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- アドラステア帝国、各領地の情報をまとめた名鑑。
機密は書かれていないため閲覧および持ち出しの制限は
特になし。
1180年版。
- フレスベルグ領
皇帝直属領。帝国南部に突き出た半島の大部分を占め
る。広く南の海に面し、温暖で暮らしやすい気候が特
徴。帝都アンヴァルはフォドラ有数の港街でもある。
領内は商業と漁業が特に発展しているほか、帝都の東
は森林地帯になっており、狩猟や林業も盛ん。
- エーギル領
公爵領。帝国の東海岸、内海である“珠の海”に面す
る。領都ボラマスはアンヴァルと並ぶ良港であり、魔
道都市モルフィスを含む東方諸国との交易で賑わって
いる。領内は漁業に加えて農業や、交易品や東方の技
術を利用しての工芸も発達しており、豊かである。
- ベルグリーズ領
伯爵領。アミッド大河からメリセウス要塞まで南北に
広く、グロンダーズ平原の大半を領地とする。肥沃な
土地で多種多量の穀物が栽培され、「帝国の台所」と
まで言われる。また、馬の育成も盛んであるなど、帝
国の軍事を支える一大地帯となっている。
- ヴァーリ領
伯爵領。東部がグロンダーズ平原、西部がオグマ山脈
から成っており、特に鉄鉱山を多く抱えていることで
有名。かつてはフレスベルグ領との境に南方教会領が
あったが、今ではヴァーリ領に吸収されている。鉱業
では他領の追随を許さぬ発展を遂げている。
- フリュム領
子爵領。アミッド大河と“珠の海”に挟まれる好立地
にありながら、山がちな地形と湿地帯の多さが領地の
発展を阻害している。北部の山中では近年、多くの遺
跡が発見されており、その調査が進められている。
- フェニヤ領
子爵領。フォドラ最南端の領地。東に浮かぶ幾つかの
島の領有も主張しているが、支配の実態はない。温暖
で乾燥した気候を生かして多くの貴重な農産物が栽培
され、バクスや食用油の一大産地となっている。
- アドラステア帝国、各領地の情報をまとめた名鑑。
機密は書かれていないため閲覧および持ち出しの制限は
特になし。
1180年版。
- ヘヴリング領
伯爵領。オグマ山脈から西のミアハ海岸まで、東西に
長い形をしている。帝国の東西を繋ぐミアハ街道を擁
し、中央には要害たる領都モズグズがある。土地の肥
沃さでは他領に劣るものの、豊富な資源や交易での優
位性を活かした産業が盛んである。
- ゲルズ領
公爵領。帝国の最北端に位置し、帝国では比較的涼し
い気候が特徴。5年前のダグザ=ブリギット戦役で取
り潰されたヌーヴェル家の領地を吸収し、最西端の地
も有することになった。東部の広大な台地は森林に覆
われており、更なる発展が期待されている。
- 旧アランデル領
大公領であったが、皇帝直轄領に組み入れられた。
“黒き森”と呼ばれる深い森が特徴で水源も多い。
ギリング領
男爵領。狭く険しい土地だが、貴重な鉱物が出る。
- オックス領
男爵領。“フォドラの牙”と呼ばれる半島の北半分に
位置する。北部には平野と大河、南部には山地と良港
があり、領内の地形は多種多様だが、産業に突き抜け
たものはなく、平凡な発展に留まっている。
- エッサー領
子爵領。山で囲われた巨大な盆地が特徴。領都は帝都
を除けば帝国一の学術都市であり、魔道研究も盛ん。
ロッキン領
子爵領。西のヒュミル領と共に毛織物業が盛ん。
- ヒュミル領
子爵領。東のロッキン領と共に毛織物業が盛ん。
メニヤ領
子爵領。入り江の多いミアハ海岸の西側を有する。漁
業が盛んなほか、船舶の一大製造地でもある。
- マルティン領
男爵領。新興の領地であり、特色は少ない。
バルナバシュ領
男爵領。ガルグ=マクの西、険しい山地と森林がその
領地のほとんどであるが、木工業や果樹栽培で有名。
- ファーガス神聖王国、各領地の情報をまとめた名鑑。
機密は書かれていないため閲覧および持ち出しの制限は
特になし。
1180年版。
- ブレーダッド領
王領。領地の大半を寒冷な荒野が占めており、冬には
一面の雪原へと姿を変える。経済の主軸は林業と鉱業
であり、特に銀の採掘量はフォドラ随一を誇る。南西
部には800年の歴史を持つカムロス大聖堂がそびえ
立ち、古くから巡礼者たちの街として栄えてきた。
- フラルダリウス領
公爵領。東西で異なる二つの顔を併せ持つ。穏やかな
“白角海”に面する東部では漁業が、広大な針葉樹林
を有する西部では狩猟や林業が盛んに行われている。
南のダヌ川流域には穀倉地帯が広がっており、しばし
ば北部で最も肥沃な土地と称される。
- イヴァン領
公爵領。林檎の栽培とそれを原料とした酒造が盛ん。
特に蒸留酒は、歴代の王に愛されてきた逸品である。
旧クレイマン領
子爵領であったが、現在は王家直轄領となっている。
- カロン領
伯爵領。工芸、特に玻璃の製作が盛ん。大修道院の玻
璃窓の製作と修繕はカロン領の職人が手がけている。
エレボス領
侯爵領。大修道院への北の玄関口として栄える。
- デュバル領
伯爵領。各地にトータテス湖などセイロス教の聖地が
点在しており、敬虔な信者が数多く巡礼に訪れる。
プライデリ領
男爵領。岩塩坑を保有し、長く製塩業で栄えてきた。
- ベリナス領
子爵領。目立った特産物はない。“獅子王”ルーグが
盟友と共に決起した土地であると言われる。
ブレナス領
子爵領。領都は刃物の街として知られている。
- ファーガス神聖王国、各領地の情報をまとめた名鑑。
機密は書かれていないため閲覧および持ち出しの制限は
特になし。
1180年版。
- ゴーティエ領
辺境伯領。フォドラの最北に位置し、国境のルスカ山
脈に拠ってスレンの襲撃を防ぐ役割を担っている。領
土の大半が針葉樹の森に覆われており、一年を通して
