力を求めた。  やがて彼らはすべてを巡って争い始める。  紋章を、遺産を、土地を、富を。  邪なる存在を打ち果たすための女神の力は、  人の欲によって争いの道具となった。  女神はそれを嘆き、天に姿を隠す……
  164. 第五章 主の五戒  一、あなたは主の存在と、主の力を    疑ってはなりません。  一、あなたの神、主の名をみだりに    唱えてはなりません。
  165.  一、あなたは父と母と、主に連なる者を    敬わねばなりません。  一、あなたは主より与えられた力を    正しく使わねばなりません。  一、あなたはみだりに人を殺め、傷つけ、    嘘をつき、盗みを働いてはいけません。
  166.  主はすべての美しきものを是とします。  主は、愛、絆、喜び、平和、信心、親切、  自律、謙虚さ、我慢強さ、これらのものを  否定することはありません。  主の導きに従えば、自ずと主の五戒は  守られるのです。
  167.  長きにわたり、世は乱れ民は苦しんでいた。  “解放王”を僭称する邪なる者ネメシスは、  争乱を喜び、流血を讃うる。  フォドラの氏族たちは、糾合されることなく  ただ奪い合い、殺し合っていた。
  168. 帝国暦 前41年 聖セイロスの出現  聖者セイロス、アンヴァルの地に現る。  セイロスは多くの奇跡をもたらし、  人心をよく集め、集いた人々は  セイロス聖教会を組織す。
  169. 帝国暦 元年 アドラステア帝国の建国  国の名は神託を以て定む。  アンヴァルを都としてフォドラの南を治め、  聖者セイロスもこれに力を与う。
  170. 帝国暦 32年 英雄戦争の起こり  初代アドラステア皇帝、  ヴィルヘルム=パウル=フレスベルグ。  フォドラの統一のため兵馬を挙げ、  力をほしいままにする各地の氏族を討滅す。
  171. 帝国暦 46年 グロンダーズの会戦  ネメシスに味方する氏族の連合軍と、  アドラステア帝国軍が平原で激突す。  帝国軍が大勝を収むる。
  172. 帝国暦 91年 タルティーンの会戦  ネメシスに味方する氏族の連合軍と、  帝国軍が再び激突す。邪なる者ネメシスは  ここに死して、帝国は勝勢を定むる。
  173. 帝国暦 98年 英雄戦争の終結  皇帝ヴィルヘルム1世の後を継いだ  リュカイオン1世が急病にて崩御す。  フォドラの大半を支配するに至っていた  帝国は、これを機に戦いに幕を下ろす。
  174. 帝国暦 721年 第一次ミアハ戦役  海を越えてダグザ軍が襲来す。  帝国軍はこれを撃退するものの、  ミアハ地方は少なからず被害を受ける。
  175. 帝国暦 728年 ブリギット侵攻  帝国軍、ダグザに協調していた  ブリギット諸島に侵攻す。  勝利し、ブリギットの民を従属させる。
  176. 帝国暦 731年 ダグザ侵攻  帝国軍、ブリギットを足掛かりに  ダグザに大規模な侵攻をかけるも、  武運つたなく敗退す。
  177. 帝国暦 747年 ファーガスの乱  かつて帝国と争った氏族の子孫、ルーグが  帝国からの独立を求めて挙兵す。  ファーガス地方を巻き込んだ争乱となる。  この一連の争乱を“鷲獅子戦争”とも呼ぶ。
  178. 帝国暦 751年 タルティーンの戦い  ルーグら独立軍が帝国軍に大勝。  セイロス聖教会が二者を仲裁し、ファーガス  地方はファーガス神聖王国として独立す。
  179. 帝国暦 801年 レスター大乱  帝国のレスター地方で内乱が勃発す。  帝国軍は鎮圧に失敗。神聖王国がこれに  乗じてレスター地方を制圧し、領土とす。
  180. 帝国暦 861年 ファーガス神聖王国分裂  国王クラウス1世の崩御に伴い、  3人の王子がそれぞれ大公となり、  王国を三分割して統治す。
  181. 帝国暦 881年 三日月戦争  王国のレスター地方を治むる大公が病没す。  レスター地方の諸侯は、次の大公を立てず、  諸侯の共同体となることを画策す。
  182. 帝国暦 901年 レスター諸侯同盟領の成立  諸侯同盟に反目する諸侯を討伐し、  ファーガス地方からの干渉も排除した  リーガン公を中心に、同盟領が成立す。
  183. 帝国暦 961年 パルミラ襲来  東の大国パルミラ、フォドラの喉元を  越えて同盟領に侵攻す。  帝国軍らも派兵され、からくも撃退す。