気候は非常に寒冷。主な産業は林業と漁業だが、領都
の周囲は草原が広がり、畜産業が盛んである。
- ガラテア領
伯爵領。険峻な岩山や荒野が面積の大半を占める、荒
涼とした土地。農耕には向かず、規模の大きな街もご
くわずか。しかしフラルダリウス領との境界付近には
天馬の好む牧草が群生しており、良質な天馬の生産地
として知られている。
- ドミニク領
男爵領。小さいが、風光明媚な土地である。沿岸諸都
市は、アルビネとの交易により商業が発達している。
ギディオン領
子爵領。北の山間では、僅かだが金が産出される。
- ローベ領
伯爵領。西部はアリアンロッドを中心に製鉄や鍛冶で
栄えている。東部ではバクスの製造が盛んである。
エリデュア領
子爵領。西方教会の影響を受けた独特な文化を持つ。
- イーハ領
大公領。領地の大部分を占めるイーハ平原で行われる
小規模な狩猟と、傭兵の派遣が経済の中核を成す。
マテウス領
子爵領。古くから、漁業と造船を主産業としている。
- ゲライント領
伯爵領。南部を流れるタラヌス川の流域は肥沃な平原
であり、一面に牧歌的な田園地帯が広がっている。
イーニッド領
子爵領。良質な羊毛の産地として名高い。
- レスター諸侯同盟、各領地の情報をまとめた名鑑。
機密は書かれていないため閲覧および持ち出しの制限は
特になし。
1180年版。
- リーガン領
公爵領。肥沃な平原と草原が領地の大部分を占め、領
都のデアドラは“水上都市”の異名を取る華やかな港
街である。飛び抜けている分野はないものの、農業、
漁業、商業、製造業などあらゆる産業が活発であり、
足りないのは鉱物資源のみだという。
- グロスタール領
伯爵領。同盟ではリーガン領に次ぐ大きさで、森林と
平原から成る。酪農をはじめとした農業が盛んである
と共に、林業や狩猟など豊かな自然を生かした産業が
発展している。また古くから芸術が盛んで、領都であ
るエドギアには多くの芸術家の工房が立ち並ぶ。
- ダフネル領
侯爵領。西側に山地、東側にビムル川の河口を含む平
野が広がる。王国との境界にあることと、デアドラと
の往来が容易なことから、商業を中心とした多種多様
な産業が発展する。領内には“煉獄の谷”アリルもあ
るが、人の住める土地ではない。
- フレゲトン領
子爵領。領地は小さいが、アミッド大河に架かる最大
の橋ミルディンを有し、交易で巨利を得ている。
シーワード領
子爵領。山がちの小さな領地で目立った特産はない。
- オールバニ領
子爵領。大修道院へ向かう巡礼者の中継地。
バーガンディ領
子爵領。大修道院への東の玄関口。アミッド大河の源
流に近く、カレドニス台地などの自然も豊か。
- レスター諸侯同盟、各領地の情報をまとめた名鑑。
機密は書かれていないため閲覧および持ち出しの制限は
特になし。
1180年版。
- ゴネリル領
公爵領。“フォドラの喉元”を含む起伏に富んだ地形
が特徴で、そこから産出される希少な輝石類は貴族の
間で人気が高い。また、隣国パルミラとの小競り合い
が頻発することから多くの騎士団や傭兵が集まり、彼
らを相手とする商売が非常に盛んである。
- コーデリア領
伯爵領。“フォドラの喉元”の南の付け根から西に広
がり、南側はほぼアミッド大河に面している。それを
水源として多様な作物が栽培されてきたが、近年では
グロスタール領の発展に押されている。また酒造も盛
んであり、コーデリア産のヴァダは高級品とされる。
- エドマンド領
辺境伯領。レスター最北部と、その西に浮かぶ島を領
地とする。多くの商人が属する交易の中心地であり、
莫大な利益を上げている一方で、島には多くの海賊、
北の対岸にはスレンの民がおり、近頃ではパルミラか
らも船が来るなど、決して安全な地とは言えない。
- アダルブレヒト領
男爵領。堅固な立地を生かして金融業が興っている。
ミュラー領
男爵領。狭い土地ながらほぼすべてを森林に覆われて
おり、良質な材木をレスター各地に輸出している。
- ネルソン領
子爵領。東方教会に接し、守護する役目を持つ。
クパーラ
“山の民”が暮らす領域。厳密には諸侯同盟には含ま
れていない。僅かながら周辺の領地と交流がある。
- 孤月の節 15の日
南方教会に属する“紅の騎士団”に怪しい動きあり、と
の報告が入ったようだ。前節の末に皇位継承が成ったば
かりだというのに……いや、だからこそか。しかし目的
がわからない。中央教会は関与しているのか? 紅の騎
士団も元はセイロス騎士団の一部隊。大司教が空位……
- 孤月の節 19の日
一連の動きに、先日爵位を継いだヴィトーリア=フォン
=フリュムが関与している線が濃厚になった。彼女は現
ヴァーリ伯の娘。紋章持ちだが兄もそうであり、兄が嫡
子に、彼女は紋章持ちが生まれなかったフリュム家に嫁
ぎ、当主となっていたのだ。噂では彼女は教務卿に……
- 孤月の節 20の日
フリュム家の騎士団の一部と共に、“紅の騎士団”が蜂
起した。情報が漏れたため事を急いだのだろう。彼らは
ヴァーリ伯の蟄居およびフリュム伯の教務卿就任を求め
ているとのことだが、今の陛下は誇り高きお方。お膝元
に近い南方教会領での武力蜂起など絶対に許さない……
- 大樹の節 7の日
ヴァーリ伯が亡きヴィトーリアに教務卿の座を譲ること
を条件に、兄を嫡子にするという密約を前陛下と結んで
いた事実が判明した。伯は前陛下が病没されたのを良い
ことに反故にしたようだ。だが、彼女も南方司教と密通
し、事を起こすに至った点では大いに責任がある。……
- 大樹の節 12の日
南方司教の追放と南方教会の取り潰しが決まった。全土
に衝撃が走ったことだろう。中央教会からどれほど抗議
が来るかはわからないが、陛下は教団と距離を取ること
を望まれたのだ。この件の前では、ヴァーリ伯の引退や
フリュム子爵の後継問題など霞んでしまう。かくいう……
- (誰かの日記のようだ。それなりの地位にあった者だ
と思われるが、大部分が欠けてしまっている)
- 第一幕 あらすじ
アドラステアの村娘リヨラは、オグマの山々の麓に広
がる深い森の中に迷い込んでしまう。不思議な霧の立
ち込める森を抜けた先で彼女が出会ったのは、巨大な
謎の存在。長い一角を持つ飛竜にも天馬にも似た生き
物だった。
- 第二幕 あらすじ
巨大なそれを恐れて逃げ出したリヨラだったが、魔法
のかかった霧を抜け出すことができず途方に暮れてし
まう。やがて霧の中から怪しい青年が現れると、彼女
に声をかける。「この先に私の家がある。そこで休む
といい」と。
- 第三幕 あらすじ
深い森の中での奇妙な共同生活が始まった。青年は腕
の立つ狩人のようであり、様々な道具を作る鍛冶師の
ようでもあった。やがてリヨラは彼に惹かれていく。
そんな彼女に待っていたのは、再びの巨大な生き物と
の出会いだった。
- 第四幕 あらすじ
この森の真実を知ってしまったリヨラは、深い葛藤に
悩まされることになる。青年はそんな彼女の様子……
(ミッテルフランク歌劇団によって上演されたことの
ある、演劇の筋書きのようだ)
- 帝国暦731年 大樹の節
ブリギットを無事に発った我らが船団は、気候にも恵ま
れ、ついにダグザの大地をこの目に捉えた。やけに白い
砂浜の向こうに、不気味な密林が広がっている。情報で
はこの辺りに集落があるとのことだったが、建物どころ
か船や人影も見当たらない。北と南、どちらに舵を……
- ……突然、ぱらぱらと矢が飛んでくる。木々の間から敵
に狙われたらしい。不意を突かれた兵士たちが幾人か倒
れ、慌てて盾を上げて体を隠す。だが矢の数も勢いも、
思ったほどではない。ダグザ軍は帝国のミアハ地方、そ
してブリギットでかなりの兵を失っている。防衛する戦
力が残っていないとは思わないが、思ったより容易……
- ……ヒュミル子爵の嫡男が率いる第三船団は、入り江の
中に誘い込まれた。敵の罠だった。なぜ気づけなかった
のか。我々は岬の東端をぐるりと回頭したつもりだった
が、霧の向こう、南側にも海岸があったのだ。行き場を
失った船の櫂同士がぶつかり、先頭の船は座礁したのだ
ろう、すでに傾き始めている。我々の目の前で、仲……
- ……海が燃えている。いったいどんな魔道を使ったと言
うのだ。炎の蛇は徐々に我々の船へとその舌を伸ばして
いる。外洋に広がった敵の船陣。あれを突破せねば誰一
人として生きては帰れない。いや、陛下にこの敗戦を報
告することを考えると、ここで死んだほうがと思わない
でもないが、我々が誇りを捨てるなどあってはなら……
- ……ブリギットは叛旗を翻し、寄港しようとした船の半
分を沈められた。口惜しいが、今は逃げることしかでき
ない。連中はダグザが負けたからこちらに尾を振ったに
過ぎなかった。こちらが負ければ再びダグザに尾を振る
だけだ。元より言葉も通じぬ小島の住人、しかし王が欠
片も約定を守る気がなかったとは。いや、そもそも……
- ……ヌーヴェルの街が見えてきた。我らは生き延びたの
だ。ギヌンギの港を出た時に比べれば、船の数は十分の
一以下に減ってしまっている。壊滅としか言いようがな
い。そして戦果は皆無どころか、ブリギットとの関係を
も失った。ダグザの民は恐ろしかった。空を舞い、海を
焼き、森を跳び回り、突然に牙をむく。奴らはいっ……
- 第九章 王の難題
クラウス王が熱病によって死の床に伏し、
王子クルーフォーはひどく頭を悩ませていた。
あまりにも急な病であったものだから、
彼の偉大なる父親は、兄弟の誰が
王位を継ぐのかを定めていなかったのだ。
- 兄のバンフィグは軍略と武芸の才に恵まれていたが、
本人は戦争と権力を好まぬ穏やかな人柄だった。
裏を返せば、それは君主には向かぬということだ。
弟のカイトは、父に似てとても聡明であり、
またいかなる時も非情に徹することができたが、
それゆえに騎士たちからは冷徹と恐れられていた。
- クルーフォー自身は兄弟と違って紋章を持たず、
王家の者が持つべき膂力も持ち合わせなかった。
それゆえ彼は、自分が兄や弟と王位を争えるとは
露ほども考えていなかったのだが、
兄と弟が王位を巡って殺し合うさまを想像すると
それだけで身を裂かれるような思いがした。……
- ……ある時、クラウスの妹のモリアンが、
兄が記したという書きつけを見つけてきた。
そこには「最も民に愛された者が玉座に就く」と、
一言だけ、確かにクラウスの筆跡で記されていた。
このたった一言の書きつけが、血で血を洗う、
悲劇の継承戦争のきっかけとなったのである。……
- ……騎士たちの争いの後、ファーガス王国は
どの王子を奉じるべきかを巡って三つに割れた。
ファーガス地方の騎士たちはバンフィグを、
ミアハ地方の騎士たちはクルーフォーを、
そしてレスター地方の騎士たちはカイトを支持した。
彼らはそれぞれ、国土を三つに分割して継承し……
- ……彼女は歯の根を鳴らし謀の失敗を悔やんだ。
目をかけていたカイトを王位に就けるつもりが、
企ては凡庸なるクルーフォーによって暴かれた。
多くの犠牲を払い、三人の兄弟は武器を捨て……
(どうやらファーガスの歴史に取材した物語のようだ)
- 892年 竪琴の節
スレン族による大規模な侵攻。彼らはルスカ山脈を越え
てファーガス北部に攻め入り、そのままファーガス地方
へと南下。ファーガス王バンフィグは、ブレーダッド領
北部からフラルダリウス領北部にかけて、各地にコナン
など数多くの城塞を築き、これを迎撃する。
- 895年 飛竜の節
ついにスレンを撤退せしめたファーガスは、一転攻勢に
出るも、スレンの抵抗と猛吹雪のために侵攻を断念。こ
れを以て戦いに終止符が打たれる。この戦役で最も功を