  184. 帝国暦 1101年 フォドラの首飾り築造  パルミラの襲来を防ぐべく、  同盟・王国・帝国が一丸となり、  フォドラの喉元に要塞を築造す。
  185.  アドラステア帝国の主要な貴族の名鑑。  教団の資料のため、持ち出し及び  生徒の閲覧を禁ずる。  1179年版。
  186. フレスベルグ家  大帝ヴィルヘルムを祖とする帝国の大貴族。  1100年以上にわたって帝国を治める。  その系譜は聖セイロスの血脈をも有し、  代々の皇帝はその身にセイロスの紋章を  宿していたという。
  187.  帝都アンヴァルとその周辺一帯を領地とし、  帝国の内外で絶大な権力を誇ったが、  1171年の七貴族の変により、貴族らに  権能を剥奪される。また近年、立て続けに  一族の者に不幸が起こっており、その支配  体制には暗雲が垂れ込めている。
  188. エーギル家  帝国でフレスベルグ家に次ぐ力を持つ公爵。  当主がいつしか宰相の地位を歴任するように  なり、今では実質的に世襲宰相の地位を  有する。七貴族の変を主導し、帝国の統治に  おける実権を握っている。
  189. ベストラ家  フレスベルグ家の影であり、領地を持たない  特殊な侯爵。帝国の暗部を牛耳っているほか、  皇帝の補助、儀式典礼、後宮、近衛などを  含めた皇帝周辺の政務を担っていた。  七貴族の変ではエーギル家に味方する。
  190. ヘヴリング家  帝国の内務卿を世襲するようになった伯爵。  主に政務、財務、法務などを担当し、その  領分を巡って頻繁に軍務卿と対立している。  領地の大半がオグマ山脈に属し、鉱業が  盛んである。
  191. ベルグリーズ家  帝国の軍務卿を世襲するようになった伯爵。  皇帝直属軍以外の帝国すべての軍事を  管轄とし、戦時には当主が大将軍として  全軍を率いる。フォドラいちの穀倉地帯、  グロンダーズ平原の大半を領地とする。
  192. ヴァーリ家  帝国の教務卿を世襲するようになった伯爵。  教務卿は主にセイロス聖教会との渉外が  領分だったが、近年は教団と帝国が疎遠に  なっているため、法務などにも干渉しては、  内務卿との政争を起こしている。
  193.  アドラステア帝国の主要な貴族の名鑑。  教団の資料のため、持ち出し及び  生徒の閲覧を禁ずる。  1179年版。
  194. ゲルズ家  帝国の外務卿を世襲するようになった公爵。  外交や他国との交渉、中央と地方の紐帯を  任とし、ダグザ・ブリギット戦役においても  停戦協定の締結に尽力した。七貴族の変に  加担してはいるが、他家とは一線を画す。
  195. アランデル家  元は帝国の小貴族だったが、現当主である  フォルクハルトの妹が皇帝イオニアス9世の  室となってから急伸し、アランデル大公の  位を贈られる。エーギル家に協力し、七貴  族の変を起こした主犯格の一人と目される。
  196. フリュム家  帝国の子爵。皇帝イオニアス9世の中央集権  政策に反発し、帝国からの独立と同盟への  参画を目論むも、帝国軍の介入にあって  失敗する。後始末として本家は断絶、現在  では養子を当主として迎え入れている。
  197. ヌーヴェル家  帝国の子爵。帝国西端に領地を構え、家名に  由来する港湾都市ヌーヴェルを中心にダグザ、  アルビネ、ブリギットなどとの交易で栄える。  だが、1175年に攻め寄せたダグザ・ブリ  ギット連合軍の上陸を許し、没落した。
  198. オックス家  帝国の男爵。帝国西部“フォドラの牙”と  呼ばれる半島の北半分を領地とする。  ダグザ・ブリギット戦役で当主を失った。
  199. バルテルス家  帝国の男爵。野心高く、多くの紋章の血統を  その家系に加えている。1176年、当主を  含む一族の多くが不審死。嫡男エミールの  犯行とされたが、エミールは行方不明になり、  現在は遠縁の者が当主となっている。
  200.  ファーガス神聖王国の主要な貴族の名鑑。  教団の資料のため、持ち出し及び  生徒の閲覧を禁ずる。  1179年版。
  201. ブレーダッド家  十傑の一人、ブレーダッドを祖とする一門。  751年、鷲獅子戦争で勝利を収めた  “獅子王”ルーグが、教団より戴冠を受け  アドラステア帝国からの独立を果たして以来  400年以上にわたり王国を統治してきた。