上げたのは、王家の騎士にして十傑ゴーティエの裔であ
る若き猛将、レティシア=ゾエ=ゴーティエであった。
- 896年 大樹の節
バンフィグは王領の北部をレティシアに割譲。彼女を辺
境伯に叙し、国境の守護を命じた。その後、レティシア
はスレンとの境であるルスカ山脈に数多くの砦を築くと
ともに、セイロス聖教会に“破裂の槍”の返還を求める
など、北方の守りを堅固にすべく務め……
- ……
1169年 翠雨の節
夏を待ち、ファーガス王ランベールは共に北部を統べる
ゴーティエ・フラルダリウス両家と連合して、スレンへ
と兵を向ける。王国軍はルスカ山脈の砦の一つに拠って
陣を張り、スレン軍と戦端を開いた。
- 1169年 角弓の節
王国軍は順調に半島北西へと攻め上るが、族長オレグ率
いる軍と交戦中、突如戦場に巨大な獣が闖入。両軍共に
大打撃を被る。ランベールは重傷を負い、オレグは谷底
に姿を消した。オレグの子は、己の末子であるレフを人
質としてゴーティエ家に差し出し、和平を願い出た。
- 父上、母上
こうして手紙を書くのは4節ぶりですね。
寒い日が続きますが、恙なくお過ごしでしょうか。
こちらは師匠の無茶苦茶な修業に付き合わされたり、
危うく殿下に骨を折られかけたりと大変でしたが、
まあ何だかんだ、それなりに楽しくやっています。
- 今回手紙を書いたのは、角弓の節のダスカー行きに
私も同行することになった、とお伝えするためです。
以前お会いした際、父上は随分心配していたようですが
私も……な鍛え方はしていませんし、いざとなれば
「盾」にはなれるでしょう……なんて冗談を言ったら、
まったく笑えない、と殿下に小言を……ましたよ。
- ダスカーとの会談が終わって落ち着いた頃にでも、
一度……貰って、……の城に帰るつもりです。
フェリクスがどれだけ……上げたか確かめたいですし。
くれぐれも……を怠るな、と言っておいてください。
私はともかく、殿下に勝ちたいと思っているなら、
大岩を担いで山を走り回る……はしてもらわないと。
- 追伸。
先日、……から上等な短剣を賜ったので、
手紙と一緒にガラテア領に……させました。
もし彼女がフラル……ウス領に来ることがあれば、
いつも寂しい……をさせて済まないと伝えてください。
……=ゴーヴァン=フラルダリウス
- (誰かが家族に宛てた手紙のようだ。
ところどころ文字が滲んでおり、読みにくい)
- ……会合の開催を呼びかけたクローディア夫人を始め、
ダフネル家に生まれた女性たちは伝統的に“烈女”と呼
ばれるに相応しい勇気と行動力、それに強情さを備えて
いたそうですが、貴女もまた例外ではなかったのでしょ
う。
- いまだ平穏とはほど遠いレスターにあって、あえて東方
騎士団を解散するなど、誰が予想できたでしょうか?
もちろん、諸侯の多くは貴女の考えを理解し、今回の決
断を賞賛していますが、同時に大きな懸念を抱いている
ことも事実です。
- 貴女は剣を捨てると仰いましたが、盾までも捨てるのは
時期尚早と言わざるを得ません。そこで、我々は貴女に
一つの提案をさせていただくことに決しました。
すなわち今後、当家が東方騎士団に代わる東方教会の盾
となることを認めていただきたい。
- これを受け入れてくださるならば、貴女の考えに難色を
示している大司教の諮問をかわすこともできましょう。
夫人も、義理の妹である貴女を大変に心配しておられま
す。そこも踏まえて、どうかお聞き届けください。
貴女に主の加護のあらんことを。
ハンス=フォン=ネルソン
- 終章
王を名乗る男が、腰に下げた革袋から小さな笛を取り
出して思い切り吹く。すると夜空に大きな黒い影が現
れ、男のそばに飛竜が舞い降りる。目を見張る娘に向
かって男は事もなげに言う。
乗るも自由、乗らぬも自由。好きなほうを選べ。
- 躊躇う様子もなく飛竜に歩み寄る娘に、王の家来を名
乗る男が声をかける。
あなたはどこかの領主の娘だという。それが本当なら
ば住み慣れた土地での暮らしに不満などないはず。そ
れを捨ててまでなにゆえ我が王の気まぐれに付き合う
のか?
- 娘は家来を名乗る男に笑顔を向けて答える。
彼は私にまだ見ぬ景色を見せてくれるでしょう。その
ために私はすべてを投げ出そうとしている。馬鹿げた
選択かもしれませんが、これは私の気まぐれです。そ
んな気まぐれに我が身を委ねる時、人は真の自由を手
にすることができるのではありませんか……
- (実在の誰かを題材にした物語のようだが、
前半が欠けており推定は難しそうだ)
- 青海の節 2の日 曇り
蛮勇を誇るパルミラの大軍を前に、我々は前線を後退せ
ざるを得ず、喉元に急造した砦に籠もるしかなかった。
もしこの砦を抜かれれば、パルミラのレスター侵入を許
すことになる。なんとしても防がなくては。
- 青海の節 5の日 曇りのち雨、風強し
攻勢を緩めぬパルミラ勢に対し、得意の弓を以て応戦す
るも、折からの風雨が邪魔をして、思うように狙いが定
まらない。明日にも帝国軍の弓箭隊が増援として到着す
ると聞いているが、この天候が続くなら、弓兵では戦力
の足しにはならないだろう。どうしたものか……。
- 青海の節 6の日 雨、風強し
風雨が続いている。合流した帝国の弓箭隊が放つ矢は、
案の定、虚しく地に刺さるばかりだった。
帝国軍は軍師風の男も連れていたが、役に立つとは思え
ない。彼は何かの器具を使ったり紙に数字を書いたりす
るのに忙しく、作戦の一つも出してこないのだから。
- 青海の節 7の日 曇り、風強し
突如、軍師風の男は帝国と同盟の弓兵を集めてそれぞれ
に細かな数字を示し、狙うべき方向と射角を修正するよ
う告げた。半信半疑ながら指示どおりに修正して弓を射
ると、矢は面白いように敵に命中し始めた。
「計算どおりだ」と語る彼は、何と数学者だそうだ!
- 青海の節 10の日 快晴、無風
敵の攻勢が弱まるのと同時に風も止み、ようやく反撃の
好機を得る。数学者殿がいなければ、ここまで耐えられ
なかったはずだ。勝利したのち、もし再会が叶ったなら
ば、必ず伝えよう。数学者殿こそ、この戦いの一番の功
労者であったと――
- ……という事実があり、真偽は定かではないのだが、本
書においては考慮しないこととさせていただく。
さて、前段が長くなってしまったが、「麗しき聖人」と
聞いて多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、やはり聖
マクイルその人であろう。宝石にも喩えられる彼の美貌
を歌う詩歌は数知れず、中でも乙女の頬を撫でる風……
- ……大きな翼が 風を呼びました
空から虹が 降り注ぎました
おお、美しきあなたよ
その炎でわたしの心を焼き尽くして
これは聖マクイルについて歌った帝国初期の女性詩……
- ……一人忘れてはならないのが、聖キッホルである。彼
は数多の浮き名を流したという説と、一途な愛を貫いた
という説がある。聖人たちの多くが婚姻を結んだ記録が
ない中で、はっきりと結婚したと明言され、その娘まで
もが聖人に列されている事実から鑑みれば、後者の説が
有力であろうと私は考える。何よりロディ海岸には……
- ……以前の存在として、およそ空想の域を出ない話では
あるが、聖ルカという子だくさんの聖人がいる。彼は恋
多き男であり、多くの愛を育み、多くの命を生み出した
とされるのだ。ただしその姿も多岐に富んでおり、果た
して本当に「麗しき聖人」だったのか。何らかの力によ
り姿を変えていただけではないのかと考えると、い……
- (聖人についての本のようだ。
人物画が多く載せられている。
かなり読み込まれた形跡がある)
- 第13章 獣の紋章
またの名を“モーリスの紋章”という。千年以上前、
ネメシスに従った11人の氏長の1人モーリスが持っ
ていたとされる。モーリスは勇敢な戦士であった。若
くして剣一本で巨狼を討ち、氏族の英雄と褒め称えら
れた。すぐに父を倒して長の座を継ぐと……
- ……モーリスがいつ紋章を授かったか定かではない。
一説にはネメシスとの一騎打ちに敗れ、彼の下で戦う
ことを誓った時といわれている。あるいは邪なる存在
を目の前にした時、ネメシスから預かった英雄の遺産
“ブルトガング”がその思いに応えて輝いたともいわ
れている。いずれにせよ彼が剣と共に……
- ……帝国軍にとってモーリスと“ブルトガング”はま
さに“災厄の獣”であった。彼の剣は殺すことに特化
していた。特に馬上や空中の敵は良い「的」だった。
戦場を駆け巡るモーリスは多くの将兵を殺し、ついに
は聖戦士の一人を殺すに至った。返り血を浴びた彼の
姿には、敵のみならず味方も恐れを抱いたという……
- ……グロンダーズの会戦以降、戦線が北上するにつれ
てモーリスは正気を失っていった。その契機が何だっ
たのかも定かではない。彼はいつの日か敵陣を突破す
るとそのままどこかへ姿を消した。戦場の北には、霧
の立ち込める広大な森があった。捜索の兵が一人とし
て戻らなかったミルシャの魔の森が……
- ……獣の紋章は散り散りに野に下ったモーリスの息子
たちに受け継がれていた。彼らは他の氏族の家や、帝
国を厭う領主の陰に隠れて密かに生き続けた。やがて
忌避すべき紋章が表沙汰になると、その持ち主はなぜ
か急な病に倒れ、あるいは事故に遭ってすぐ命を落と
した。そうして誰もが獣の紋章を隠そうと……
- フォドラ怪奇談 “血の果実”
かつて戦場となり多くの血が流れた地には、血のよう
に赤い果実が生るという。小さな粒が幾重にも重なっ
たそれは甘く、かじりついた者の渇きをも満たすが、
気づけばそれなしには生きられなくなり、やがて……
グロンダーズ地方の古き伝承である。
- フォドラ怪奇談 “彷徨えし獣”
ミルシャの魔の森に霧が立ち込める夜、この世のもの
とは思えぬ叫び声が響きわたる。そんな夜は絶対に森
に入ってはいけない。生きて帰ってきた者がいないか
らだ。血に飢えた獣が霧と共にやってくる……。
レスター地方の古き伝承である。
- フォドラ怪奇談 “地の底の亡霊”
地の底から響く恐ろしい声。それは女神の御許に辿り
着けず、薄暗い死の国を彷徨い続ける死者の怨嗟の声
であるという。彼らは陽の光の下を行く生者を妬んで
おり、時には地底へと引きずり込んでしまう……。
ファーガス地方の伝承である。
- フォドラ怪奇談 “ダナの砂嵐”
北には侵入者を拒む砂漠があるという。砂漠のふちを
行商人が通るだけでは現れないが、何かを求めて砂漠
の中へと足を踏み入れると辺りの景色は一変。巨大な
砂嵐が巻き起こり、入った者を切り裂くという。
地域不詳の古き伝承である。
- フォドラ怪奇談 “霧の巨人”
夜明けちょうどに山に入ると、霧に包まれてしまうこ
とがある。そんな時はうずくまって霧が晴れるのを待
つのだ。決して逃げ出してはいけない。あなたを踏み
潰せるほどの巨大な霧の巨人が追ってくるから。
ファーガス地方の古き伝承である。
- フォドラ怪奇談 “死神の鎌”
赤狼の節、満月の晩には窓を塞いで寝なければいけな
い。なぜなら大きな鎌を持った死神が命を刈りに来る
から。外を出歩くなどもってのほかだろう。血をすべ
て吸い取られた死体となって発見される……。
ミアハ地方の古き伝承である。
- フォドラ怪奇談 “赤い悪魔”
穏やかに見える“白角海”の底には赤い悪魔が眠って
いる。悪魔は船から落ちる者がいると、すぐに手を伸
ばして沈めてしまう。それを防ぐには油を……
(フォドラの各地に伝わる怪奇を集めた書のようだ)
- 第一章 啓示録
女神は天であり、女神は大地である。
今にあり、昔にあり、やがて来たる時にある。
かの目はすべてを見通し、かの耳はすべてを
聞き、かの手はすべてを受け止める。
- 女神の証を受け取りし者、
言葉を預かりし者、すなわちセイロス。