  202.  王都フェルディアとその周辺を領土とし、  フォドラ北部の諸侯を数多く従属下に置く。  国王ランベールが1176年に没した後は  その実兄にあたるイーハ大公リュファスが  若年の王子に代わり領内の政を担っているが  各地で争乱が続き、体制は揺らぎつつある。
  203. フラルダリウス家  十傑の一人、フラルダリウスを祖とする一門。  王国諸侯の中でも歴史の長い家の一つであり、  “獅子王”ルーグの盟友であるキーフォンも  英雄フラルダリウスに連なる者であるという。  公爵の位に叙されている。
  204. ゴーティエ家  十傑の一人、ゴーティエを祖とする一門。  王国の最北に領土を持ち、二百余年にわたり  “北方の民”スレン族による侵攻から国土を  守護してきた。辺境伯の位に叙されている。
  205. カロン家  十傑の一人、カロンを祖とする一門。  鷲獅子戦争の時代に独立軍と聖教会の折衝を  担ったことから、今も国内での典礼の場には  カロン家の当主が立ち合う伝統が残っている。  伯爵の位に叙されている。
  206. ガラテア家  レスター諸侯同盟の一角を成すダフネル家が  家督争乱により二分された際、ファーガスに  帰順した一派が家を興し、後に伯爵の位に  叙された。領地の大部分が寒冷な荒野であり、  1170年代初頭には大飢饉が起こっている。
  207. ローベ家  元は帝国北西部に領地を持つ貴族であったが  領内に城塞都市アリアンロッドが築かれた際、  帝国に反旗を翻し、アリアンロッドを含む  所領ごと、ファーガス神聖王国に帰順した。  その功を以て、王家より伯爵位に叙される。
  208. クレイマン家  元来、王国西部の一城主に過ぎなかったが、  1176年に行われたダスカー半島の征伐で  大功を立て、王家より子爵の位に叙された。  封土としてダスカー半島を与えられている。
  209.  レスター諸侯同盟領の主要な貴族の名鑑。  教団の資料のため、持ち出し及び  生徒の閲覧を禁ずる。  1179年版。
  210. リーガン家  十傑の血統で、レスター諸侯同盟の盟主格。  881年の三日月戦争を経て、王国からの  独立と諸侯による共和制の樹立を主導した。  以来、円卓会議の主催者の役を担っている。
  211.  公爵の位は同盟成立以前に王国より叙された  爵位を根拠とする。なお、現リーガン公の  嫡男ゴドフロアは公務中の事故により他界。  ほかに女子もいたが現在は消息不明である。
  212. ゴネリル家  十傑の血統。レスター地方東部に領地を有し、  パルミラ軍との攻防において中心的役割を  担ってきた武門の家柄。殊に次期当主である  ホルスト卿は同盟随一の勇将として知られる。
  213. コーデリア家  レスター地方南東部に領地を有する伯爵家。  1167年、帝国貴族フリュム家の内乱に  関与したことを契機に、帝国より内政干渉を  受け続け、急激に国力が低下した。
  214. グロスタール家  十傑の血統。レスター地方南部の伯爵家。  現当主は渉外に長けた野心家で、円卓会議で  議決権を有する五大諸侯の中では、盟主格の  リーガン家に次ぐ発言力を有している。
  215. エドマンド家  レスター地方北部に領地を有する辺境伯家。  良港を活かした交易重視の政策で国力を貯え、    五大諸侯に名を連ねるまでに成長した。  現当主は能弁家としても知られている。
  216. ダフネル家  十傑の血統。かつては同盟の五大諸侯に名を  連ねていたが、家中の分裂により勢いを失い、  ここ何代かは紋章持ちの当主も現れていない。  名家としての存在感は現在も保ち続けている。
  217. 主にフォドラの外の世界について書かれた記録。 著者は不明だが、実際に各地を旅した者が 書いているようだ。
  218. パルミラ  フォドラの東にある大国。険峻な山岳地帯  “フォドラの喉元”を領界として、レスター  諸侯同盟領と接する。騎馬民族の血を引く  者たちであり、戦いを好む。広大な国土は  肥沃な大草原、砂漠、大連峰など地形に富む。
  219. アルビネ  フォドラの北西にある大地。寒冷な気候で、  貴重な動植物が数多く生息しているものの、  厳寒と穀物の育ちにくい凍土のため、暮らす  人々の数は少ない。