天の、大地の御使いとして、
セイロスは恵みと平安をあなた方に届ける。
- 女神よりの全能を以て。
セイロスは、女神の剣として邪を除け、
セイロスは、女神の子として王を封ず。
セイロスは、女神の翼として人を導き、
セイロスは、女神の声として愛を説く。
- その剣に、あなたの剣を委ね、
その王を、あなたの上に戴き、
その翼で、あなたの生を助け、
その声が、あなたの心を赦す。
あなた方に女神の加護あらんと。
- 第二章 創世記
曇りなき大海に、まずフォドラがあった。
遙かなる旅を終えし女神は、
フォドラを見出し、降り立たれた。
女神は生きとし生けるものを創りたもうた。
- 女神は草木を創り、鳥獣を創り、
そして最後に、人を創りたもうた。
人は力を欲し、女神はそれに応えられた。
天の恵み、大地の恵み、そして魔の恵み。
人は魔道を得、力を増した。
力が邪を呼び寄せるとも知らずに。
- 女神の加護のもと、人は生きた。
より多くを成し、より富み栄え、
いつしかフォドラで最も力ある存在となった。
しかし、北より、邪なる存在が訪れる。
大地を蝕み、天を穢す、邪。
フォドラに混迷が、訪れる。
- 邪なる侵略に対するため、
女神は力を創りたもうた。
超常の武具と、そを使うための血。
人はその力を手にし、邪と戦った。
邪を討ち破り、北へと追いやった人々。
彼らは英雄と呼ばれた。
- 英雄らは数百年を生きたが、やがて
その命も尽き、後には血と力のみが残る。
英雄の血に宿りし力を“紋章”と呼び、
英雄の振るいし力を“英雄の遺産”と呼ぶ。
かくして、新しき時の縁は、紡がれていった。
- 英雄の子孫たちは、血を求め、力を求めた。
やがて彼らはすべてを巡って争い始める。
紋章を、遺産を、土地を、富を。
邪なる存在を打ち果たすための女神の力は、
人の欲によって争いの道具となった。
女神はそれを嘆き、天に姿を隠す……
- 第五章 主の五戒
一、あなたは主の存在と、主の力を
疑ってはなりません。
一、あなたの神、主の名をみだりに
唱えてはなりません。
- 一、あなたは父と母と、主に連なる者を
敬わねばなりません。
一、あなたは主より与えられた力を
正しく使わねばなりません。
一、あなたはみだりに人を殺め、傷つけ、
嘘をつき、盗みを働いてはいけません。
- 主はすべての美しきものを是とします。
主は、愛、絆、喜び、平和、信心、親切、
自律、謙虚さ、我慢強さ、これらのものを
否定することはありません。
主の導きに従えば、自ずと主の五戒は
守られるのです。
- 長きにわたり、世は乱れ民は苦しんでいた。
“解放王”を僭称する邪なる者ネメシスは、
争乱を喜び、流血を讃うる。
フォドラの氏族たちは、糾合されることなく
ただ奪い合い、殺し合っていた。
- 帝国暦 前41年
聖セイロスの出現
聖者セイロス、アンヴァルの地に現る。
セイロスは多くの奇跡をもたらし、
人心をよく集め、集いた人々は
セイロス聖教会を組織す。
- 帝国暦 元年
アドラステア帝国の建国
国の名は神託を以て定む。
アンヴァルを都としてフォドラの南を治め、
聖者セイロスもこれに力を与う。
- 帝国暦 32年
英雄戦争の起こり
初代アドラステア皇帝、
ヴィルヘルム=パウル=フレスベルグ。
フォドラの統一のため兵馬を挙げ、
力をほしいままにする各地の氏族を討滅す。
- 帝国暦 46年
グロンダーズの会戦
ネメシスに味方する氏族の連合軍と、
アドラステア帝国軍が平原で激突す。
帝国軍が大勝を収むる。
- 帝国暦 91年
タルティーンの会戦
ネメシスに味方する氏族の連合軍と、
帝国軍が再び激突す。邪なる者ネメシスは
ここに死して、帝国は勝勢を定むる。
- 帝国暦 98年
英雄戦争の終結
皇帝ヴィルヘルム1世の後を継いだ
リュカイオン1世が急病にて崩御す。
フォドラの大半を支配するに至っていた
帝国は、これを機に戦いに幕を下ろす。
- 帝国暦 721年
第一次ミアハ戦役
海を越えてダグザ軍が襲来す。
帝国軍はこれを撃退するものの、
ミアハ地方は少なからず被害を受ける。
- 帝国暦 728年
ブリギット侵攻
帝国軍、ダグザに協調していた
ブリギット諸島に侵攻す。
勝利し、ブリギットの民を従属させる。
- 帝国暦 731年
ダグザ侵攻
帝国軍、ブリギットを足掛かりに
ダグザに大規模な侵攻をかけるも、
武運つたなく敗退す。
- 帝国暦 747年
ファーガスの乱
かつて帝国と争った氏族の子孫、ルーグが
帝国からの独立を求めて挙兵す。
ファーガス地方を巻き込んだ争乱となる。
この一連の争乱を“鷲獅子戦争”とも呼ぶ。
- 帝国暦 751年
タルティーンの戦い
ルーグら独立軍が帝国軍に大勝。
セイロス聖教会が二者を仲裁し、ファーガス
地方はファーガス神聖王国として独立す。
- 帝国暦 801年
レスター大乱
帝国のレスター地方で内乱が勃発す。
帝国軍は鎮圧に失敗。神聖王国がこれに
乗じてレスター地方を制圧し、領土とす。
- 帝国暦 861年
ファーガス神聖王国分裂
国王クラウス1世の崩御に伴い、
3人の王子がそれぞれ大公となり、
王国を三分割して統治す。
- 帝国暦 881年
三日月戦争
王国のレスター地方を治むる大公が病没す。
レスター地方の諸侯は、次の大公を立てず、
諸侯の共同体となることを画策す。
- 帝国暦 901年
レスター諸侯同盟領の成立
諸侯同盟に反目する諸侯を討伐し、
ファーガス地方からの干渉も排除した
リーガン公を中心に、同盟領が成立す。
- 帝国暦 961年
パルミラ襲来
東の大国パルミラ、フォドラの喉元を
越えて同盟領に侵攻す。
帝国軍らも派兵され、からくも撃退す。
- 帝国暦 1101年
フォドラの首飾り築造
パルミラの襲来を防ぐべく、
同盟・王国・帝国が一丸となり、
フォドラの喉元に要塞を築造す。
- アドラステア帝国の主要な貴族の名鑑。
教団の資料のため、持ち出し及び
生徒の閲覧を禁ずる。
1179年版。
- フレスベルグ家
大帝ヴィルヘルムを祖とする帝国の大貴族。
1100年以上にわたって帝国を治める。
その系譜は聖セイロスの血脈をも有し、
代々の皇帝はその身にセイロスの紋章を
宿していたという。
- 帝都アンヴァルとその周辺一帯を領地とし、
帝国の内外で絶大な権力を誇ったが、
1171年の七貴族の変により、貴族らに
権能を剥奪される。また近年、立て続けに
一族の者に不幸が起こっており、その支配
体制には暗雲が垂れ込めている。
- エーギル家
帝国でフレスベルグ家に次ぐ力を持つ公爵。
当主がいつしか宰相の地位を歴任するように
なり、今では実質的に世襲宰相の地位を
有する。七貴族の変を主導し、帝国の統治に
おける実権を握っている。
- ベストラ家
フレスベルグ家の影であり、領地を持たない
特殊な侯爵。帝国の暗部を牛耳っているほか、
皇帝の補助、儀式典礼、後宮、近衛などを
含めた皇帝周辺の政務を担っていた。
七貴族の変ではエーギル家に味方する。
- ヘヴリング家
帝国の内務卿を世襲するようになった伯爵。
主に政務、財務、法務などを担当し、その
領分を巡って頻繁に軍務卿と対立している。
領地の大半がオグマ山脈に属し、鉱業が
盛んである。
- ベルグリーズ家
帝国の軍務卿を世襲するようになった伯爵。
皇帝直属軍以外の帝国すべての軍事を
管轄とし、戦時には当主が大将軍として
全軍を率いる。フォドラいちの穀倉地帯、
グロンダーズ平原の大半を領地とする。
- ヴァーリ家
帝国の教務卿を世襲するようになった伯爵。
教務卿は主にセイロス聖教会との渉外が
領分だったが、近年は教団と帝国が疎遠に
なっているため、法務などにも干渉しては、
内務卿との政争を起こしている。
- アドラステア帝国の主要な貴族の名鑑。
教団の資料のため、持ち出し及び
生徒の閲覧を禁ずる。
1179年版。
- ゲルズ家
帝国の外務卿を世襲するようになった公爵。
外交や他国との交渉、中央と地方の紐帯を
任とし、ダグザ・ブリギット戦役においても
停戦協定の締結に尽力した。七貴族の変に
加担してはいるが、他家とは一線を画す。
- アランデル家
元は帝国の小貴族だったが、現当主である
フォルクハルトの妹が皇帝イオニアス9世の
室となってから急伸し、アランデル大公の
位を贈られる。エーギル家に協力し、七貴
族の変を起こした主犯格の一人と目される。
- フリュム家
帝国の子爵。皇帝イオニアス9世の中央集権
政策に反発し、帝国からの独立と同盟への
参画を目論むも、帝国軍の介入にあって
失敗する。後始末として本家は断絶、現在
では養子を当主として迎え入れている。
- ヌーヴェル家
帝国の子爵。帝国西端に領地を構え、家名に
由来する港湾都市ヌーヴェルを中心にダグザ、
アルビネ、ブリギットなどとの交易で栄える。
だが、1175年に攻め寄せたダグザ・ブリ
ギット連合軍の上陸を許し、没落した。
- オックス家
帝国の男爵。帝国西部“フォドラの牙”と
呼ばれる半島の北半分を領地とする。
ダグザ・ブリギット戦役で当主を失った。
- バルテルス家
帝国の男爵。野心高く、多くの紋章の血統を
その家系に加えている。1176年、当主を
含む一族の多くが不審死。嫡男エミールの
犯行とされたが、エミールは行方不明になり、
現在は遠縁の者が当主となっている。
- ファーガス神聖王国の主要な貴族の名鑑。
教団の資料のため、持ち出し及び
生徒の閲覧を禁ずる。
1179年版。
- ブレーダッド家
十傑の一人、ブレーダッドを祖とする一門。
751年、鷲獅子戦争で勝利を収めた
“獅子王”ルーグが、教団より戴冠を受け
アドラステア帝国からの独立を果たして以来
400年以上にわたり王国を統治してきた。
- 王都フェルディアとその周辺を領土とし、
フォドラ北部の諸侯を数多く従属下に置く。
国王ランベールが1176年に没した後は
その実兄にあたるイーハ大公リュファスが
若年の王子に代わり領内の政を担っているが
各地で争乱が続き、体制は揺らぎつつある。
- フラルダリウス家
十傑の一人、フラルダリウスを祖とする一門。
王国諸侯の中でも歴史の長い家の一つであり、
“獅子王”ルーグの盟友であるキーフォンも
英雄フラルダリウスに連なる者であるという。
公爵の位に叙されている。
- ゴーティエ家
十傑の一人、ゴーティエを祖とする一門。
王国の最北に領土を持ち、二百余年にわたり
“北方の民”スレン族による侵攻から国土を
守護してきた。辺境伯の位に叙されている。
- カロン家
十傑の一人、カロンを祖とする一門。
鷲獅子戦争の時代に独立軍と聖教会の折衝を
担ったことから、今も国内での典礼の場には
カロン家の当主が立ち合う伝統が残っている。
伯爵の位に叙されている。
- ガラテア家
レスター諸侯同盟の一角を成すダフネル家が
家督争乱により二分された際、ファーガスに
帰順した一派が家を興し、後に伯爵の位に
叙された。領地の大部分が寒冷な荒野であり、
1170年代初頭には大飢饉が起こっている。
- ローベ家
元は帝国北西部に領地を持つ貴族であったが
領内に城塞都市アリアンロッドが築かれた際、
帝国に反旗を翻し、アリアンロッドを含む
所領ごと、ファーガス神聖王国に帰順した。
その功を以て、王家より伯爵位に叙される。
- クレイマン家
元来、王国西部の一城主に過ぎなかったが、
1176年に行われたダスカー半島の征伐で
大功を立て、王家より子爵の位に叙された。
封土としてダスカー半島を与えられている。
- レスター諸侯同盟領の主要な貴族の名鑑。
教団の資料のため、持ち出し及び
生徒の閲覧を禁ずる。
1179年版。
- リーガン家
十傑の血統で、レスター諸侯同盟の盟主格。
881年の三日月戦争を経て、王国からの
独立と諸侯による共和制の樹立を主導した。
以来、円卓会議の主催者の役を担っている。
- 公爵の位は同盟成立以前に王国より叙された
爵位を根拠とする。なお、現リーガン公の