  220. モルフィス  フォドラの南東にある魔道の都の名であり、  その都市を中央に置く広大な砂漠の名でも  ある。“幻の都”とも称された時代も  あったが、細々と繋がる行商の道を通して、  偉大にして摩訶不思議な魔道の噂が伝わる。
  221. ダグザ  フォドラの南西にある大地。遙か遠方であり、  その地は焦熱の密林であるとか、冷涼な  大高原であるとか、噂を挙げれば枚挙に  暇がない。そしてそれらは半ば事実であり、  南北に長い大地に様々な地形を有している。
  222. 主にフォドラの外の世界について書かれた記録。 著者は不明だが、実際に各地を旅した者が 書いているようだ。
  223. ブリギット  フォドラとダグザの間に位置する島々。  穏やかな海と豊かな緑に覆われた大自然の  結晶とも呼ぶべき地であり、フォドラと  ダグザの間で支配権が争われてきた。
  224. スレン  フォドラの北にある巨大な半島の名だったが、  今は北半分をスレン地方と呼び、南半分は  ファーガス神聖王国の領土となっている。  荒涼とした大地には好戦的な民族が住まう。  岩砂漠が広がっている一帯もある。
  225. ダスカー  フォドラの北、スレンの西側にある半島。  かつて暮らしていたダスカーの民は滅び、  ファーガス神聖王国の領土となっている。  取り立てて何もない土地だが、珍重な鉱物が  見つかるという噂もある。
  226. オグマ山脈  フォドラの中央からやや南に広がる大山脈。  西は帝国と王国の境界となり、ガルグ=マクを  囲いながら帝国を縦断するように伸びる。  他では見られない動植物も多く、また豊富な  鉱脈を有する。
  227. ……の侵入経路があるようだ。 引き続き調査を進めることが望まれる。 また、数年ほど前から士官学校に いられなくなったものを収容するための 学級が存在していることが判明した。
  228. その名も“灰狼の学級”。 所属する面々の大半は、士官学校の 元生徒らしいが、教師らしき者もおらず 学級とは名ばかりの吹き溜まりと思われる。
  229. 住人から聞き出したところ、よく名前が上がった のは主にユーリス、コンスタンツェ、ハピ、 バルタザールの4人である。教団がこの学…… (古びた報告書のようだ。  読める部分はあまり残っていない)
  230. ……近頃、鼠通りに住み処を移してね。 “灰狼の学級”の連中と知り合ったんだ。 何でも士官学校の元生徒で、 表通りを歩けなくなったような奴らが 集まっている学級なんだと。
  231. バルタザール、コンスタンツェ、 ユーリス、ハピ…… みんな癖はあるが、悪い奴じゃなさそうだ。 特にバルタザールの金…… (薄汚れた紙に汚い字で書かれた手紙だ)
  232. 久しぶりですね。 こっちは本日も異常あり、ですよ。 前に“灰狼の学級”の話はしたでしょう? 地上の士官学校からあぶれた若者たちの 集まりです。
  233. 特に危ない奴らが3人いるって書きましたけど、 とうとう4人に増えましてね。 ユーリス、ハピ、コンスタンツェ、 そして、バルタザール…… こいつらは本当に困ったもんです。 面白い相手ではあるんですがね。
  234. この前なんか、地下から大修道院へ抜ける 大きな穴を見つけ出しちまいまして。 慌てて俺たちで岩を持ち寄って…… (癖のある字でびっしりと書かれた手紙だ)
  235. ……来節、フェルディアで商談の予定があったが あれは取りやめだ。今はそれどころじゃない。 王様がダスカーの族長と会談をしに行くって話を 覚えてるな? その道中、王様の一団はダスカー の連中に襲われて、みんな死んじまったそうだ。 生き残ったのは、小さい王子様一人だけと来た。
  236. すぐに誰かが軍をまとめて、ダスカーに掃討の兵 を送ったそうだが、王様がいなくなった王都は、 上を下への大騒ぎってわけだ。 ダスカーの民も馬鹿な真似をした。一部の過激な 奴らのせいで、とばっちりを食うのだからな。 この所業を思えば、当然の報いかもしれないが。
  237. ただ、ダスカーとの商売はもう駄目だろう。 ゲネウラの近くは良質な金が採れる上、 鍛冶屋の腕も良いだけにもったいないものだ。 とにかく、私が帰るまで勝手な行動は慎んで…… (商人が王都からどこかに送った手紙のようだ)
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