嫡男ゴドフロアは公務中の事故により他界。
ほかに女子もいたが現在は消息不明である。
- ゴネリル家
十傑の血統。レスター地方東部に領地を有し、
パルミラ軍との攻防において中心的役割を
担ってきた武門の家柄。殊に次期当主である
ホルスト卿は同盟随一の勇将として知られる。
- コーデリア家
レスター地方南東部に領地を有する伯爵家。
1167年、帝国貴族フリュム家の内乱に
関与したことを契機に、帝国より内政干渉を
受け続け、急激に国力が低下した。
- グロスタール家
十傑の血統。レスター地方南部の伯爵家。
現当主は渉外に長けた野心家で、円卓会議で
議決権を有する五大諸侯の中では、盟主格の
リーガン家に次ぐ発言力を有している。
- エドマンド家
レスター地方北部に領地を有する辺境伯家。
良港を活かした交易重視の政策で国力を貯え、
五大諸侯に名を連ねるまでに成長した。
現当主は能弁家としても知られている。
- ダフネル家
十傑の血統。かつては同盟の五大諸侯に名を
連ねていたが、家中の分裂により勢いを失い、
ここ何代かは紋章持ちの当主も現れていない。
名家としての存在感は現在も保ち続けている。
- 主にフォドラの外の世界について書かれた記録。
著者は不明だが、実際に各地を旅した者が
書いているようだ。
- パルミラ
フォドラの東にある大国。険峻な山岳地帯
“フォドラの喉元”を領界として、レスター
諸侯同盟領と接する。騎馬民族の血を引く
者たちであり、戦いを好む。広大な国土は
肥沃な大草原、砂漠、大連峰など地形に富む。
- アルビネ
フォドラの北西にある大地。寒冷な気候で、
貴重な動植物が数多く生息しているものの、
厳寒と穀物の育ちにくい凍土のため、暮らす
人々の数は少ない。
- モルフィス
フォドラの南東にある魔道の都の名であり、
その都市を中央に置く広大な砂漠の名でも
ある。“幻の都”とも称された時代も
あったが、細々と繋がる行商の道を通して、
偉大にして摩訶不思議な魔道の噂が伝わる。
- ダグザ
フォドラの南西にある大地。遙か遠方であり、
その地は焦熱の密林であるとか、冷涼な
大高原であるとか、噂を挙げれば枚挙に
暇がない。そしてそれらは半ば事実であり、
南北に長い大地に様々な地形を有している。
- 主にフォドラの外の世界について書かれた記録。
著者は不明だが、実際に各地を旅した者が
書いているようだ。
- ブリギット
フォドラとダグザの間に位置する島々。
穏やかな海と豊かな緑に覆われた大自然の
結晶とも呼ぶべき地であり、フォドラと
ダグザの間で支配権が争われてきた。
- スレン
フォドラの北にある巨大な半島の名だったが、
今は北半分をスレン地方と呼び、南半分は
ファーガス神聖王国の領土となっている。
荒涼とした大地には好戦的な民族が住まう。
岩砂漠が広がっている一帯もある。
- ダスカー
フォドラの北、スレンの西側にある半島。
かつて暮らしていたダスカーの民は滅び、
ファーガス神聖王国の領土となっている。
取り立てて何もない土地だが、珍重な鉱物が
見つかるという噂もある。
- オグマ山脈
フォドラの中央からやや南に広がる大山脈。
西は帝国と王国の境界となり、ガルグ=マクを
囲いながら帝国を縦断するように伸びる。
他では見られない動植物も多く、また豊富な
鉱脈を有する。
- ……の侵入経路があるようだ。
引き続き調査を進めることが望まれる。
また、数年ほど前から士官学校に
いられなくなったものを収容するための
学級が存在していることが判明した。
- その名も“灰狼の学級”。
所属する面々の大半は、士官学校の
元生徒らしいが、教師らしき者もおらず
学級とは名ばかりの吹き溜まりと思われる。
- 住人から聞き出したところ、よく名前が上がった
のは主にユーリス、コンスタンツェ、ハピ、
バルタザールの4人である。教団がこの学……
(古びた報告書のようだ。
読める部分はあまり残っていない)
- ……近頃、鼠通りに住み処を移してね。
“灰狼の学級”の連中と知り合ったんだ。
何でも士官学校の元生徒で、
表通りを歩けなくなったような奴らが
集まっている学級なんだと。
- バルタザール、コンスタンツェ、
ユーリス、ハピ……
みんな癖はあるが、悪い奴じゃなさそうだ。
特にバルタザールの金……
(薄汚れた紙に汚い字で書かれた手紙だ)
- 久しぶりですね。
こっちは本日も異常あり、ですよ。
前に“灰狼の学級”の話はしたでしょう?
地上の士官学校からあぶれた若者たちの
集まりです。
- 特に危ない奴らが3人いるって書きましたけど、
とうとう4人に増えましてね。
ユーリス、ハピ、コンスタンツェ、
そして、バルタザール……
こいつらは本当に困ったもんです。
面白い相手ではあるんですがね。
- この前なんか、地下から大修道院へ抜ける
大きな穴を見つけ出しちまいまして。
慌てて俺たちで岩を持ち寄って……
(癖のある字でびっしりと書かれた手紙だ)
- ……来節、フェルディアで商談の予定があったが
あれは取りやめだ。今はそれどころじゃない。
王様がダスカーの族長と会談をしに行くって話を
覚えてるな? その道中、王様の一団はダスカー
の連中に襲われて、みんな死んじまったそうだ。
生き残ったのは、小さい王子様一人だけと来た。
- すぐに誰かが軍をまとめて、ダスカーに掃討の兵
を送ったそうだが、王様がいなくなった王都は、
上を下への大騒ぎってわけだ。
ダスカーの民も馬鹿な真似をした。一部の過激な
奴らのせいで、とばっちりを食うのだからな。
この所業を思えば、当然の報いかもしれないが。
- ただ、ダスカーとの商売はもう駄目だろう。
ゲネウラの近くは良質な金が採れる上、
鍛冶屋の腕も良いだけにもったいないものだ。
とにかく、私が帰るまで勝手な行動は慎んで……
(商人が王都からどこかに送った手紙のようだ)
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